記録7.ある自殺者の日記の最終ページ
もう無理だ、ここまで逃げてきたけど、追いつかれてしまった。
今も、声がする、くえるぞ、くえるぞって。
あの日と同じ、あの暗やみの中で、ずっとずっとずっと響いていた声と同じ。
オクエ様の声。きっと私のおなかの中からしてる。だから逃げられないんだ。
あああああ、うるさい、おねがいだからもうやめて。
ゆるしてください、私は選ばれなかったじゃない、もう関係ない、関係ない!!
おやまがくえる、くえる、ああああ、いやだ、いやだ。
あの日食べたから、だからお腹の中からこえがするんだ。
怖い、あの白いぶよぶよ、村長はありがたいことだよって言ってたけどうそだ。
村はなくなったらしい、土砂崩れだって。おかえしできなかったんだ。あはは。
ああああああああ、でも、だからだから出てきちゃったんだ。おりてきたあとそのまま、村からもでてきて、縁をたどってきたんだ、わたしをさがしてるんだ。
たすけてたすけて、おかあさん、おとうさん。選ばれたのはわたしじゃない、私じゃないのに。あのこが、あのこがかえったじゃない、一緒にかえったじゃない。だいかんどうじはあの子でしょう、どこかへ行って、私じゃないの、私じゃないの、くえるぞ、くえる。おやまがくえる。違う違う、私じゃない、違う。ゆるして、ちがうの。
あ、そっか、あのひのあれが、まだここにのこってるから。
そうだよね、神さまだもん、消化できないよね、これがいけないんだ、そうだ、だしちゃえばいいんだ、そしたらだまってくれる? 許してくれるかな?
おかえしします、オクエ様、これをおかえししますから。
だからどうかゆるしてください、わたしじゃないんです、あのこなんです。
あなたがえらんだのはわたしじゃないんです。おかえしします。
※この後の文章はページが血塗れのため判読不能。