12月25日(4)
「「ロンッ!」」タンッ
「ぐぉおおおーーーーー!!!!!だ、ダブロンだとぉ!?俺のイーピンちんが放銃!?馬鹿にゃっ!?」
「悪いねぇロリコン、あたしの大四喜であんたはダブル役満振込みだ」
「てんちょーすみません~私も四暗刻単騎のイーピン待ちでダブル役満振込みです~」
「ぬぁあああ!ちょっ、嘘だろぉおおおお!?ダブロンでクアドラプル(※4重)役満振込み!?」
「あ……すいません、あの私もロンです……大三元」
「優梨子ちゃんも!?えっ、ちょっ、おまっ、嘘だろ!?ぎぇえええしかも役満んんんんーーーーー!?」
「ギャハハハ!トリロンでクインティプル(※5重)役満振込みって……ひぃいい、は、腹痛ぇ~!ど、どんな不幸男だよ!あ、アタシを笑い殺す気かいっ、ロリコン!」
「う、うるせっー!ありえねー!ありえねぇよこんなん!お、お前ら絶対イカサマしたろっ!?右助さんはこんなあからさまな不正は絶対認めんし屈しないぞぉおおおおーーーーーー!!!!!!」
「おら!黙れハゲ!」ヒュッ
「ぐぁ!」バキッ
……一夜明けて朝。
俺は気だるい身体を起こして立ち上がり、レジの方へ行くと麻雀に興じるロリコン店長と魔血子、それに苺ちゃんと優梨子ちゃんまでいた。朝っぱらから元気な連中だな……昨晩はあんだけハッスルしたのに。
「ぐぐぐっ、ぐっ……」
「クククッ……さぁ、これでアンタの点棒は余裕でとんだね。さて、罰ゲームだ。この中からどれか好きなのを選びな。①あたしの逆ヒモになる②あたしの犬になる③死ぬ、さぁ選べ」
何か悪魔な究極の選択肢出たっ!?やっぱり魔女だこのババァ!
「じゃあ、②で」
「……おい」
「司、お前の言いたいことはよく分かる……ワン。だが、何も言うな……キャゥウン……」
自らの首に首輪をはめ、寂しげな子犬のような瞳で俺を見つめる店長……語尾の鳴き声にどこか哀愁が漂う……
「何ごちゃごちゃ言ってんだいっ、お座りっ」ピシッ
「ギャブゥウウン!(///)」ゴロゴロ
魔血子は鞭で店長犬の尻を打つ。いきなり鞭で打たれた店長は痛みの衝動のせいか、店の床でのたうちまわっている……
「暴れるんじゃないよっ、犬ッ、犬ッ、犬ッ」ピシッパシッ
「キャゥン!キャフゥウウン!ハッ、ハッ!ハフッ!ウッ、ハッ、ハフゥン……(///)」ビクンビクンッ
暴れる店長犬に魔血子は容赦なく鞭を振り下ろす。最初は悲鳴を上げていた店長犬だったが、その悲鳴は段々と卑猥な声に変化していく……何これ気持ち悪い。
「あはははーーー激写激写激写激写♪」カシャカシャカシャカシャ
苺ちゃんはその光景をデジカメで連写する……すっげぇ、楽しそうだ。うん、どうやらここにはまともなオツムを持っているヒューマンはいないようだ。
「……優梨子ちゃん」
「………はわわ」
「優梨子ちゃん?」
「……はっ!べべべべべべ別に、司さんが犬仕様の店長さんの穴という穴をクンクン嗅いだりペロペロ舐めたりズッコンバッコンしたり二人で気持ちよく喘いだりしてるとか……!そ、そんな妄想は決してしてないです!ハイ!(///)」
優梨子ちゃんは頬を真っ赤に染め、そんなことをまくし立てるように言う。もうやだ、何なのこの人達。毒電波にでも侵されてるんじゃないのこの人達?僕もうおうち帰ってもいいー?俺はそんな異様な空間に嫌気が差し、新鮮な空気を吸おうと表に出ようとしたが……
「待ちなっ、オタニート!!!」ピシッ
「キャウゥウウン!!!(///)」ビクンッ
耳が劈くような魔血子の大声が俺の歩みを止めた。
「……だから俺はオタニートじゃねぇって何度も……」
「いいかい、……って悦んでんじゃあないよっ、駄犬ッ!」ピシっパシッ
「キャッフスゥッルーーーーー!(///)」ビクンッビクンッ
「とりあえず、その鞭止めてやれよ……」
「アッ、はぁはぁ……いいんだ、司……俺が、悪かったんだ……あそこでイーピンが危険牌だと知りつつ、俺は打ったんだからな……自業自得さ。くぅ!あそこでイーピンがオッパイに見えたから……!でも後悔はしていない。それに、鞭も割と気持ちい…(///)」
「犬が人語を喋るんじゃあないよっ」ピシッ
「キャフゥウフフン!(///)」ビィクンッ
魔血子は再び、犬店長に鞭を振り下ろす。もうこの人達には何を言っても無駄かな。
「……オイ、魔血子。話ねぇんなら行くぞ?」
「行くんじゃないよッ、ほれ、これっ!」ピシッ
「ウォウッ!キャッフルゥーーーーーー!(///)」ビクンッ
魔血子は俺に1枚のメモ用紙と5千円札を渡した。どうでもいいが、渡しながらプレイに興じるとは何とも器用なオッサンとオバハンだ。ホントどうでもいいことだが。
「……あ?何これ」
「アンタ今日の晩、この街を発つつもりだろ?最後のお別れ鍋パーティーでも開いてやっから、そこのメモに書いてある食材買ってきな」
「……何で知ってんの」
「アンタの顔を見てりゃあ分かるよ。そりゃアタシがした事がキッカケかもしれないけどさ、この先のアンタがどうなるか心配なんだよ……実家に帰ったら親父さんとお袋さんにちゃんと顔見せてちゃんとした仕事見つけなオタニート」
「………オタニートは余計だ」
余計なお世話だ、とは言えなかった。
目を見れば分かる、魔血子は本気で俺の心配をしてくれている……正直、年下の女にごもっともな事を言われるのは男としてのプライドがアォ!な感じだが俺がそれに対して文句を言える立場でもないし、するつもりなど毛頭無い。そうだ、俺は今日の晩この街を出て実家に帰るつもりだ。単に金が無いから、という理由ではない。その理由は今、魔血子が代弁してくれた通りだ。正直自分でもこれからやっていける自信はあまり無い。だが、魔血子の台詞で何か重い気持ちが少し軽くなったような気がする……今まで、住居者としての俺と大家としての魔血子の関係はすこぶる悪かったが、本当の意味で魔血子を嫌いになったことは1度も無い。むしろ、裏表無く、ズバッと自分の気持ちを伝える魔血子に対して俺は……
「なっ、何、ニヤニヤしてんだいっ!買い物にとっとこ行け太郎っ!」ピシッパシッピシッパシッ
「ぎぁー!いてぇ!わっ、わーったからその鞭はやめてぇ!にゃめてェエエエ!」
嫌いだっ!やっぱ嫌いだこのクソババァ!チッキショウ!今、ちょっと良い事思った俺が馬鹿だった!年増だしっ!ヤニくせぇしっ!すぐ暴力に走るしっ!おっぱいでっけぇし!くびれがちょっと美しいとか思ってみたり!ボンッキュボンッだしっ!あっ、でもでも、ちょっと優しいところがあったり無かったり!べ、別に……あ、あんたなんか………あんたなんかっ!あんたなんか大ッ嫌いなんだからぁーーーーーーーーーー!そんな恋する乙女ちっくなことを思いつつ、俺はケーキ屋から外に出て行った。
「………」ニヤニヤ
「……何、ほくそ笑んでんだいっ馬鹿犬ッ!アンタの罰ゲームはまだまだこれからだよっ!生ケツ出しなっ!絶頂フルコースはまだまだこれからだよっ!」ピシッ
「はぁう!(///)」ビクッ
「あははは、魔血子さん照れ隠ししてるー」
「ふふ、もう……お姉ちゃん、素直じゃないんだから……」
ケーキ屋から外に出ると雪が降り積もり、街の殆どは白一色に染まっていた。降り積もる、とは言っても昨夜がピークだったようで今はそんなに雪は降っていない。……だが、そこそこ積もっているので歩いていると足はズボッウボボボボッと雪に沈んでいき正直歩きづらい。息を吐くと思いっきり白いのが出ること出ること……外温が相当低い事を如実に表している……ふふっ、だが……今の俺はママ特製あったかポッカポカ手編みセーターを装備しているから無敵なんだぜッ!……ごめん、キモイとかマザコンとか思わないでちょーだい。本当にあったかポッカポカなんだからこれ……
「うーっ!がるるるるるる……がるっー!」
「ふっー!ふっー…キシャァアアアーー!」
ケーキ屋の近くを繁華街に向かって歩いているとかぁいらしい獣の声が聞こえてきた。その声の方に向くと双葉と栞が睨みあって珍獣ゴッコしていた……こんな寒い中二人して何やってんだあいつら……
「……お前ら何やってんの?」
「あっ、司さん!うぅ、聞いて下さい!司さん!」ギュ~
「お兄ちゃん!?ちょうどよかった!聞いてよ!お兄ちゃん!」ギュー
「だぁあああ!?こらぁ!二人して俺のセーターを掴むなぁ!伸びる!本当にのび太君になっちゃうからぁ!やめてぇ!やっちょっだめっ!本当にらめぇ!これ、ママンが汗水たらして一生懸命編んでくれたお気に入りのバナナ柄がセンス的に終わってるセーターなんだからぁーーーーーー!」
「うぅ~~~!良いから聞いて下さいよぅ!私の話を聞いてくれない司さんなんてただのマザロリオタコンですぅ!」ギリギリギリ……
「お兄ちゃん!私とお母さんのセーターのどっちが大事なの!セーター!?うー!お兄ちゃんなんて死んじゃぇ!それから私も死んでお兄ちゃんを永遠に私のモノにするぅー!!!」ギリギリギリ……
「ぎゃふぁああああ!ちょっ……ぐっ、シャレに……ぐぐぐぐっ……」ギリギリギリ……
双葉と栞は二人がかりで俺の首を締めてくる………うっ、ぁ……意識が……遠のいて………
「………っ、ぁ」ギリギリ……
「……お兄ちゃん?」ギリギリ……
「……司さん?」ギリギリ……
「………」ガクッ、バタン
「「あ……」」
マザコンEND 『ママンの手編みセーターを掴んで……』
ヒント:君は選ぶものを間違えてしまった………ママン好きスキーなのか、妹好きスキーなのか……選択肢に戻ってもう一度やり直そう。でも現実はセーブできないのですー……んなわけあるかいっ!というわけで次回に続く。