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1 奈落へ

――落ちる、落ちる。地獄のような底へ――。


「――っ、サーヤ!」


 私の異変に気付いたルドルフがとっさに手を伸ばす。

 しかし、その手は空を切り、私には届かない。


 臨月でただでさえ重い体、体をねじるなどして自分で受け身を取ろうなど、私にはもうできない。


 それでも階段から落ちる私を、必死にルドルフは追いかける。


 落ちる私の視界には、この国の皇帝ルドルフ、そして私のすぐ後ろにいた第一皇妃レベッカ、レベッカの後ろにいた第二皇妃ユリアが次々と映っては流れていく。

 私を後ろから引っ張ったのは、レベッカで間違いないだろう。私が落ちていくのを狂ったように高笑いしながら見ていた。ユリアはいつも通り、その場をただ観察するだけの無の表情である。


 今日は建国記念式典の日だった。一年に一度執り行われるそれは、建国九百年を祝う節目の年で、盛大に祝われるため第三皇妃の私が出席しないということは難しかった。本来なら数日間パーティーや祭りも行われるが、私は特に重要な式典のみ出席しようと、会場に向かっていた。


 式典会場へ続く長い階段をルドルフに支えてもらいながら上り、階段の上に到達したばかりだった。

 私がいけなかったのだ、重い体で階段を上ったことに息が乱れ、息を整えようとルドルフから手を放してしまった。胸に手をあて、ふうっと息を付いた時、急に後ろへ強い力で体を引っ張られた。


 あっという間だった。

 足は地を離れ、階段の空中へ体が飛び出した。

 それからは思ったより長い時間が過ぎたような気がしていたけれど、きっと一瞬の短い間だったのだろう。


 ――ガッ


 落ちた先で階段に頭を思いっきりぶつけた私は、もう二度と目が覚めることはなかった。

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