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123 戴冠式1

 日本で葉月に襲われた数日後、帝都でメイル学園の卒業式があった。皇帝になったばかりの第三皇子など、私や流雨も無事卒業を迎えられ、卒業パーティーなどもあった。


 その後、私は学生ではなくなり、死神業と副業の仕事をする日々。四月になり、一度東京に戻ったけれど、兄からは如月親子に関する新しい情報は得られなかった。如月親子がどこにいるかも分かっていない。


 あれから、葉月になぜオフィスに連れて行かれたのか考えた。誰にも見られない場所で私を殺したかったのだろうが、壁を利用して帝国へ逃げることを恐れて、壁が遠いオフィスを殺す場所にした可能性もある。色々思い出すと、本当にギリギリのところで私は助かったのだと、ぞっとする。


 葉月の件は、今のところ何も解決していないけれど、そちらは引き続き兄に任せている。まずは葉月を探し出せなければ、どうにもならないのだから。


 リンケルト家には、時々ユリウスが私に会いに帰ってきてくれた。その時、驚く話を聞いた。流雨に降嫁を拒否された第一皇女は、今度はハイゼン家の跡取りであるユリウスに降嫁を提案してきたらしい。


「や、やだぁ! ユリウスを第一皇女だけには、あげたくない!」


 姉が弟の結婚相手を嫌がるのはいけないことだと分かっているけれど、それでも第一皇女だけは嫌だった。


「結婚しませんよ。速攻で断りました。姉様が苦手にしているのは知っていますし、それに第一皇女は僕の好みでもないですし。父も、結婚相手は僕が決めていいと言ってくれています」

「そうなの? よかったぁ」


 ソファーの右隣に座っていたユリウスに抱き付く。私の可愛いユリウスが、第一皇女の餌食にならずに済んでほっとする。


「ところで、ユリウスの好みって、どんな女性? ユリウスはモテるけれど、特定の好きな女性の話は聞いたことがないかも」

「そうですね、姉様みたいな人が好きです」

「え!? ユリウスったら、いい子!」


 姉に似た人が好きだなんて、嬉しいことを言ってくれる。ますますユリウスに抱き付くが、私の左隣に座っていた流雨が、私をユリウスから引き離し、私のお腹を流雨の両腕で固定した。これではユリウスには抱き付けないではないか。片眉を上げたユリウスは、ため息付きつつ、私の両手を握って口を開いた。


「姉様みたいな、愛情表現が豊かな人がいいですね。それに泣いたり笑ったり嘘が下手だったり忙しくて、なんにでも一生懸命なので、見ていて応援したくなります。そういう人と僕も結婚できたらいいなと思います」

「そっかぁ。私もユリウスが好きだと思える人と結婚してくれると嬉しい」


 ハイゼン家の後継者となったユリウスは、今後仕事が忙しくなるだろう。そんな時、家に帰ったときだけでも、ほっとできる温かい存在がいてくれると嬉しい。



 四月の末、皇帝の戴冠式が行われた。そして、宮殿で祝いのパーティーが行われた。私と流雨もパーティーに参加している。


 最近、私と流雨の婚約に慣れてきたのか、周りが遠巻きにすることはなくなってきた。昔と比べて、ルーウェンが暴れたりしなくなったという認識もあるようで、最近では流雨は仕事関係の話を振られることもある。


 まだ皇帝の婚約者は決まっていないようで、皇帝の周りには女性がたくさん集まっていた。その中には、ハイゼン家のユリアもいるようだ。


 ハイゼン家のテオバルトが家を出ることになった話は、社交界では周知の事実だった。ハイゼン侯爵が噂を止める行為を行わなかったのだろう。テオバルトはメイル学園に顔を出さなくなり、現在どうやって過ごしているのかは知らない。しかしそのことを姉のユリアが気にしている素振りはない。ユリアは皇帝の婚約者になるべく、忙しいのだろう。


 今日は皇帝ヴェルナーは集まる女性たちと積極的にダンスを踊っていた。頬を上気させた令嬢たちが、皇帝と踊る順番待ちをしている。


 私と流雨も、ダンスを楽しんだ。流雨は今ではダンスもプロ並みである。途中、私はユリウスからダンスを申し込まれたため、流雨と離れ、ユリウスとダンスを楽しむ。


「小さいころ、よく一緒に家で練習したのを思い出すねぇ」

「そうですね」


 私は社交が苦手なので、パーティーには顔を出していなかったけれど、私の代わりにユリウスがパーティーなどには参加してくれていたため、ユリウスのダンスも慣れたものである。ユリウスとダンスをしたそうな令嬢がこちらを見ている。そろそろ令嬢たちにユリウスのダンスの相手を代わって上げなければ、と曲の終わりにユリウスとホールの端に移動した。


 ユリウスに声を掛けた令嬢を横で見ながら、私は流雨を探そうと振り向いたとき、そこに皇帝ヴェルナーがいた。

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