12月24日(1)
クリスマスイブ。
本番は明日のクリスマスなのだが、毎年どうも街は今日のイブの方が活気に満ち溢れているような気がする。早朝にもかかわらず街の所々の店はクリスマスの準備に勤しんでいた。ある豆腐屋のオッサンは何を思ったのかサンタの格好をして豆腐をさばいたり、あるカマバーのおばちゃん(?)は自分の店の前でスネ毛な生足丸出しのサンタの格好で意味ありげな溜息をつきながらタバコを吸っていたり、ある道端にいるどうみても一ヶ月くらい風呂に入ってなさそうな臭そうなオッサンは何をトチ狂ったのか『ワシを飼って下さい(←サンタプレイもアルヨ!壱万円より)』と書かれた看板を持って、あきらかにやる気のなさそうな顔して鼻糞をほじくっていたり、あるバッカップルは早朝にもかかわらず何を血迷ったのか公衆の面前で堂々と半裸状態になってちゅぱちゅぱしたり………ともかくまぁ街は異様なテンションに包まれていた。恋人のいない三十路’s童貞の俺はというと、そんなイブの日でも普段と変わらなかった………いや、変わってはいるな。悪い意味で。アッー!もぅ!どうすればいいんだぁー!俺はイライラをぶつける様に某ピエロが不気味な笑みを浮かべている絵がプリントされた紙コップの中に残った氷を我武者羅に噛み砕いていた。そして俺の向かい側にいるロリモドキ(Lv.5)に目をやった。
「スー……スー……えへ、エヘへ、司ひゃん……むにゃむにゃ」
「人が一睡もできないくらい悩みに悩んで苦しみに苦しんでいるのに君と来たらまぁ…………おふぉふぉふぉふぉ、ぬっふん」
ごめん、今俺何かよく分からないキャラになった。それにしても気持ち良さそうに涎を垂れ流しながらおねんぬしちゃってまぁ………あぁ、もうかぁいいなぁこのロリモドキは。これはあれだ……もうあれだ………うん、あれだ………あれしかない………イ タ ズ ラ す る し か な い 。言っておくが、奴がかぁいいからとかそんな短絡的な理由じゃないぞ。
「むにゃあ………司しゃん……司しゃん……むにゅう………」
「………」
さっきからコイツは俺の名前ばっか言っているが一体どんな夢を見ているんだ?しかし、こんな寝言を言われたら俺のイタズラ心が半減する………わけないし、イタズラをするじぇー……まぁ、気弱な男だったら即効ぶん殴っているけどな。………何だね君ぃ、さっきからじろじろ見て……俺の顔になんかついているか?あーん?こらぁ?
「スー……スー……ん、んん…ん~~………」ぷにぷに
俺はまず目の前にいるロリモドキのホッペをストローで軽くぷにぷにした。双葉は寝ながらもストローの感触を感じたのか眉を動かしてわずかに抵抗を見せた。ふんっ、お前はこのくらいの感触で感じるのか。君の身体は感じやすいんだね、プひひ。うん、俺の思考チョーキモイー!フゥー!次だっ!次っ!ギアセカンド!
「ん、んにゃ……ふむぅ、ん、んにぃ………」クニクニ
今度はポテトを双葉の鼻の穴に入れて、動かしてやる。寝ながらも自分の鼻の穴に異物の感触を感じたのか双葉はさっきのストロープレイよりも大きな反応を見せた。いやいやいやぁーんな感じで身体をクネクネさせている……うーむ、いきなりやりすぎコー●ーっちゃったかな?だがしかし、やめるわけないし、イタズラを続けるじぇー
「ん、むにぃ、ひゃ、にゃう………むっ、にゃ、ひゃう……」クニクニ、サスサス
俺は更に左手に持った鼻の穴に突っ込んだポテトを激しく動かしながら今度は右手に持った一際長いポテトで奴の耳穴をくすぐった。いちいち面白いリアクションをする奴だ。うん、これは蝶☆楽しいっ!あれだ、ガキの頃、近所の悪ガキとつるんで女の子のリ●ちゃん人形を取り上げて、股を開いてガン見したり、仮想ダッ●ワイ●ごっこをしたりしていた時とおなじような気分だなこれはっ!………何だね君達、その顔はぁ?君達だっておいちゃんと同じような事やったことあるだろう?やめたまへ!その軽蔑の眼差しはっ!心が痛む!主に俺のなっ!ふふん、まぁいい。とにかく次で最高のフィニッシュを決めようじゃないか………では、いくぞっ!
「ぶっかけっ!」ジャバー!
ははっ、ははっ!やったぜ兄貴っ!奴の顔面にド●ルドの紙コップの中に入っていた氷水をぶっかけてやったぜっ!あれ!?おいちゃんちょっとやり過ぎた!?でも後悔はしていないっ!むしろ何だか清々しい気分になったねっ!
「ひゃうっ!つ、つめたっ!?な、何ですかぁー!?こ、これはぁー!?」
さすがに鈍感ちんの双葉でも水が顔に掛かった瞬間、冷たさでガバァーと起き上がった。
「よぅ、オハヨウ双葉。清々しいイブの早朝はどうだい?」
「……あっ、司さんおはようございます。イブですか……エヘへ。って何誤魔化しているんですかぁー!?な、何で私の顔は水で濡れ濡れになっているんですかぁー!?あぁー!服にも掛かってますっ!これ一枚しかないのにぃ……うぅ……(泣)へっくち!」プルプル
双葉は子犬のようにプルプル震えていた。……うーむ、今更だが何だか罪悪感が湧いてきた。
「えーっと、なんつーかノリで?やっちまったって感じ?アハハ!ドンマイ●ル!」
「なっ、何ですかそれぇー!?ひどいっ!ひどすぎるっ!それに寒い、寒すぎですっ!へっくち!」
「俺が暖めてやろうか?」
「なっ、何ですかその右手に持っている怪しげな紙コップはぁー!?い、嫌ですっ!結構ですっ!」
「大丈夫、これホットコーヒーだから」
「何が大丈夫なんですかぁー!?うぅ、司さんはこんなことばっかりしているからいつまで経ってもマザコンなんですよぉ……へっくち!」
「セイヤッ!」バシャー
「あつっ、あついですぅーーーーー!!!!!(泣)」
俺は禁句ワードを吐きやがった双葉の手の甲に既に温めになったコーヒーをぶっかけた。そんなに熱いか?ちょっとリアクションが大きすぎなんですけどどうしたらいいですかこの子?とまぁ、それは置いておいてとりあえず、ここまでの経緯を説明しとくか。
遡ること5時間前ーーー
「はぁー!?はぁー!?はぁあああああああああーーーーーーーーーー!?す、捨てたぁ!?捨てたのれすかぁー!?俺の人生の恋人達をぉ!?ワッツ!?ナッツ!?ウエ●ツ!?なぜなのぞなもしっ!?フォオオオオオオオオオオーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!あひぃいいいいいいいいいーーーーーーーーーー!!!!!!まさに鬼っ、鬼っ、鬼っ……!まさに鬼畜の所業っ……!ぐぐぐっ、ぐぅ~~………何て女だっ……!悪魔悪魔悪魔悪魔っ、狂人狂人狂人狂人っ……!何故……何故そんな……何故っ!?そんな顔をしているっ……!分かっているのか……?お前の過ち……っ!くぅ~~~………ワシは、ワシは闇の王だぞっ……!?生意気なガキっ……!今、ここでっ!今すぐ殺してやりたいっ!今すぐにでも……がぁ~~~!キキキッ……」
「うるせぇんだよてめぇはよぉー!途中から何か違うキャラになってんだろうがっ!」
バキッ
「がぁー!?」
いってぇ!何だっ!?……はっ!今、一瞬意識とんだっ!?そ、それより……!ぐぉおおおお………俺の、俺の恋人達がぁ……!ううっ、うぅううう………!チッキショウ………もうダミダ………俺の恋人達が捨てられ、それにこの状況……家賃の金は無い……うぅ、人生ゲームおーばーひーとだ………うぉおおおお!!!!!もうっ!もうおいちゃん生きていく自信を失ったよっ!
「殺せぇ!もういっそのこと殺せぇ!俺のチ●ポを切り取って塩と胡椒で炒めてたーんと食えぇええええええええーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「何言ってんだい。やだよ、アンタみたいな臭いブァナナなんて食いたかぁないね、ペッ」
魔血子は地面に唾を吐いた。何て女だ……俺の人生最後の願いさえ聞いてくれないのか……魔女だ、この女はモノホンの魔女だ………
「あ、あの……司さんも、お姉さんも落ち着いて下さい………」
俺と魔血子が睨み合っていると間に双葉が止めに入った………
「ん……?アンタは確か……うちのアパートの前で倒れていた……」
「おいロリモドキ……お前は関係ない、横から口出しするな……おぉい!クソババァ!殺せ!早く殺せぇ!俺の乳首を切り取ってコリコリした食感をたーんと堪能しろぉおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「やかましいっ、ワケの分からないこと言ってんじゃあないよっ!」ギリギリギリギリ
「ぎぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
魔血子のアイアンクローが俺の脳天に炸裂するっ!やめてやめてやめてやめて痛い痛い痛い痛い割れちゃう割れちゃう割れちゃう割れちゃうのぉーーーーー!!!!!アッー
「………………」バタッ
「ふぅー……ったく。この馬鹿は……」シュボッ
「あの……司さん、動かないですけど……(汗)」
「大丈夫だよ、その男は死ぬぐらいの痛いのすきすきーお●ぎとピー●なドM野郎なんだよ。……さて、うるさい馬鹿も寝たし、フゥー………」
「あ、あの………ここの部屋の物を全部捨てたって本当なんですか……?」
「あぁ、嘘だよ。そこで寝ている男の生活必需品とか服は実家に送ったんだ。……まぁ、オタクグッズは全部売って金にしたけどね、ほらっ」ポイッ
「わっ……こ、これ?い、いいんですかっ!?」
「その金はアンタが持っておく方がいいだろ、司に渡すとロクなもんに使わないだろうからね。それで1日2日はもつだろ……フゥー……」
「こ、こんな大金頂けませんっ!これは司さんのお金ですっ!それに、そのっ……こんな赤の他人の私にお金を渡すなんて……うぅ」
「おやおや……そうなのかい?アンタと司は只の赤の他人同士じゃないと思ったけど……もしかして、そのはした金を持ち逃げする気かい?クク……」にやにや
「そ、そんなのするわけないですっ!つ、司さんは……そのっ、あのぅ………わ、私の命の恩人です………感謝することはあっても……そんな、恩を仇で返すようなこと絶対にしないですっ!わ、わふっ!?」
「あぁーん!もうかぁいいわねぇ!オタニートには勿体無いくらい!はぁ~ん……」スリスリ
「やっ……あうぅ~~~(///)」
「……でも、ごめんねぇ。そこの馬鹿が私との約束を違えたせいでこの部屋から追い出すような真似して……もう、いっそのことあたしの嫁になるぅ?歓迎するわよぉ~~~ウフフフフ………(///)」
「……ふぁう!いっ……け、結構ですっ!」ササッ
「あらそう?残念、ウフフフフ………とまぁ、冗談は置いておいて、そこの馬鹿が起きたら伝えておいてくれる?そうねぇ………」
「『長い間楽しかったわよ………主にアタシが(笑)』か……うん、ふざけるなぁあああああああああドちくしょぉおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」ドンッ、ドン!
俺は行き場の無い怒りを机に向けた!チッキショウ!チッキショウ!こんなことなら最後にあのクソババァの目の前でてめぇの妹の裸を想像して夜な夜な抜いていたことを暴露してやりゃあ良かったっ!その後、半殺しになるのは目に見えているがなっ!
「つ、司さん落ち着いてっ……!ほ、ほらぁ!こんなにお金たくさんくれたんですよぉ!?喜びましょうよぅ!エヘへ(汗)」
「俺の嫁達を犠牲にした結果なっ!5000円が大金?ふざけるなっ!何が大金だっ!これじゃあ、う●い棒
500本しか買えねぇじゃねぇかコラァ!!!」
「それを基準にするのはどうかと思いますけど……(汗)」
「うっ、うっ、これでついに夢のマイホームを失った………明日からどうやっていいですかぁー?(泣)」
「マイホームって呼べるほどのそんな立派なものでは無いと思うんですけど………」
「うるせぇー!文無しのテメェーが言える台詞じゃねぇだろこのすっとこおっぱいとっとこハ●太郎!」ギュム
俺はロリモドキの白き両頬を両手を駆使してびよんびよん伸ばした………よく伸びる。これが我が社の新素材か。
「いふぁいでふぅ~~~~~~つかふぁふぁん、やめふぇくらはいぃいい~~~~~~(泣)」
涙目で何やら俺に抗議している。日本語を喋りなさい。
『目が、目がぁぁー!!』
「うおっ!?」ビクッ
ひたすら双葉の頬をびよんびよんいぢっているといきなり俺の携帯のメールの着信音が鳴った。心臓に悪いわっ!
「い、今の人の唸り声は何ですかっ!?」
「偉大なるム●カ様の断末魔だ、っと誰だ?こんな早朝にメール……?」
俺は受信メールを確認した。携帯のディスプレイに映し出されていた文字は………
『09/12/24 06:00 妹 件名:キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!! 本文:駅前のベンチで待ってるから』
ポチッ
「……はっ!無意識で削除してしまったっ……!」
反射的に削除をしてしまったっ……!Oh……やっちまったぜ。だが、やっちまったもんは仕方ないよね?というわけでムシムシムシキ●グー
『目が、目がぁぁー!!』
「え……?」
またメール……?誰だろう……?そして再び受信メールを確認すると………
『09/12/24 06:01 妹 件名:キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!! 本文:待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから待ってるから』
「ひぃいいいいいいいいいーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」ガタンッ
「ひっ、な、何ですか司さんっ……い、いきなり大声出さないで下さいよぉー!?」
12月24日、クリスマスイブの早朝。
早くも俺達のクリスマスの幕開けは波乱の警鐘が鳴り始めたっ……!