終章 花と闇の婚礼
アシュデルは疲れていた。
なんとか皆の要望通りに、衣装からアクセサリーまで間に合わせたが、もう動けなかった。
式の最中寝なかったのは、イリヨナが隣にいたからだ。
スカートの後ろだけが引きずるほど長い、ミニ丈のドレスを着たイリヨナは、まさに妖精だった。感無量すぎて、泣かなかったことを褒めてほしい。
ミニ丈にして正解だった!皆が頑張って作ってくれたチュールでできた蝶が、イリヨナをまさにフェアリアにしてくれた。弟子達、特にギンヨウには、百年くらい頭が上がらないだろう。本当に、急ごしらえのお針子達をまとめ上げ、弟子達を顎で使い倒したギンヨウは、まさに救世主だった。そんなギンヨウは何か商売に結びつく何かを見つけたようで、油断ならない笑みを浮かべていたが、とりあえず見なかったことにした。
イリヨナのドレスは、純白というオーダーを受けていたのだが、アシュデルは動くと金色の輝きが走る特殊な加工を施した。それをインジュに頼んで当日施したため、目の当たりにしたシェラに控え室に押しかけられアシュデルは抱きしめられて、リティルの手前大いに焦ったが、シェラの「ありがとう」に、間違っていなかったことを確信してホッとした。すかさずギンヨウに「師匠にしては、いい仕事をしやがりましたね。師匠にしては」と褒められた。ボクだってやるときはやるのだ。
アシュデルはドレスに袖を通したイリヨナを見るのは、当日が初めてだった。
彼女のドレスに関わったのは、デザイン画のみで、あとは普段から着物を縫っている弟子のフサに委ねたのだ。「あたし、着物専門なんですけど……」と言っていたが、総指揮のギンヨウの下、とてつもないスピードで仕上げてくれた。
「当日、攫って逃げないように、気をつけやがってください」フフンと自信ありげだったギンヨウの自信通り、花嫁は会場中の視線を独り占めにした。
リティルに手を引かれ、しずしずとオレンジ色のバージンロードを歩いてくるイリヨナを見た時、平常心を保つのが大変だった。ブーケに選んだ、闇の領域に咲く、薄墨をかぶったような赤いバラ・翳りのバラの花言葉は、美しき門出とか、幸せな結婚とかになるな!と本気で考えてしまった。
見つめすぎて「出力を抑えろ。目が融解するぞ?」と盲目のアシュデルの介助の為という名目の、ツッコミ役のためにそばにいたジュールに、呆れられた。……父がそばにいなければ危なかった。
花をあしらったバルーンベールの奥のイリヨナは、本当に綺麗だった。普段、ツインテールに結ったその髪を下ろしているのも、非現実感を増していた。
夫婦を続けていく覚悟を問う役は、太陽王夫妻が務めてくれた。オレンジ色の長衣に身を包んだ2人はどこかの神話から抜け出した神のようだった。……なぜ、猫の姿のルキがルディルの足下にいるのかは疑問だったが。
夕暮れの太陽王・ルディルと夜明けの太陽女王・レシェラ両名を前に宣言はなされ、アシュデルはやっと花嫁のベールを上げる栄誉を与えられた。
誓いの口づけを、触れるだけのキスで留められたことを褒めてほしい。あとでイリヨナから「やり過ぎたら殴るつもりでしたの」と言われ、失態をしでかさなくてよかったと、心から思った。
ベールを上げて現れた彼女の顔……忘れたくなくて、披露宴の最中にスケッチしてしまった。それをリティルに見られて「おまえらしいな」と笑われた。
グロウタースに乗っ取った結婚式は、まさに1日仕事で、徹夜がかさんでいたアシュデルの体力を容赦なく奪っていった。
弟子達が奮闘してくれたおかげで乗り切れたが、闇の城へ戻った頃には、夜も更けていた。
風呂に入らなければ……と思いながらも、着たことのない白のタキシードのまま、ベッドに倒れ込んで動けなくなっていたアシュデルは、ノックの音で目を覚ました。
「はい」と反射的に返事をすると、扉は躊躇いがちに開いた。
そこに立っていた人を見て、アシュデルは息を飲んだ。そして、相手を確かめなかったことを、心底後悔した。
「アシュデル……あの……」
上品な露出の少ない黄色いワンピースを着たその人は、インリーだったのだ。油断した。ここは闇の城だ。彼女がここにいるとは思わなかったのだ。
「君、ボクに恨みでもあるの?それとも、イリヨナの幸せを壊したいの?」
「そ、そんなこと――」
部屋の中に足を進めそうになったインリーを、アシュデルは鋭く制していた。
「入らないで!君、ボクが君と部屋に2人きりでいるところを、イリヨナに見られた時の事、想像してくれる?言い訳しないといけないような状況、ボクに作らせないで」
ここまで言っても去らないインリーに、アシュデルはため息をついた。
「レイシなら、君とは会わないよ?」
レイシには『アッシュの鍵』を渡してある。今頃グロウタースだろう。ギンヨウが帰って弟子達と飲む!と言っていたので混ざっていることだろう。普段弟子達は持ち場の工房を離れられないので、今日だけはギンヨウの工房に集まることを許可したのだ。
披露宴のガーデンパーティの間も、弟子達と行動を共にして、あまり風の城の皆とはいなかったように見えた。それは、アシュデルの預かりとなった彼の、けじめなのだろう。
「どう、して……」
今、傷ついたように絶句するインリーもレイシと同じく、精霊的年齢が十代だ。だが、彼女は風の王の第1王女という責務がある。年齢の幼さは言い訳にはできないと思うのだが、どうにも思慮が足りないなと、本当にあのインファの、イリヨナの兄妹なのか?と思ってしまった。
そう言えば、四天王が入れ替わり立ち替わり警戒していた。お祭りムードに精霊達が羽目を外さないようにと目を光らせているのかと思っていたが、最大の警戒はもしかすると、彼女だったのかもしれない。
「どうしてって、それだけのことを、君がレイシにしたんだと思うけど?君はボクを、救った気でいるかもしれないけど、ボクの周りにいる人達はそうは思ってない。闇の城へは絶対に行ってはいけないよ?ボクとイリヨナを傷つけた君を、ルッカサンは今のところ許す気はないからね。あとは父さん。あの人は、想像力のない人が嫌いなんだ。ボクも、君とは関わりたくない。君は風の精霊で、今はフリーだからね」
グロウタースで、レイシと暮らしてみて感じた事が1つある。
レイシは、どうしてあの姿、年齢なのだろうか?ということだ。
本来の彼は、違う気がした。少なくとも、18才ではない。最低でも、22才のラスくらいの年だと思う。例外の19才風の王・リティルがいるために、一概には言えないが、もう少し年上だと思う。彼が、あの年齢を選んだのには、ワケがある気がした。
それが、この人だとしたら、こんな悲劇はないなと思う。
レイシは、インリーとよりを戻すつもりはないと言い切っていた。虚勢でも、彼の言葉を汲むなら、保護者であるアシュデルがすることは、インリーを拒否することのみだ。
そして何より、愛する妻との絆を守るためには、インリーとは接触しないことが最大の防御だ。医療行為と割り切りたくても、イリヨナに捧げたかったファーストキスを奪われたのだ。しかも、幼少期と成人後の2つとも。
大人げないと言われても、アシュデルは所詮、恋愛脳の花の精霊だ。インリーを拒絶したい気持ちは、日増しに強くなっていた。陰りの女帝・イリヨナの王配になったことで、アシュデルの所属は闇の城となる。風一家ではなくなるのだ。協力精霊ではあるつもりだが、風一家でなくなればインリーに敬意を払うことも、付き合うこともしなくてすむ。
「アシュデル君、イリヨナが来ますよぉ?ああ、やっぱり、準備できてないですねぇ」
インリーの後ろにインジュが音もなく立った。やっと来てくれたと、アシュデルは安堵した。きっと見張ってくれていると思っていた。
「インリー、お話は終わりましたよねぇ?アシュデル君これから初夜ですから、忙しいんですよぉ?」
インジュはニコニコしていたが、有無を言わせない威圧感があった。インリーは何も言わずに戸口から去って行った。インジュは部屋に入ってくると扉を閉めた。
「イリヨナは、シェラとお母さんに準備してもらってます。アシュデル君の準備ができたら呼びますからパパッと準備しちゃってください」
イリヨナが危険ではないのか?そう頭をよぎったことが伝わってしまったかもしれない。インジュは、大丈夫ですよぉ?と安心させるように言葉をくれた。
「あ、うん。ありがとう」
眠気の覚めたアシュデルは、部屋に備え付けられている浴室へ向かって行った。
アシュデルを見送って、インジュはフッと息を吐いた。
四天王はインリーを警戒していた。いつ、アシュデルと接触するかと交代で見張っていたのだ。そして、彼女は最も最悪なタイミングでアシュデルと接触した。この部屋はラスにずっと、今でも見張られている。ラスから連絡を受け、行こうとしたインファを押しとどめてインジュが来たのだ。インファでは、アシュデルに迷惑をかける結果になると思ったから。
イリヨナを送り届けたあとは、ラスに代わり、朝までシェラとインファが部屋に結界を施す算段になっている。まさに厳戒態勢だ。
インリーは、どうしてしまったのだろうか?子供っぽいが、ここまで何もわかっていないことはなかったのに。アシュデルの成人の日前後の事件は、彼女が子供っぽかったから起きたこといえばそうだ。処置の方法が方法だったためにさすがのインリーもレイシに言えなかったとしても、イリヨナに10数年も1度も会っていないことは問題すぎる。イリヨナと信頼関係を築いていれば、レイシのように和解することができただろうに。アシュデルも拒絶という手段を取らずに済んだだろう。ああ、これでアシュデルは風一家から抜けてしまう。抜けざるを得ないのだ。
インジュも、未熟な時間が長かった落ちこぼれだが、今のインリーを容認することは到底できそうになかった。行動が奇妙すぎる。今更何を言ったとしても、インリーの言葉を聞き入れる者はいない。立場上、聞き入れてはいけないのだ。そういう失敗を、インリーはしてしまったのだ。リティルの血を引いているだけに、インリーの件は後を引きそうだ。
そんなことより今は、アシュデルとイリヨナの初夜を成功させねばならない。
相手の霊力を自分の物にできる霊力の交換。それが行われたか否か、すぐにわかってしまうのだ。この婚姻が、政略結婚の体を成しているだけに、下世話だと言われても注目されてしまう。すでに影も形もないロミシュミルなど、引きずるだけ馬鹿らしいと思うのだが、それだけ彼女は強烈だったのだなと、思うより仕方がなかった。
インジュは、問題なくアシュデルが浴室から出てきたのを確認して、セリアに合図を送り、部屋を出たのだった。
イリヨナは、セリアのエスコートで、アシュデルの部屋まで送り届けられた。
部屋の中は光量が抑えられていたが、アシュデルはベッドで魔導書を開いていた。
「イリヨナ」
顔を上げたアシュデルが笑う。イリヨナは、踝まであるマントを羽織ったままベッドへ近づいた。
「寝ているかと思いましたの」
風の城へ引き上げる頃には、アシュデルはかなり疲れた顔をしていた。イリヨナは今夜は失敗するのでは?と内心思っていた。
アシュデルが寝てしまうのなら、それはそれでいいかな?と思っていた。アシュデルとはほぼ毎日逢えていたのだが、こうやって同衾するのは半年ぶりなのだ。彼の体温を感じて眠れる。イリヨナも今日を心待ちにしていたのだ。
実はリャリスから、今夜が失敗したらある魔法を教えてもらう算段になっていた。なんでも、不能で霊力の交換ができないインジュから、霊力をもらう為に魔法を構築したようで、それを1度だけ使えるようにしてくれるという。アシュデルの姉のリャリスの目からも、今夜は無理なのでは?と思われていたことがうかがえる。
リャリスからは「失敗してもいいのですわ。義務などではしてはいけませんのよ」と諭された。彼女は前世から不能のインジュを想い続けた人だ。その言葉は重い。そして彼女からあるモノを渡された。「アシュデルが役に立たなかったら、お使いになって」そう言って、蠱惑的に笑った彼女はイシュラースが誇る薬師だ。
「ははは、実は寝てたんだ。インジュに感謝だね」
昼間のタキシードも新鮮だったが、今はバスローブ1枚だ。
結婚式というものを、見るも体験するも初めてだったイリヨナのために、アシュデルは参列する皆の衣装を、それぞれの精霊のカラーに則した、色とりどりに華やかなモノを用意した。上品なラメの入った緑色のスーツを着たジュールは「主役よりも目立ってしまうぞ?」と苦笑していたがまんざらでもない様子だった。さすがは花の王、何を着ても似合ってしまう。「引き立て役をしろ!」とジュールに絡まれていた黒衣のノインも、十分主役だった。
シャンパンゴールドのスーツで揃えた風四天王は、眩しかった。見とれていると、アシュデルに不満そうに「自分のお兄さんに見とれないの!今日はボクだけ見てて」と囁かれ思わず上げていたベールを下ろすほどには赤面した。「アシュデルが1番素敵ですの!」と言い返せなかったことが心残りだ。
そして、美しかったのは女性達だ。
風の王妃であるシェラは、シャンパンゴールドのドレスの上に、光を受けてキラキラ輝くダイアモンドが散りばめられていた。それは、彼女の黒髪に咲く、神樹の光の粒のような花をイメージしていたらしい。可憐で美しい母にピッタリだった。
他の風の精霊の女性陣は、黄色いドレスの色は統一されていたが、歌の精霊のエーリュは五線譜と音符が、髪に花を飾っているフロインは花が、インリーは鳥の羽根がというふうに、特徴を捉えた装飾がされていた。濡羽色のカルシエーナは、黒という色はそのままに、シェラと同じダイアモンドを縫い付けることで、星空を纏うようなドレスに仕上がっていて「お母さんとお揃いだ!」と喜んでいた。
石色がたくさんある蛍石であるセリアは、虹色。
サファイアブルーの髪色のリャリスは、明るい青色からサファイアブルーへと変わるグレーションで、雷帝、煌帝の妃の美しさは暴力に近かった。
花の十兄妹の女性は皆、それぞれの司る花が描かれた着物ドレスで、形状は同じものの、髪飾りなどの小物までもがそれぞれの花をモチーフに凝りに凝っていた。
アシュデルが危機迫る勢いで絵を描いていたそれが、見事に実を結んだのだ。
女性陣に時間をかけすぎて、男性陣のスーツが皆同じになった!と発狂していたが、リティルが苦笑いで「こういうのは、女性が主役だろ?」と説得していた。追い詰められてデザイナー魂に乗っ取られたアシュデルが「いや、いける!まだ10日くらい寝なかったらいける!」とだだを捏ねる中、それを納めたのはギンヨウだった。
「こんなこともあろうかと、皆さんの胸に飾る、コサージュの花を変えて作ってみやがりました」試作品ですが、弟子一同からの贈り物だとギンヨウが声をかけると、アシュデルは憑き物が落ちたかのような顔をして、寝落ちた。
「ふふふ、たわいない」とギンヨウが魔王の参謀のような顔で笑っていたが、誰もそれをアシュデルには伝えなかったらしい。
イリヨナは改めて、ベッドの上にいるアシュデルを見た。
「緊張してる?」
魔導書をサイドテーブルに置き、僅かに首を傾げて問うてくるアシュデルの余裕さに、イリヨナは対抗心を持った。イリヨナはベッドに上がり、アシュデルの隣に行くと、マントを一息に脱ぐ。アシュデルが息を飲んだ。今まで、散々触ってきたくせに、と思った。
「お気に召しましたの?」
大人っぽさを意識して澄まして問えば、アシュデルは素直に頷いた。
「これ、透けて――ないんだ?へええ……ああ、このリボン取ると脱げるのか……これ用意したの誰?」
すべてにおいて、際どいベビードールだ。しかし、あからさまでも下品でもない。イリヨナの妖精感が怒涛のような衣装だった。
ヤバイ……目どころじゃないところも完全に目覚めた。
「ジュールですの!」
これを着てくれたイリヨナはきっと女神だ。
「!?父さん……いい仕事ありがとう……」
さすが稀代の色欲魔!とアシュデルは脱帽した。これで初夜を失敗しようものなら、半殺しにされそうだ。そしてギンヨウにトドメを刺される未来が待っている。
「これが、始まり、ですの?」
腕の中に捕らえたイリヨナが呟いた。
「うん。そうだよ。ここが終わりじゃない。ここが、始まりなんだ。はあ……長かった……ここまで来るの……」
もう、言葉はいらなかった。瞳を閉じたまま笑うアシュデルの顔が近づいてきて、イリヨナはそれを受け入れた。あとはもう、ただ、お互いを求めるのみだった。
グロウタース各地にあるアッシュの工房では、目を患った店主が結婚したというニュースが、アシュデルが行く先々で話題となっていた。
「そんなにボクが結婚すること、衝撃なの?」
時計のような繊細な物が作れなくなり、巨人の捻れ角島の工房は、アシュデルの描いた絵を飾るギャラリーとなっていた。しかし『フェアリア』シリーズは腕時計のみミモザが作れることもあり、そのまま販売していた。
「そりゃ師匠、見てるだけでいい美形でしたから!」
ボクの師匠は鑑賞物!と、ミモザが新作の絵を壁に飾りながら、元気いっぱいに笑った。
「美形ってところは否定したいけどね」
「そこ!自覚持ってくださいよ!イリヨナさん悲しませたら、承知しませんよ?」
どうしてそこは否定的?ミモザは、閉じた瞳に色気しか漂わせなくなった、歩く猥褻物な師匠を眺めた。ギンヨウの言った通り、アシュデルの左手の薬指にある黒い結婚指輪がいい仕事をしてくれている。
「……犯罪とか、騙してるとか、羨ましいとか色々言われるんだよね。連れ歩くと」
アッシュの妖精のような奥様の話は、今1番ホットな話題だ。誰も付け入る隙はない!と植え付けるまで町中をパレードしてほしい。
「もっと連れ歩いてください!イリヨナさん、まさにフェアリアなんで、師匠の物ってことアピールしないと掻っ攫われちゃいます!」
「えっ!?それは困ったなぁ……指輪にもっと色々仕込んだ方がいいかなぁ……」
……物理的にじゃなく、心なんですけど?と言おうかと思ったが、この凄まじい執着の師匠が許すはずないかと、ミモザは思い直した。だが、止めるところは止めなければならない。
「これ以上の防犯は、犯罪になるんでやめてください。師匠」
ミモザが真顔で止めてきた。だが、イリヨナが別の男となんて、考えたくない。そこへ、アシュデルの腕時計にギンヨウから着信が入った。
『師匠、イリヨナさんが来ていますが、喧嘩でもしやがりましたか?へたれ師匠』
「ええ!?どうしてそっち!?い、今行くから!」
慌てて扉に鍵を使うアシュデルを見送りながら、ミモザは心底嬉しそうに笑った。1番弟子のギンヨウは、イリヨナにも頼りにされている。ギンヨウが把握してるなら、あの2人は大丈夫だなと、ミモザは思っている。
「あれ?アッシュは?」
奥の部屋に、時計の在庫を取りに行ってくれていたレイシが戻ってきた。
「イリヨナさんが来てるとかで、白虎野島です」
「はあ?なんで白虎野?しかもオレを置いてくとか、保護者の自覚ないのかよ!」
「いってらっしゃーい!」
悪態をつきながらアシュデルを律儀に追うレイシを、ミモザは見送った。
ああ、平和だ。今日も平和に時が過ぎていく。
ミモザは1人、開店準備を再開したのだった。
これにてワイウイ21閉幕です!楽しんでいただけたなら幸いです