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3話王国の現状 ~雷魔法『電磁龍静閃』~

『魔法命名士』の職を与えられた後、時間も昼過ぎとなっていたため国王ジークが昼食を振舞ってくれた。

 イースと二人で彩り豊かな食材の並んだ食卓を囲む。

 この世界に来てから保存食ばかり食べていたからか、新鮮な野菜としっかりと味付けされたステーキがまた一段とおいしく感じる。


 ただ、口に運ぶ隙がなかなかないほどに、イースの話が止まらない。

「さっきのエイマーの魔法凄かったー! 私にも教えて欲しいなー!」

内容はずっと魔法の話だ。

「イースは風の魔法を使えるのか?それなら使えそうだが。」

 何かの内容を思い出しながら、イースは話を続ける。

「私は炎だけ、種類の違う魔法を使う人は今は存在しないわ。昔のことが書いてある本には二種の魔法を操りし者が━とか書いてあったけどね!」

 ほーう、伝承であるにしても興味深い話だな。

 やっぱし右手から炎、左手から水みたいなのには憧れるものだ。

「いつかできるようになるといいな!その時はかっこいい名前つけるよ!」

「師匠ありがとう!私も頑張る!」


 魔法の話は出された昼食を食べきっても延々と止まらない、夢中になって話し続けていると

 コンコンコン

 ノックの音でいったん会話を中断する。

「失礼します。タカミ様、国王様からの伝言がございます。」

 今朝俺を送り届けてくれた大柄な兵士が入ってきた。

「タカミ様は正式に軍の職に就任されたため、今の住居から城へと引っ越して欲しいとのことです。明後日、私が迎えに行きますので、それまでに引っ越しの準備をお願いします。」

 城に住まわせて貰えるなんて好待遇だ。飯もうまいし、快諾させて頂こう。

「わかりました。よろしくお願いします。」

「それでは、部屋の外でお待ちしておりますので、帰る際にお声がけください、家までお送りいたします。」

 こう言い残して、大柄な兵士は部屋を出て行った。


「やった!師匠も城に住むんだね!これからもっと魔法教えてね!」

「もちろん!でも軍の色んな人に教えなきゃだからな、これから忙しくなるな」

「師匠独り占めできないのはさびしいな…」

 そこからまた話し始め、日が暮れてきた頃に兵士に声をかけた。

 待ちくたびれたのか、帰り道は行きと比べてかなり急ぎ目に馬車を走らせていた。


 翌日は、荷物をまとめるのを早々に終わらせ、配達の仕事でお世話になった方々にお礼を言って回った。

 この世界に転生して最初の頃、右も左も分からなかった俺を助けてくれたご恩、いつか返さなければいけないな。


 そして引っ越し当日、馬車が到着しいつもの大柄な兵士が迎えに来た。

「おはようございます。それではお入りください。」

 案内されて乗り込むと、今回は大柄な兵士も一緒に乗り込んできた。

 今日は御者を部下に任せているそうだ、この人がいると馬車内部が狭く感じるな。


 出発すると兵士が喋りだした。

「そういえばまだ名乗っていませんでしたね、デムラーと申します。今後ともよろしくお願いいたします。」

 彼は深々と頭を下げた、巨体のため動作に迫力がある。

 挨拶を終え、デムラーは続けて話し始めた

「城に着くまでの間に、魔物討伐部隊のことを詳しく話しておこうかと思いまして、同席させてもらいます。ただここからは話す内容は、市民の皆様には他言無用でお願いします。」

 緘口令が敷かれていたわけか、どうりで最初の1か月に噂程度の情報しか耳に入らなかったわけだ、是非とも教えてもらわないとな。

「わかりました。ご教示お願いします。」


「それではまず、魔物討伐部隊の仕事内容ですね、基本的には町の周囲に現れた魔物を発見し報告する見張り部隊と、報告された魔物の戦力が高かった場合に召集される討伐部隊に分かれています。タカミ様は討伐部隊の強化を命じられるでしょう。」

 そういう警備システムで町が守られていたわけか、魔法のバリアとかではないわけだな。


「次に、敵となる魔物の話です。これに関してはこちらの魔物報告書を渡しますのでご覧になってください。」

 ようやくファンタジーの肝となる魔物が見られるわけか、期待をしながらページをめくり始めると。

 まるで子供の時に読んだ攻略本のようだ!あまりの楽しさにページをめくる手が止まらない。




 ん?

 夢中になって読み進め、巻末にさしかかったところで、気になるページが出てきた。

 他のページの魔物と違い、姿形は人型のモヤモヤとしたものが描かれており、名前も書かれていない。

 不思議に思い、ページを隅々まで読んでいると、デムラーから説明が入った。

「そちらの人型の魔物は魔族と呼ばれています。非常に高い知能と攻撃性持っており、スケッチも取れておりません。」

 魔族か!やっぱりそういう敵もいないとな!

 じゃあこの世界にも、魔王とかがいるんじゃないのかと妄想を膨らませていると。

「この魔族が現れてから大変なことになっているんです…フーチェン王国の現状について、最後に話しておきたい。」


 デムラーは深刻な顔で話し始めた。

「最近現れ始めた魔族は、これまでの魔物と比べて戦闘力が高く倒しきれてません。それによって、討伐部隊の出動が多くなり防衛の負担が非常に大きくなっているのです。それにより、兵士たちも疲弊しきっているのが現状です。」

 防衛の疲れから、前に城を訪れた際には弱音を吐いていたのだなと思い出す。

「しかし、タカミ様の教えてくださる魔法があれば魔族にも対抗できる、王国の危機を救ってくれると、この間の魔法の指導を見て思いました。是非とも我々にお力添えをお願いします。」

 再び頭を下げる、ここまで期待されてるなら全力でやるしかないだろう。

「わかりました、私の知識を活用して頑張ってみます。」

「ありがとうございます!あとこれは、個人的なお願いなのですが、私にも一つ魔法を教えていただけないでしょうか?」

「もちろん構いませんよ」

 こうして城に着いた後、デムラーに魔法を教えることとなった。


 場所を庭へと移し、まずは魔法を見せてもらう。

 剣を手にし、少し前に目標となる金属の鎧を置いた。

 魔法剣士ってやつだな!杖、箒に続いて魔法の剣!ファンタジーらしさはあるがあまり期待せずに見守ろう。


「では行きます」

 目を瞑り集中し、その姿勢まま微塵も動かず構える、剣を振るう際の所作のようだ。そのまま10秒ほどが経過すると

「はっ!」

 威勢のいい掛け声と目を見開き鎧に向かって剣をふるう、その剣先が当たった瞬間

 パチンッと可愛らしい音がし、そのまま振り下ろした剣は鎧に綺麗な直線の跡をつけていた。

 巨体から繰り出される迫力と綺麗な太刀筋に見とれていると、デムラーが話し始めた。

「見ていただいた通り、私は雷魔法の使い手なんですが、ほとんど魔法を有効活用できていないのです。」

 あの可愛らしい音は雷魔法だったのか、静電気でも起きたのかと思っていた。

「あれだけ剣の腕が立つなら魔法なしでも良い気がしますけど…」

「いえ、魔族に対抗していくため剣術だけでは限界があるのです。なにか良い魔法はございませんか。」


 うーん

 あの雷魔法をもっと強力なものにする…か、剣にさらに電気を帯びさせる…

 悩む俺の脳内では昔見たテレビ番組の光景が再生されていた。

 先生が化学の実験をする子供向けの番組だ。

 手に携えた棒状の風船を布でこすり静電気を起こして、ビニールひもに近づけると離れていくって実験内容だった、静電気クラゲってやつだな。

 静電気も舐めてると結構痛いしな、冬場はドアノブを触るたびに緊張するものだ。

 なんとなく考えがまとまったところで、俺はデムラーに魔法の名前と所作を教えた。


 先ほどと同じように所作に入る。

 目を瞑り集中する、ただその間に手で剣をこする動作が追加された。

 それの効果なのだろうか、剣を見るとその刃の回りではバチバチと音が鳴り、帯電し始めている。

 一秒ごとにその音は大きくなり、剣の回りを纏う電気は龍のように大きくうねり始めた。

 そして、10秒ほど経ったところで再び剣を強く握りしめると、


 「電磁龍静閃!」(でんじりゅうせいせん)


 掛け声と共に剣が鎧へと当たった瞬間、凄まじい電撃が起こり、鎧が真っ二つに割れた。


 割れてなお、ビリビリと帯電している鎧を見ながら、デムラーが話しかけてきた。

「やはりタカミ様の魔法は凄いな、いとも簡単に鎧を切ってしまうとは。」

「元々の剣術が優れていたからですよ、だからこそ強力な魔法ができたのです。」

 実際ここまでになるとは思わなかった。思い込みの力なのだろうか。

「そんな謙遜せずに、私はタカミ様のその力が魔族を倒し、王国に平和をもたらすと信じていますよ。」

 まるで勇者のような扱いに気持ちが昂る。

 


 その後、彼と庭で話を続けていたところ

「師匠ー!」

 イースの声だ、慌てた様子で駆け寄ってくる。

「どうした?」

「さっき魔物が発見されてこれから討伐隊が出動するらしいの!私たちも参戦しましょう!」

「よし分かった、すぐに行くぞ!」

 遂に魔物との戦闘か!俺の命名した魔法がリアルの魔物にどこまで通用するんだろう…楽しみだ!


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