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逆行死神令嬢の二重生活 ~兄(仮)の甘やかしはシスコンではなく溺愛でした~  作者: 猪本夜
第一章

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31 大好きな兄(仮)とのデート2

 観光地にやってきた。

 車から降りた私と流雨は、手を繋ぎながら歩き出す。


「道の先に神社があるのよね? そこまで到達できない気がする!」


 神社が有名らしいのだが、そこまでの歩道は、左右に軒並みスイーツ店や美味しそうなグルメの店舗が賑わっている。


「時間はあるし、ゆっくり歩いていこう。紗彩はいろいろ食べたいだろうから、二人で半分ずつしながら食べようか」

「うん!」


 餡子餅などの甘いもの、から揚げなどの塩辛いものなど、二人でちょっとずつ交互に食べていく。


「美味しいね! あ、るー君、コンビニでちょっとウェットティッシュ買ってきていい?」

「いいよ」


 手がベトベトすると思い、流雨にコンビニの外で待ってもらい、ウェットティッシュを買って店を出てくると、流雨が女性二人組に話しかけられていた。


「るー君」


 逆ナンだろうかと、流雨の腕に絡みつく。今日の流雨の時間は私のものですから。


「あら……妹さん? ……ではなさそうね」

「……るー君の知り合い?」

「いや、知り合いというか、大学が一緒だったらしい」


 らしい? 流雨の顔を見ると、誰だったっけ? と言いたげな表情である。女性二人は、私には眼中がないようで、流雨を熱心に見ている。


「せっかくこんなところで偶然会えたのだし、長谷川くんも、この後一緒に行動しません? 同窓会もかねて。ああ、もちろん、そちらの子も一緒で構わないわ」


 ええ!? 知らない人と一緒なんて、絶対嫌だ。流雨に絡みついている腕に無意識に力が入ってしまっていたらしい。流雨は私が絡みついていない方の手で、私の頭を撫でた。私に笑みを向け、その後女性二人へ向いた。


「悪いけど、今日はこの子としか過ごさないって決めてるんだ。同窓会はまた今度。じゃあね」


 流雨はそれだけ告げると、私と手を繋いで歩き出した。後ろを振り返ると、女性二人が悔しそうな顔をしている。


「るー君、ありがとう」

「お礼を言われるようなことじゃないよ。俺が紗彩と二人で過ごしたいだけだから。そんな貴重な時間に、思い出せもしない人と過ごすなんて、時間のムダ」

「大学のお友達じゃないの?」

「大学は学部が多いからね。ちょっと話したことがあるだけで、知人面する人もいるから、その内の誰かだとは思うけど」


 流雨はまったく彼女らに興味がないようで、思い出そうともしていないようである。

 それから再び食べ歩きに戻る。


 お店に寄り、ちょっと食べては次へ移動する。そんな中、甘い匂いに誘われてある店の前にやってきた。


「すごい並んでる! たい焼きだ! 小豆餡と芋餡のミックスだって!」

「一つ買おうか。……人が多いから、紗彩はあそこのベンチで座って待ってて」

「うん」


 流雨に言われたとおり、ベンチに座って待っていると、近くを通った人がみんなカラフルな飲み物を持っているのに気づいた。ゼリーのようであり飲み物でもあるようで、色鮮やかで味が想像できない。


「すみません、それ、どこで買ったんですか?」


 飲み物を持っていた人に聞くと、場所を教えてくれた。流雨を見ると、あと五人くらいは買うまでに時間がかかりそうである。今の内にカラフルな飲み物を買って来ようと、教えてもらった場所へ向かった。


 結局、教えてもらったお店がなかなか見つからなかったが、やっと見つけてカラフルな飲み物を買うことができた。

 さて、流雨のいたお店に戻ろうと道に立つ。


「……どっちから来たんだっけ」


 左右どちらも似たような建物で、分かりやすい目印がない。私もここに来るまで、お店探しに夢中になり、道順を見ていなかった気がする。


「えっと、神社がある方に向かってたはずだから、神社のない方に行けば、るー君がいるはずよね?」


 しかし、どっちを見ても、神社がまだ見えない。


「……たぶん、右から来たんじゃないかな」


 自信はないが、そんな気がすると思い、足を向けようとしたとき、スマホの電話が鳴っているのに気づいた。着信の相手は、流雨だった。電話に出る。


「るー君、ごめん」

「よかった! 紗彩出た。今どこにいるの?」

「…………どこだろう」

「…………」

「す、すぐに戻るね! たぶん、右だと思うの!」

「ちょっと待って。紗彩は動かない方がいい。紗彩の近くの建物、分かりやすい目印とかない?」

「えっと……お店がある。ソフトクリーム屋さん」

「……他には?」


 流雨と電話でいくつか目印のようなものを伝え、待つこと五分。右側から流雨が来ると思っていたので右側を注視していたのに、左から流雨に抱き付かれ驚いた。


「あー、良かった。やっと見つけた」

「あれ? るー君、今左から来た? いつ私を追い越したの?」

「……追い越してないよ」


 ほっとした表情の流雨は、私の左頬を撫でた。


「紗彩は目を離すと、どこに行くか分からないから不安だな」

「ご、ごめんなさい……。みんなが持ってるコレ、買いたかったの……」


 買ったカラフルな飲み物を見せる。心配させてしまって、申し訳ない。


「いいよ。俺も分かってたんだけど、どうしようか迷ってたとこがあるから」

「……? 迷ってたって?」

「とりあえず、買ったもの食べようか。話はそのあとで」


 流雨の買ったたい焼きと私の買った飲み物を、二人で分ける。どっちも美味しい。大満足である。

 食べ終わってから、流雨はポケットからある物を出した。


「猫のぬいぐるみ?」


 流雨の車の鍵に付いていた猫のぬいぐるみを、流雨は鍵から外して私の手に乗せた。


「コレ、しっぽがチャックになってるんだ」


 チャックを開けろ、ということだろうか。しっぽを引っ張ると、チャックが開いた。中はポケットのような袋状になっているようで、黒い物体が入っている。


「何これ?」

「……GPS」


 GPS。現在位置を測る装置。それすなわち。


「迷子対策かぁ!」

「今日は週末だし人が多いだろうというのは予想ついてたしね。紗彩が迷子になるんじゃないかって思ってはいたんだけど、手を繋いでいれば問題ないかも、とも思ってたんだけどね」


 しかし、私が迷子になってしまったので、渡すことにしたと。


「……持っててくれる?」

「うん。持っておくね」


 すんなり頷く私に、流雨はほっとした顔をしている。車の中で話に上った時に、ぬいぐるみにGPSが入っていると話さなかったのは、ぬいぐるみを渡すかどうか迷っていたからだろう。私はバッグにぬいぐるみを付けた。


「でも、るー君がこういうもの渡すなんて以外。るー君なら、GPSのアプリ作って、それをスマホにインストールしてって、言いそうなのに」


 流雨の専門はシステム関係である。流雨の会社もシステム会社なのだ。


「うん。GPSアプリ作ったんだけれどね、さすがに紗彩はそれを入れるの嫌がるかなって思って、止めたんだ」

「え? 別にアプリ入れてもいいよ?」

「……いつでも位置特定されるんだよ?」

「うん。でもるー君しか見ないんでしょ? 知らない人が見るなら嫌だけど」


 流雨は少し戸惑いの表情で口元に手をやり、視線を少し外した。なんだか少しだけ嬉しそうにしているようにも見える。その後、私に視線を戻し、苦笑しながら口を開いた。


「紗彩は、そういうの嫌がらないんだね。俺を信用してくれてるんだと思うから、嬉しいけど。でも、俺の方がタガが外れそうだから、やっぱりアプリにするのは止めておくよ」

「……そう?」


 タガが外れるとは、何のだろう?


「うん。この小型のGPSなら、バッテリーが必要だから、長時間は使えないからね。今日以降、また必要な時があれば、その都度GPSは渡すことにする」

「うん、分かった」


 それから、私たちは再び歩き出すのだった。

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