記録5.山本教授の手記 ※一部抜粋
20XX年3月4日
ついに旧它倉村へ足を踏み入れた。これから“オクエ様”なる土着神に関する資料を集める。近隣の市区町村にこの村の村史は残っていたが民間信仰に関する記述は見当たらなかった。ここで何か見つかればいいが……
20XX年3月5日
村のほぼ全域が土砂に呑まれた後そのままになっていた。土砂のほとんどは撤去されているとはいえ無事な建物は残っていそうにない。
かつての村民の住居跡を発見したが損壊が激しく以前の暮らしぶりを窺うことはできない。何軒かの跡地を確認したが共通する小祠、ご神体なども見当たらない。
20XX年3月6日
先日かつての教え子が送ってくれた手紙に出てきた社らしきものを発見した。ただ山の麓に位置していたからか損壊が激しい。
瓦礫を退けて確認したが特に、民間信仰の内容に関係すると考えられる物は見当たらなかった。ただ、しめ縄の残骸のようなものは見つかったのでここに何らかの神聖なものが祀られていたのは確かなようだ。
20XX年3月7日
何か大きなものが這った跡を見つけた。そのものの幅は約50cm程度だろう。痕跡を追おうとしたが、雨が降ってきたので探索を中止せざるを得なかった。雨が止んだら再度探すことにする。
20XX年3月8日
今日も雨が降っている。痕跡が消えてしまわないか心配だ。
20XX年3月9日
今日も雨だ。
20XX年3月10日
雨が止んだ。旧它倉村へ向かう。
なんだあれは 信じられない
生き物なのか?(筆跡が乱れている)
20XX年3月11日
調査を打ち切る。
私は、知ってはいけないことを知ってしまったかもしれない。
禁忌だ、きっとあの村の信仰は、かなり危険な……
あれは、恐らく、生きていた。