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12月22日(5)

ジャァアアアーーー………

浴槽からシャワーの流れる音が聞こえる。


「………あれだ、生殺しだろコレ」


双葉が身体の匂いが気になると……そんな理由で風呂を要求してきやがった。


「クソッ……」


一つ屋根の下で一緒にいるっつーだけで俺のリピドーがズンズン上昇していくっつーのに何だ、そのテンプレ展開。これはあれか?シャワーの音で想像して、オ●ニーしろってか?三十路前の健全なる男舐めんなよっ!俺のアレはまだ枯れてねぇぞオラァ!!!健在だぞっ!どらぁ!!!


「くっ………思春期真っ盛りの中坊か俺は」


俺は煩悩をかなぐり捨てるため、髪を掻き毟った。くっ、消えろっ消えろっ消えろっ!俺の脳内ビジョン消えろっ!あいつの胸は貧乳だっ!まな板だっ!つるっつるだっ!ペチャパイだっ!汚れていないっ!何も生えてない!だから俺は興奮しねぇ!


「ぐぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!無理じゃあ!興奮するわっ!つーか、詳細に想像したせいで余計興奮したわっ!」


うぉおおお!馬鹿なっ!?俺が……俺が幼女相手に興奮するなんてっ!まさか……まさか、俺はロリコンに目覚めたというのかっ!?嘘だろっ!?マザコンロリコンは男が背負っちゃいけねぇ十字架なのにっ!


「何でだ………おいちゃんの息子ボッキッキしてるよ………」


信じられない事に俺のGパンの股間部は膨れ上がっていた………嘘だろ?


「くっ……俺って奴は………くぅ」


惨め過ぎて涙が溢れてきた。くぅ……三十路間近でこんな、こんな中学生みたいな経験を味わうなんて……あれだ、こんな性的な意味で惨めな気持ちを抱くのは俺が高3の頃、小4の妹と風呂に入った以来だ。


「あれ………?ということは………俺、ロリコンな上にシスコン………?ぐぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!ダブルでショックだぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


いやいやいやいやいや!!!!!ダメだっ、ダメダヨ!メリー!このままじゃ俺………その場の勢いで賢者モードに突入しちゃうぞ!?だぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


「いっちに!いっちに!いっちに!静まれ!俺のリピドー!」


俺はリピドーを抑えるためにさらにその場でスクワットをし始めた。ふんっ、ふんっ!無念夢精!あっ、やっべっ!ふんっ!ミスった!ふんっ!無想だよっ!ふんっ!一文字違いで逆ベクトルの方向にイッチャウよっ!ふんっふんっ!






『子作りしまっしょ♪子作りしまっしょ♪(※冒頭部リピート)』


そして、俺がスクワットでリピドーを抑えていると俺の携帯の着信音が流れた。すっげぇタイミングでアニソンの着うたが流れたが……決して俺がそういうことを願望しているわけではないのであしからず。……本当だよ?


「………はぁはぁ、あ?」


俺は携帯を開き、ディスプレイに映し出された名前を見る。そこに映し出されていた名前は……


溝淵栞みぞぶちしおり


妹の名前だった。


「うっわ、マジかよ………」


ちょっ……どうしよう………無視すっかな………うーん。


「削除っ、と」


俺は考えるまでもなく電話を切った。うーん、思い切りが良すぎだね俺。


『目が、目がぁぁー!!』

「うおっ!?」ビクッ


電話を切ると今度はすぐさま俺の携帯のメールの着信音であるム●カの着ブォイスが鳴った。な、何だ……?電話の後に鬼のような恐ろしい速さでメールが来たが………


「……まさか」


そして俺は震える手でゆっくりと携帯を再び開き、受信メールを確認した。


『09/12/22 23:00 妹 件名:(´∀`)』

「……あれ?本文何も書いてねぇ」


俺は何も書いていない本文を不思議に思い、そのままずっとスクロールしていく……うーん、件名の顔文字からして実はそんなに怒ってないのかな?うん、きっとそうだ。そうに違いない。俺は自分にそう言い聞かせ、ひたすらスクロールしていく。……つか、なげぇよコレ!そして、さらにスクロールしていくと………現れた文字は。


『コロス』

「orz」

『子作りしまっしょ♪子作りしまっしょ♪』

「ひっ!」ビクッ


ちょっ……俺は恐怖感から恐る恐る電話を取った……


「………もしもし」

『…………………………』

「…………………………」

『…………………………』

「…………………………」


……コワッ!(汗)こぇえよっ!無言の間!何か喋れよっ!何だよ!この電話越しからヒシヒシと伝わる緊張感!俺、精神的にくるよコレ!俺はプレッシャーに弱いデリケートな心を持つ男なんだよっ!


「………あの、栞さんや?(汗)」


俺は無言の間に耐え切れなくなり、自分から口を開いた。


『………お兄ちゃん、女の人の匂いがする………』


最初の台詞がそれかよっ!


「ねぇよっ!しねぇよっそんなん!だいたい電話越しで何で匂いまで分かるんだよっ!お前はアレか!?匂いの電波を送受信でもしてんのかっ!?」

『うぅー……わかるもんっ、絶対お兄ちゃん私の知らない女の人としっぽりがっぽりしちゃってるっ!』

「もんって……大学生にもなってお前……(汗)ていうか、年頃の女がしっぽりとかがっぽりとか言うなよっ!とにかく俺にそんな美人な恋人がいると思うかっ!?あぁ!?」

『うん、いないよね。ヨカッター』

「ちょっ、おまっ………そこですぐさま納得されると傷つくんですけど俺のピュアなハート」

『い る の ?』


明るい声とは打って変って、妹の声はドス重い声に変化した。


「イマセンデス」


そう言うしか無かった。だってだって!怖いもん!怖いもんもん!


『そっかー……お兄ちゃん、童貞なんだねー、うププ……』


お前も処女だろこの腐れポンチがァーーーーー!!!!!……とは言えないのです、ハイ。


「………で?何の用だ?」

『うん、そのね。私、明後日のイブの日にそっちに行くから』

「あぁ……そうか、俺の家に……へぇ~って、何でっ!?」

『な、何よぉ……妹が兄に会いに行くのいけないって言うの?』


無 理 だ っ !大問題だっ!特に今の状況ではなっ!双葉を置いておく限り、妹と鉢合わせになる!ダメだ!まさに地獄絵図……やべぇ、俺生きてないかも。でも、そんな事は栞には言えなくて。


「あ、あのさ……悪いけど俺、その日予定入れちゃっててさ………大学の頃の仲間と飲みに行くんだ。だから、無理……」

『嘘。貴志さんと暁さん、奥さんいるでしょ?美希さんも御主人いるし……人生のパートナーがいないのお兄ちゃんだけ。なのに、イブの夜に男同士飲みに行くとかないでしょ?』

「うっ……」


こ、コイツ……覚えてやがるっ!なんちゅー記憶力だっ!クソォ……教えるんじゃなかった(泣)し、しかしだなっ……俺は諦めないぞっ!


「あ、あれだよ………あいつら全員破局しちゃってさ。貴志は八股が彼女にばれて別れて、暁は『フ●ラが気持ちいくない』とか言う理由で別れて、美希の奴はほら?魔女のような性格してんじゃん?だから、すぐ別れたんだよ、アハハ(汗)」

『嘘ばっかりっ!お兄ちゃん!もしかして、私に何か隠しごとしてるのっ!?』

「うっ、ち、違うっ!そんな訳無いじゃないかっ!アハハ……ハハ」

『その枯れたような笑いは何?』


ま、まずい……明らかに栞の奴は俺を疑っているっ……!お、落ちケツ俺っ!ばれなきゃいいのだ……双葉の事も。何とかうまいことして、こちらへ栞を来させないような方法はないかっ……!?考えろ、考えろ、考えるんだぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


『お兄ちゃん………何としても私をそっちに来させないように画策しているみたいだけど………』

「うっ!」

『無駄だと思うよ?だって、私それだけの理由でそっちに行くんじゃないもん。お兄ちゃん、実家からの入金止められてたでしょ?』

「………そ、それがどうしたんだよ」


そ、そうだ……栞は実家から大学に通っている。だとすれば、入金が止められている理由を知っているかもしれない。何でもっと早くそのことに気付かなかったんだクソッ!俺のバカチン!


『何でだと思う?』

「な、何でって……親父やお袋が俺に対して諦めの境地を悟って、勘当されたからだろ?」

『はぁ……やっぱり、そんなことだろうと思った。お兄ちゃん、全然分かってないね』

「分かってないって……何がだよ」

『その逆、お父さんとお母さんは心配しているんだよ?お兄ちゃん知ってるでしょ?お父さんとお母さんは過保護だって』

「……まぁ、そうだな」


確かに、俺に入金している時点で結構な過保護だとは思う。俺もそれに甘えちゃいけねぇって思ってはいるんだけどこの不況の世の中でまともな仕事につけなくてバイトの仕事で何とかやりくりしても生活していくためのお金は足りない。だから入金が途絶えた今、こうして金が底についたのだが。


『だから私お父さんとお母さんに頼まれたの。お兄ちゃんを実家に連れ戻してって』

「はぁ……な、何だよそれっ!?」


だったら何か!?入金が途絶えた理由って、親父とお袋が故意に俺を実家に戻そうとしたからかっ!?俺が偉そうに言える立場じゃないけどふざけんなっ!


『お兄ちゃん……私の苦労も分かってよ。お母さん意気消沈して、虚ろな目で『司……司……』とかブツブツ呟きながら台所でまな板の上に何も材料が置いてない状態で包丁持ってひたすらダンダン叩いている時あるんだよ?』

「えっ、何それ怖い」

『お父さんも意気消沈して、毎日『つかさくんとまさるくんのらぶらぶちゅっ♪ちゅっ♪ものがたり』とかいうタイトルの官能小説書いているんだよ?』

「ちょっ、キモッ」


ちなみに『まさる』とは俺の親父の名前だ。


『あとね?翼お兄ちゃんなんか私が寝ているときに、布団の中で私の耳元で『はぁ…!はぁ…!司君っ!司君っ!司くぅーーーん!』とか言いながらオ●ニーし出すんだよ?もぅ、ホント迷惑してるんだからっ!!!』

「もうそれただのセクハラ親父じゃねぇかっ、お前もそんな馬鹿兄貴訴えろよっ!そんな変質者共が集う家なんかますます帰りたくねぇわっ!」


ちなみに『翼』は俺の一つ年上の兄貴だ。あ、あのクソ兄貴っ……!俺をオカズにして夜な夜なオ●ニー何かしてやがったのか……!?ちょっ、ホントきもいんですけどっ!?キモイという一言では片付けられねぇなっ!キチ●イだっ!ミラクル☆キチ●イっ!何か魔法少女のアニメっぽいタイトルになったがなっ!


『むぅーーー………!お兄ちゃん帰ってきてよっ!家族でまともなの私とお兄ちゃんしかいないんだからぁ!私に何かあってからじゃ遅いんだよっ!?』

「な、何だよそれ……どういう意味だよ?」

『うぅーーー………とにかくっ、お兄ちゃんが帰って来ないなら私がそっちに行くっ!』

「えっ……ちょっ、おまっ、最初言ってた事と微妙に違うくね!?」


ガラッ……

その時、浴槽の扉が開く音がした。

ダダダダダダダダダダ………

そして、何かが走る音……えっ?ちょっ、まさか……






「司さんっ!大変なことに気付きましたっ!私、着る服がありませんっ!」


身体にタオルを纏った双葉が大きな声でそう言いながら俺の目の前に現れた。






「ちょっ、おまっ!何でそんな格好で上がってきてんのっ!?」


タオルを纏っているとは言え、その下は……いかんっいかんっ!妄想するなっ!俺っ!妄想するなら金をくれっ!


「ですから私が元々着ていたトナカイの服以外に着る服が無いんですよぉ……その服も今は雪でべちょべちょですし……うぅ、どうしましょう……」


双葉はウルウルした子犬のような瞳で俺を見つめてくる……や、ヤメローそんな顔で俺を見つめるんじゃありませんっ!俺のテントがやばいことになりますよっ!?


『……お兄ちゃん?今の声……女の人、だよね……?』


うっ、や、やばいっ!今の声、電話越しで聞こえてたっ!


「ち、違う……今の声は……そうっ、オカマだよオカマっ、オカマの声だよ!(汗)」

『……お兄ちゃんって、そういう性的嗜好持ってたんだ』


ぐぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!そ、それは無いっ!だが、それを否定すれば女が近くにいるということを答えているようなものだっ!ひ、否定したいけど否定できねぇー!


『……嘘だよね?』

「ち、ちがうっ!違うぞ栞っ!俺は……俺はだなぁ……!筋肉隆々なオカマが大好きなんだっ……!筋肉フェチってやつだっ!あぁ!ギャランドゥも好きだぞっ!あのもっさもさした毛がいいよなっ!アレを愛撫してやるとあいつら『はふっ、あふぅ……(///)』とか言いながら感じやがるんだっ!フォー!筋肉サイコー!ギャランドゥサイコー!(泣)」

『お兄ちゃんキモイ……』


ぐっ、ぐぐぐぐっ、ぐっ……!絶えろっ……!絶えるんだジロー……!ここを乗り切れば、ここさえ乗り切れば……!


「司さんっ、早く私に服を下さいっ!このままじゃ風邪引いちゃいますっ!タオル一枚なんてすっぽんぽんと同じですっ!」


だぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!てめぇは黙ってろっ!!!あと無駄に動き回るなっ!そのタオル落ちたらシャレにならんぞっ!?ちょっちポロリでサービス♪じゃ済まないぞっ!?


『今の高い声……どう考えても女の人しか考えられないんだけど………』

「や、奴は本格派なんだっ!声帯まで変えているんだっ!正真正銘のオカマ何だよっ!」

「うぅ……司さん、さっきから私の方を向きながらオカマオカマって連呼してますけど……私はオカマじゃないですよぉ~~~正真正銘のハタチの女ですよぉ~~~!!!!!」

『……言ってるけど』

「違うッ……!奴はなっ!自分が男なのに女だと思い込んでソレを糧に自分が男であると見出しているロマンチックでトロピカルな奴なんだよ……!」

『もうお兄ちゃんが何を言っているのか意味不明だよ……とにかく、明後日のイブの日にそっち行くからね』

「だめだっ、だめっ、だめっ、だめなのですぅーーーーー!!!!!」

『行 く か ら ね ?』

「……ハイ」


ツーツー………妹からの電話が切れた。そして……どうしよう。絶望にも似た俺の心はまさにロンリーな気持ちでいっぱいだった。


「司さんっ、服貸してくださいっ!」

「……タンスに入れてある俺のYシャツ着ろ」

「下着はどうすればいいんですか……?そのっ、司さんのボクサーパンツ……を、うぅ(///)」

「ちょっ、おまっ!?何勝手に人の下着出してんのっ!?やーめーてーよー!そういうのっ!絵的にやばいからっ!下着まで面倒見切れるかっ!とにかくっ、俺の下着は着るなよっ!?いいなっ!?」

「うぅ……鬼畜です」

「……なんとでも言え。それかお前が元々身に着けてた下着着ればいいだろ……?じゃ、俺風呂入ってくるわ」

「あっ……その、あの……司さん、湯船の湯……全部流しましたから………またお湯張ってくださいね?」

「……あ?何で」

「うぅ、その……司さんが……私の浸かった後の残り湯………の、飲むかと思って(///)」

「誰がんなもん飲むかっ!!!」

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