翡翠さん、火照った身体でいったん帰還して強敵と戦う
はい、巫女なのに持て余す精力を発散するために翡翠さんが戻ってきました。女神様が嬉しそう。
「おい、青水、大変だ!」
「どうした女神?何だか嬉しそうに興奮しているじゃないか。」
「翡翠がエロエロになって戻ってくる。」
「なわけあるかい!」
「いや、ホントなのさ、これが。どうやら天界から落ちたアンブローシアを食べたらしい。」
「それを食うとエロエロになるのか?」
「まあ正確には精力が満ちた状態なので、何をやらせても最高のパフォーマンスを発揮する。」
「じゃあエロエロじゃないじゃないか。」
「だがな、元々は神の食べ物だ。人間が食べれば根源的な生の活力に火が付く。身体が火照る。」
「なるほどな。で、翡翠はどうしてる?」
「顔を真っ赤にしてダンジョンに駆け込んだよ。」
「何するつもりだ?」
「分身を出し尽くして霊力を枯渇直前まで消費し、それを補完するために有り余る精力が霊力に変換される。」
「なるほどな。火照りを収めるために狩られるモンスターも哀れだな。」
「高価な素材がたんまり手に入るから翡翠銀行の残高も潤うだろう。」
「たしかに近代以降のミッションではリアルマネーを必要とするし、アメリカではずいぶん消費したからな。」
「まさか、身体が火照りすぎて不覚を取ったりしないだろうな。」
「女神、おまえちょっと行って様子を見てこい。」
「らじゃ。ふっふっふ、いつも冷静な翡翠のあんな姿やこんな顔が見られるなんてご褒美過ぎて顔が緩む。」
「おまえ、最低だな。」
女神がダンジョンに行くと、翡翠が雑魚相手にオーバーキル気味に魔法を連発していた。
「おい、翡翠、今日のおまえは魔術バーサーカーだな。」
「女神様、溢れ出す魔力が止まりません。」
「そうか、ここら一帯を片付けたら奥へ行って分身召喚だな。」
「はい、分身も顕現したくて体内でムズムズしています。」
「ふふ、おまえも若いな。巫女だからこんな風にしか発散できないか。」
「いやらしい笑顔はやめてください。かりにも女神様ですよ。エラさんならともかく。でもエラさんは大人だからそういうことをあからさまに口にしたりはしません。」
「なるほどな。では暴走しないように見守ってやるから、さっそく分身を召喚して奥へ行こう。」
「はい...あっ!」
翡翠は背後に迫る大蛇を一刀両断に切り捨てた。
「油断も隙もありませんね。」
「おまえには元々油断も隙もないだろ。さあ、行くぞ。」
「はい、分身壱、弐、参、顕現せよ!」
「しかし、いつ見てもおまえの分身はみんな顔が違うな。」
「そうなんですよ。顔も能力もばらつきがあります。1体だけ集中して召喚すればうり二つのができるのですが。」
「こいつらを連れて何を狩るのだ?」
「ダイヤモンドドラゴンです。」
「それはまたずいぶんとやっかいな敵を選んだな。」
「分身を人身御供に差し出して敵の体内にダイヤモンドの結晶構造を壊す触媒を仕込みます。食べたら身体が壊れる。」
「だけど炭素結晶が瓦解したらダイヤモンドも手に入らないじゃないか。」
「それはかまいません。資金を稼ぎに来たわけじゃありませんし。」
「いや、いかん。物欲を捨ててはいかんぞ。性欲も物欲も捨てたらもう人間ではなくなる。」
「そんなものでしょうか?」
「そんなものだ。おまえのためを思って言ってるのだ。」
「ならば分身を犠牲にはしますが、何がドラゴンにとって致命的かわからないので、何体かトライすることになります。」
「いいじゃないか。それでおまえの火照りも収まるだろう。」
「いやらしい目で笑わないでください。では分身壱、トロンビン放出の術式を構築してからドラゴンの口を目指せ!」
「トロンビンか。血液凝固だな。」
「はい。でもダイヤモンドには血も涙もないような気がします。」
分身壱は果敢にも調薬してドラゴンの顎を切りつけ、そのあと大きく開かれた口の中に飲み込まれた。ガリガリと骨が砕ける音がする。翡翠の表情からは一切の感情の変化が認められなかった。
「どうやら全く効果がないようです。では次、分身弐、テトロドトキシン放出の術式を構築してから突貫せよ!」
「フグ毒か。神経インパルスが遮断されるな。」
「効きません。生体機能としての神経組織ではないようです。どうやら魔力ですね。ならば、分身参、魔力強制排出の術式を構築してドラゴンに挑め!」
ドラゴンの口に飛び込み、ガリガリと骨を砕かれ絶命した分身参から発せられた魔力強制排出の術式は、ドラゴンの身体機制を司る魔力を目や口から外部に流出させ、周囲は魔素で満ちあふれた。
「魔素がこんなに満ちた空間にいるとたぎってくるな。おまえは大丈夫か、翡翠。」
「さっきの雑魚戦で大量に減らしたので大丈夫です。それより女神様、見てください、ドラゴンが。」
「おお、倒れそうだ。こりゃ勝ったな。」
「霊力も大量に消費して、私の精気の状態も正常に戻りました。」
「よし、ではダイヤを拾って帰ろう。」
「女神様は人間ではないのですからダイヤなんていらないのでは?」
「うん、まあそうなんだが、女は光り物に弱いんだ。ほれ、半分こしよう。」
「女神様は見ていただけなのに。」
「はっはっは、やっぱり物欲はあるんじゃないか。」
「いや、私も女ですから光り物には弱いんです。」
「おお、戻ってきたか。清々しい顔になってるな。」
「ご心配をおかけしました、青水様。それでは物語世界へ出発します。」
「ああ、頑張って来いよ。」
発散できて、大量のダイヤモンドもゲットできて、めでたしめでたしでしたね。




