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12月24日(3)

妹ちんに見つかっちった俺と双葉はあれから駅前のイタリア料理店にいた。イタリア料理店とは言っても、自分でいうのもアレだが小汚らしい感じがプンプンする俺やちょっちヤバ目のコスプレ幼女が入るのを躊躇いそうな高級感丸出しの店内ではなく、リーマンさんやらOLさんやらがワイワイキャッキャッウフフのフするような爽やかでフルーティな感じの店だった。


「で、兄さん?これはどういうことかしら?」ザクザクッ


俺の向かい合う席で妹さんはそれはもう普段俺の前では見せた事の無いようなステキングないかにも出来すぎた妹と称されるほどのとびっきりの笑顔を兄である俺に向けた。おまけに俺の呼び方が『お兄ちゃん』から『兄さん』にレベルアップ。うん、ところで妹ちん?何でその、さっきからしきりに目の前にあるピッツァをフォークでザクザク刺しているんだい?


「んー!つ、司ひゃん!こ、このスパゲティべらぼうにおいしぃですぅ!」ズルッズルルルゥー


俺の隣で口の周りにとっつぁんもびっくらこんな血痕……じゃなくてミートソースを付着させた双葉ちんが盛大な音を鳴らしながら幸せそうな顔してスパゲティーを食していた。うん、君はそろそろ空気を読んだ方がいいねロリーオブジョイトイ。


「………むしゃむしゃ」


妹様の言いようの無い圧力に当てられた俺はとりあえず妹様に目を合わせぬようサラダを頬張っていた。む……このドレッシングうめぇ。


「兄さん?私の質問に答えて欲しいのですけれど?それとさっきからサラダばっかりまるで親の敵のようにむしゃむしゃむしゃむしゃ……アホですか?ウ●ディですか?お腹が空いているのならこちらのピッツァを召し上がればよろしいのにクズ野郎」ザクッザクッ


妹様は笑顔な顔して思わず鳥肌の立ちそうな言葉遣いで俺にピッツァを食すよう薦める。うん、そのピッツァ君のせいでほとんど解体しているじゃない?何かね、怨念を感じるんだよそのピッツァから。あと、早くも化けの皮が外れてきたのか台詞の節々にちょっとどころか大分素が出ているよ?


「………」


さてさて……ここでの俺の対応は……


①とりあえず、『ごめんなさい』と素で謝る。

②兄らしく強気で攻め……言い包める。

③逃げる。


とりあえず①乙。


「……何かホントすみません」

「あれ?何で謝るのかしら兄さん?ただ私はどういうことか聞いているだけなのに。何かやましい事でもあるのかしら?」


……何だこれ。罠か?フラグ管理ミスった?おっかしぃな……誠意を込めて謝ったのに。というか、妹ちんを攻略対象に入れたらまずいよな。あと何で三十路手前の俺の脳は未だにエロゲー脳なんだ。昔、ときメモやりすぎたからか?


「……やましいことはない」

「なら教えてくれます?その隣にいる幼女は誰ですか腐れウンコチンカス下衆野郎?」


妹様は双葉に笑顔を向け、聞いてくる。おいおい、もうエセ敬語の意味を失くすほどの暴言がポロっと出ちゃったよ。


「むっ!幼女!?」


ロリモドキは妹様の口から出た『幼女』に反応し、スパゲティを食う手を止め、妹様を少し睨む。ハハハ……おいおいロリロリさん、君は何を言うつもりだい?くれぐれも俺の寿命を縮めるような発言は控えておくれよ?


「私は幼女じゃないですぅー!お酒も飲めるしタバコも飲める立派なハタチの女ですぅー!そ、それにっ、胸も……」


そう言って双葉は自分の胸を見て、さらに視線を妹様のお胸に移す。……あ、少し涙目になった。


「………フッ」

「あー!あー!あーーー!いっ、今笑いましたねぇ!?うっ、うぅ!悔しいですぅ!司さん!何とか言ってやってください!」

「おとといきやがれこのデカパイマン●ス野郎っ、キェー!」


バシャー

……何か双葉に乗せられてノリでやってしまい、思いっきり顔におひやをぶっかけられた。あとで双葉はシメておこう。


「まぁ、デカパイでマン●スだなんて。そんな下品でチンカスでクズでアホで最低でエロ助で切腹した方がマシな言葉遣いをしてはいけませんわよ?兄さん?」


妹様は俺に氏ねと仰られる。


「……悪かった。なぁ……そろそろ腹を割って話し合わないか?」

「どうぞご自由に、これをお使い下さい」

「切腹って意味じゃねぇーよっ!ていうか何でカッターナイフ何か持ってんの!?それふっつうに銃刀法にひっかかってんじゃね!?こぇえよっ!何する気!?」

「大丈夫です、兄さん専用ですから。これを存分にオナヌーに使用してください」

「何その俺専用ダッ●ワイ●的なノリ。やめてよ、そんなん俺専用とかないから。オナヌーとかしないから、できないから。危ない人みたいじゃん」

「まぁ……(///)」

「照れるなよっ!?お前そんな清楚なお嬢キャラじゃねぇーだろ!?あぁ、クソッ!早くその気持ち悪ぃ言葉遣いやめろよっ!」






「ふぅ……やめたっ、もう私疲れたし」チュー


俺が敬語をやめるよう言うと、栞は目の前にあるアイスコーヒーをストローで吸う。そして、また少し不機嫌そうな顔して俺をジッと睨む……ぐっ、だが兄ちゃんは負けんぞぅ!屈しないぞぅ!


「じゃあ、改めて聞くけどその子は誰?」

「あ、あぁ、遠い親戚だよ。田舎からやって来て困ってるっていうことで俺の家に居候させてやっているんだ」

「司さん、私田舎者じゃ……むぐあぐ、んーっ」


俺は咄嗟に余計な事を言おうとした双葉の口を手で押さえた。よし、完璧男君だ……とりあえず遠い親戚ってことにしときゃあ、万事無事収まる。え?それで居候?じゃあ仕方ないねーアハハのハーってな感じで!ガハハハハ!グッドだ~……おっと、思わずラ●ス化しちまった。


「嘘、うちの親戚はその子みたいなちっちゃな子はいません」


そう言いながら栞はテーブルに系図らしきものがワープロで書かれた紙を出した。


「ばっ、ちょっ、おまっ……これ全部お前が調べたのかぁ!?」

「そうだよ、お兄ちゃん。私に嘘なんかつけると思ったら大間違いなんだから」


ばっかじゃねっ!?ばっかじゃねっ!?おかしいよぉー!何だこのキ●ガイ娘!?ふっつう前もってそんなん調べるかぁ!?こ、こえぇ……何か怖いよこの娘………俺は身震いした。ラ●ス化して浮かれてる場合じゃないよぅー


「誰この厳瓦宗継ごんがわらむねつぐさんって……こんな征夷大将軍みたいな名前の親戚の人見たことも聞いたこともねぇよ」

「あぁ、その人はお祖母ちゃんの兄妹の一番上の娘さんのご主人の曾お祖父さんの弟さんだよ」

「頭に入ってらっしゃるっ!」


こいつぁ……クレイジーポンチだぜ。や、やばいっ……どうする俺!?ほ、他に言い訳は言いわけ!?うっわー!くだらんギャグ編み出してしまった!ヤヴァイ!どうするっ!?


「で!?お兄ちゃん!?もう一度聞くけどその子は誰なの!?」

「か、隠し子だよっ!親父の隠し子!別の水商売風の女と出来ちゃった♪ってな感じなんだよっ!」


う、ううっ……クソ!我ながら苦すぃー言い訳だが!ますます疑われるかもだが!思いついたら口にしないと俺の命が危ないっ!


「……嘘でしょ?それ本当にお母さんに言っても良いの?」


……お袋が家で包丁を持って奇声を上げながら狂乱し、それを兄貴や親父が必死に止める風景を思い浮かべる……無理だっ!何の罪も無い親父の命が危ないっ!家庭崩壊だ……だめっ!それはだめっ!絶対ダメなのぉー!


「ぐぐぐ、ぐ………」


万策尽きたっ……!もう良い言い訳が思いつかないっ……!俺が諦めの境地を悟っていると双葉が目を合わせてニッコリ笑ってきた……あ?何のつもりだい?ロリっ子ロリちゃん……


「(司さんっ、ここは私にお任せ下さいっ)」

「(あ……?何?まだスパゲティがほすぃー?まだ食い足りねぇのかよ。お前はあれだな、もう食いしんぼう万歳だな)」

「(ち、違いますよぉ!まるで私が年がら年中暴食しているみたいな言い方は止めてくださいっ!と、とにかく私に任せてくださいっ!)」


双葉は栞が見えない位置で自分の胸の前で小さくガッツポーズをして栞の方に向いた。何だかよく分からんが、とりあえず静観しておこう。


「あ、貴方は妹さんですねっ!は、初めまして!」

「は、はぁ……初めまして」


双葉は小さく御辞儀して何か自己紹介の前フリみたいな台詞を言う。それに対して栞は急に振られたからか、戸惑い気味で返事した。うん、今更この会話は無いと思うんだっふんだ。


「わ、私はハタチの榎本双葉と申しますっ!不束者ですが末永くよろしくお願いしますっ!」

「え、私の一つ年下なんだ。てっきり……その、幼稚園……」

「ち、違いますよぅ!ハタチー!私はハタチの幼女なんですぅー!」


何かさっきから双葉の台詞がおかしいと思うのは俺の気のせいか?それに栞の双葉を幼稚園…げふんげふん。それは言いすぎだと思います、はい。俺も最初は中学生と間違えましたが、はい。


「ふーん、私は溝淵栞。そこのニートっぽい顔してる男の妹なの、よろしくね」

「あの、俺っちニートじゃねぇんですけど」

「それで榎本さん……」

「私の事は『双葉ちん』って呼んでもらっていいですよ♪」

「じゃあ、『双葉ちゃん』って呼ぶね。あ、私の事は『栞』って読んでもいいよ」

「はいっ、栞さんっ♪」

「よろしくね、双葉ちゃん」


うん何だろう、この自然に流れるようなムッシング。もう二人の世界に入っちゃってるって感じ?ここからは百合展開でお送りします……んなわけあるかっ!


「うん、じゃあ双葉ちゃん。一つ聞きたいんだけど、双葉ちゃんとお兄ちゃんの関係って何なの?」


うっ、や、やばいっ!うっかり気を抜いていたっ!


「はいっ、私は司さんに買われーーー」


あ、あぁああああああああーーーーーーーーーー!言っちゃらめぇーーーーーーーーーー!






「ハーイ、そこのお嬢さん方。オジサンとちょっとイケナイお遊びしないかーい?」


俺が双葉の口を押さえようとしていると軽いチャラ男っぽい感じの声が聞こえた。そして、その声の発信源の方に顔を向けるとそこにいたのは……


「店長……何やってんすかこんな所で」


白のタキシード姿に蝶ネクタイを身に着け、花束を持った店長が突っ立っていた。すっげぇ場違いな馬鹿いる。こんな所で朝から何やってんのこの人?


「ぬぅ……!?今、おぞましきケダモノの声が聞こえたぞっ……!?ま さ か っ !?」


店長は高飛車な馬鹿息子っぽい動きでゆっくり俺の方に向く………きめぇ。


「……鼻毛ぶっこ抜き!」ブチッ!


俺はとりあえず緩慢な動きがムカついたので店長の鼻毛を思いっきり抜いてやった。


「ぐぉー!?つ、司ぁ!?何しやがるっ!?」

「うるせぇよ、あんたこんな朝っぱらから何してんだよ。店は?ケーキ作りはどうした?」

「あぁ……?ケーキ?んなもんさっき終わったわボケ、鼻毛。おーいて……」


店長はよっぽど痛かったのかまだ鼻の穴を押さえていた。双葉と栞は呆然と店長を見つめていた。何だかよく分からんが今のお陰で双葉が余計な事を言うのを押さえられた。


「ナイスだ店長」

「何がナイスだよ、はっ、俺はナイスガイだがな」

「黙れロリコン」

「ね、ねぇ……お兄ちゃん。その人……誰?」


栞は戸惑った表情で店長に指を差す。そりゃ、いきなり食いもん屋でタキシード着て花束持ったキ●ガイ見たらそんな顔になるわな。


「知らない」


とりあえず赤の他人のフリをすることにした。だってこんなロリコンと知り合いって思われちゃうのやだもんメタもん。


「おい……司ぁ、そりゃあないだろ?俺とお前はベストフレンズだろ?互いの尻の穴をぺろぺろ舐め合うくらいベストなフレンズだろう?」

「おい、やめろてめぇー勝手に俺を貶めるような事実無根な関係を作るなっ!うぉー!ちょっ、双葉!栞!違うっ!違うぞぉー!?誤解だっ!やめろ!そんな目で見るなぁー!いやぁあああヤメローやめてくれぇーーーーー!」

「俺はこんな展開もアリだと思うぞ。俺×司ってな感じでな。ちなみに俺が攻めでお前が受けだ」

「全然アリじゃねぇよ!あとそーゆーの細かくガイドしなくていいから!くっ、それより店長はこんなところで何しているんだよ!」


とりあえず、ドン引き気味の双葉と栞の気をそらせるため強引に別の話題に移らせることにした。


「あん?決まってんだろ?ナンパだよ、ナンパ」

「……まだ諦めていなかったのか」

「ふんっ、諦めるわけあるかすっとこおっぱい……とりあえずせっくる前提のナンパは失敗する事がようやく分かった」

「今頃それを気付いたのか……」

「だから今度はせっくるしてくれる女を捜していた……そして、ようやく見つけたんだよ」

「………おい、全然前と変わってねぇぞ」

「ちげぇよ、俺は今までせっくるしてくれって攻め気でいったんだが、今度は受け気でいくんだ。全然違うぞぽんぽこりん」

「全然言っている意味分からねぇし、違いが見出せないんだが」

「だからっ、この娘達が俺を快楽の道へ先導してくれるんだよっ!」ギュッ、ギュッ

「え…?」

「ふぇ?」


店長は栞と双葉の手をギュッと握る。


「何言ってんすかアンタ。あと、何人の妹の手ぇ握ってんすか?あと……そこのロリもそれは犯罪だ」

「私はハタチの女ですぅ!」


双葉は涙目で訴える。こいつはさっきからハタチハタチってうるせぇな。あのなぁ……ハタチハタチって浮かれていられるのも今のうちだぞ?おいちゃんなんかなぁ……おいちゃんなんか……うぅ、ぐすっ。


「触診だよ」モミモミ

「そろそろブチ切れてもいいですか?」


とりあえず店長を俺の拳で制裁した。






「つーわけでお前ら俺を祝えっ!」


何だかんだで何故か双葉と栞と店長は喋っているうちに仲が良くなった。つーか双葉は一度顔を見ているので知っているはずなのだが……何だろうこの疎外感。俺だけ何か仲間ハズレ?


「てんちょーさんっ、祝うって何のお祝いですか?」


双葉は何故か瞳をキラキラさせてワクワクした表情で店長に問う。何でそんな嬉しそうなんすか双葉さん。


「俺を崇めるお祝い」

「氏ね」


俺は一言言ってやった。


「そう言えば今日ってイブだよね?双葉ちゃんと店長さんは何かパーティーしないの?」

「パーティー……ですか?」

「パンティ……か。所で君達の今日穿いているパンティーは何だ?」

「氏ね、ついでに死ね」

「今日が実質クリスマスみたいなものでしょ?何か予定無いの?あっ、お兄ちゃんは言わなくていいよ。どうせ今年もロンリークリスマスでしょ?」

「………」


妹よ……お兄ちゃんはすこぶる悲しいぞ。当たっているから何も言えないけどねっ!


「あの……いいですか?」


双葉はおずおずと手を上げた。


「ん?どうしたの双葉ちゃん?」






「えっと……明日の25日なんですけど、私の誕生日なんです………」






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