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12月24日(5)

クリスマスイブの昼過ぎ。

俺は繁華街のデパートに双葉と栞を残し、ケーキ屋のバイトに勤しんでいた。街中は多くのバカップルで賑わっていた。おそらく聖夜のお勉強に向けてテンションアゲアゲなのだろう。かぁ~、やだねやだねやだねぇ!ったく、最近の若者はどうしてこう頭の中は桃色白書でピッーでアッーでウッーな感じなんだろうねぇ!あー、やだやだ!気持ち悪いっ!……なっ、なんだその目はぁ!べ、別に羨ましいから愚痴ってるわけじゃないんだからねっ!?


「司せんぱ~い?さっきから何、ブツブツ独り言言ってるんですか~?」


俺の隣のレジにいるサンタのコスプレ姿の苺ちゃんが不思議そうな顔で俺に尋ねてきた。うぬぅ!聞かれていたか!おいちゃん、チョーはずかちー!


「……ロンリーでボンビーな大人の愚痴さ、軽くスルーしてやって」

「あぁ~、なるほど。ロンリーでボンビーで童貞な三十路手前の大の男の非処女や非童貞に向けた魂の雄叫びって奴ですね~かっくいぃ!今の司先輩の気持ちは童貞最高にハイって奴だぁアアアアアアーーーーーー!ってな感じですよね!」

「……うん、何かごめん。あんまそれ引っ張らないでくれるかな?おいちゃん、何か色々空しくなってくるからさ……」

「うんうん、司ぁ、俺にも分かるぞその気持ち」


ふと野太い声が背後から聞こえたので振り向くと、タバコを咥えた店長が腕を組んで云々と頷いていた。


「俺もまた何人かのエセ幼女にアタックチャンスしたが見事に撃沈したよ、こりゃまた今年もゲイのセフレで我慢するしかなくなったヨン様」

「真昼間から聞きたくもない私事を暴露するなよ、反吐が出るわ」

「おかげで俺のア●ルせっくるのスキルは年々上昇の傾向にある……こんなみじめな俺を慰めてくれ苺ちゃん?」

「お断りします♪」

「はっは~、いっけねー、やっぱ美処女たんには初っ端からア●ル攻めはきっついかぁ~」

「アンタそれふっつうにセクハラだからな、少しは自重しろロリコン」

「うるせぇ、むっさくるしい男は黙ってろ。掘るぞゴルァ」


店長はマジでぱんぱんやっちゃうぞみたいな感じの鋭い目つきで俺を睨んできた。俺は店長とアッーな関係には陥りたくないので黙る事にした。


「あれぇ?てんちょ~、不倫が奥さんにばれて喧嘩でもみ合っている内に奥さんの鋭い爪で思いっきり引っ掻かれたようなその無数の傷跡どうしたんですか~?」


店長の顔には俺が朝会った時には無かった引っ掻き傷ができていた。


「今度は何をしでかしたんすか店長?大体想像つきますけど」

「いや何、10人目のエセ幼女の生足に背後から自然に触れようとした時にな、できた傷なんだよ」

「思いっきり不自然極まりない動作だろうが、どうしてそんな展開に至ったんだよ」

「いや、『肩にゴミついてますよ』みたいなニュアンスで生足に応用させてみた、みたいな?」

「よくポリさんに捕まらなかったな、あとそれは無理があるから、思いっきり不審人物だから」

「いいだろ、別に。すべすべな生足触ったり、ペロりんちょしたかったんだからよぉ、フゥー……」

「欲望に忠実なオッサンだな、テメーの脳内広辞苑には自重つー単語は存在しないのか?考えるなとは言わんがせめて年頃の女の子がいる前では隠せよ」

「苺ちゃんはんなことで俺を嫌わねぇよ、むしろ自分からくぱぁーとかやって受け入れてくれるさ。なぁ?苺ちゃん?」

「ハイ♪店長は大好きですよん♪受け入れないですけどね♪」

「おふっ、フラグたった!フラグたった!ク●ラがたった!俺のぼっちゃまもたった!」

「氏ねよ。って、思いっきり話逸れたじゃねぇか。で?その傷どうしたんだよ」

「あぁ、でな?エセ幼女の生足に触れようとした時、エセ幼女の足元にいた三毛ニャンコが俺に気付き、思いっきり俺の顔面をキシャァアアーとか叫びながら引っ掻きやがったんだ」

「飼い主を鬼畜の手から守ったんだな、賢い猫だ」

「ですね~」

「おいおいお前ら話はこれで終わりじゃねぇぞ、でな?俺、思いっきり猫に引っ掻かれている最中にな……ボッキボッキしたんだ」

「苺ちゃん、耳塞いでて」

「?」

「でな、あまりの痛さで俺のぼっちゃまは濡れ濡れになっちゃってよぉー、まぁ色々考えている内にもうニャンコでもいけるかな?いいかな?って思えてきたんだよ……だからな、その三毛ニャンコの飼い主のエセ幼女に『この三毛ニャンコとせっくるしたいです……』って某監督の名言っぽい感じでお願いしたらすぐさま飛んで逃げちまったよ。でも、その時に慌てたせいかエセ幼女の靴が脱げちまって現場に残ったんで戦利品として持ってきた。もう俺が色々使っちまったけどダチ公のテメーにやるよ司。それでぼっちゃまを擦りながら聖夜の一時を楽しむんだな」

「言いたいことは山ほどあるがとりあえず仕事しやがれロリコン野郎!!!」






クリスマスイブの昼間から夕方は特にケーキ屋が忙しい時間帯だ。ケーキを買いに来る客だけでなく、事前にケーキを予約している客にも対応しなければならない。今日のシフトが俺と苺ちゃんの二人だけなので、レジ前は必然的に混雑する。店長は奥の厨房で追加のケーキ作ってるし、俺と苺ちゃんはレジで忙しいし……まさにこの日のケーキ屋はてんてこまいだな。


「ありがとうございましたぁ!いらっしゃいませぇ、次のお客様こちらのレジにどうぞー!」ざわ…ざわ…

「ありがとうございました♪ふー……司先輩、今日は本当に忙しいですねー」ざわ…ざわ…

「チーズケーキですね?少々お待ち下さいっ、……まったくだよ。猫の手も借りたいくらいだね、あっ、すみません!すぐ用意しますからぁ!そんなに睨まないでぇ!美人な若奥様!」ざわ…ざわ…

「……あれ?司先輩……あれ……」クイッ、クイ


苺ちゃんが俺の服の袖を引っ張ってきた。


「何っ!?こんなに忙しい時に!?」

「ほら、あれ、あれ見てください」

「え……?」


苺ちゃんが店先の方に指を指したので俺はその方向に顔を向けるとそこにいた人物は……






「いらっしゃいませぇ~!ここのケーキは甘くてとろっとろでおいしぃですよぅ~~~あうぅ、想像したらおなかが空きました……」クー

「い、いらっしゃいませぇ……う、うぅ、どうしてこんな目に……私はただお兄ちゃんの様子を伺いに来ただけなのにぃ……(///)」モジモジ

「おらぁー!てめぇらここのケーキ喰わないとぶっ殺すからねぇ!?ほいっ!そこのモヤシ男!ここに入るんだねぇ!けっけっけっ!ギャハハハハハハーーーーーー!!!!!!」バシッバシッ

「お、おねぇちゃん……そんな押し売りみたいなことしないでよ恥ずかしいから……あ、すみませんモヤシ男さん姉がご迷惑をおかけして……え?買う?い、いいんですか?……あ、ありがとうございますっ、どうぞこちらですっ」ペコリン


どこか抜けたような声で客引きをしている内に腹が減ったのかその場でしゃがみ込んでじ~っと店の中の様子を窺うサンタ仕様の双葉。

無理矢理やらされたのだろうか?顔を真っ赤にして小さな声で客引きをするサンタ仕様のマイシスター栞。

そして凶暴な面をして釘バットで客を脅して無理矢理店に入れようとするサンタ仕様の鬼畜ババァ、魔血子。

姉の暴走を止めようとしながらもちゃっかり客を獲得している(おそらく人柄の問題)サンタ仕様の魔鬼…優梨子ちゃん。

俺はそんな4人のコスプレサンタ娘達がケーキ屋で客引きをしているという信じられない光景を目の当たりにした。

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