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その24  サブクエスト






 メインクエ攻略で寝落ちした初音は、彼女たちがフレンド登録していた頃、目覚ましに起こされて、出社準備を始める。


 現地時間9時前、会社に出社。

 メイクで誤魔化されてはいるが、寝不足気味であり会社内をゾンビのようにフラフラと歩いており、たまに手で隠してはいるがあくびをしている。


 そして、社内には同じ状態の者がもう一人いたそう、彼女の上司シコルスキー博士であった。


 そのため社内では、そんな寝不足の二人を見てこのような噂で持ち上がる。


「あの二人、ようやく付き合って” 昨夜はお楽しみでしたね“になったのだと。一晩中エキサイトしたのだ」と……


 正直周囲は「もうお前ら付き合っちゃえよ」と思っていたので、祝福ムードに入っていた。

 部下の女性社員がそれとなく初音に真偽を尋ねてくる。


「あの…… 今日はいい天気ですね」

「ええ… そうね…?」


「ところでGM(初音)とCEO(博士)は交際しているんですか?」


 それとなくではなくド直球だった。


「ああァ!?」


 寝不足な所に不愉快な事を聞かれた初音は、感情の制御が出来ず思わず不快な感情を顕にしてしまう。それでなくても初音は普段から厳しい顔をしているが、そこに寝不足による目付きの悪さが加わっているので、入社2年目の女性社員にはその圧に耐えきれなかった。


「ひゃうぅ!! ごめんにゃさーい! にゃんでもないれしゅ~!!」


 怯えた女性社員は、脱兎のごとく去っていった。


 その後、初音が「あ……」と思った時にはすでに遅く、女性社員の姿はなく謝罪する機会を失ってしまった。


 だが、そこは有能な初音。すぐに休憩時間に彼女の分のコーヒーを持って、先程の非礼のお詫びに行く。そして、巧みな話術で彼女の心を掴む。


 すると―


(素敵… 初音お姉さま…♡)


 女性社員は憧れと敬愛と百合百合的な眼差しで、彼女を見つめるようになった。

 掴みすぎた……


 その日の21時半、初音はログインすると昨日クリアしたメインクエストの報告をするために、依頼を受けた兵士と会話する。


「やあ、よく来たな。月音殿から話は聞いている。魔晶石奪取に協力したそうだな。これは報酬だ、受け取ってくれ」


 <Akaneは3000ドルドル手に入れた>


 兵士の会話の後に、お金入手のアナウンスが入るが、その後会話は続く。


「あと、月音殿からこれを渡してくれと言われている。受け取ってくれ。これからも君の活躍を期待する」


 兵士の会話が終わると、今度は<“魔力障壁”を手に入れた>というアナウンスが入った。


「ハルルちゃん、このアイテムは何>」


「これはね。その他の所に装備しておくと、“魔力障壁発動!”の音声入力の後に、MP消費して、飛び道具からのダメージを軽減、もしくは無効化してくれるんだよ」


「ええっ~!? そんなのがあったの!? どうして、もっと先に教えてくれなかったの!? パリィいらないじゃない! バッティングセンターに費やしたお金と時間が無駄になっちゃったじゃない!」


 アカネがハルルに文句を言うと、彼女は”そんなん知らんがな”といった表情をした後、説明を続ける。


「いや、魔力障壁はそこまで万能じゃないんだよ。無効化できるのはマシンガン系による攻撃で、私が持つようなライフル型は軽減になるからね。更に威力のあるスナイパー系などの遠隔武器相手には、もっと軽減率が下がるからね。パリィはそれらを無傷で防ぐことが出来るから、覚えておいて損はないよ」


「逆に、マシンガンのような速射系から放たれる弾を、全てパリィすることは難しいので、魔法障壁で防ぐのがオススメですよ。それに見合ったMPが必要になりますけどね」


 ハルルの説明の後に、バイオレットが補足してくれる。


「“相手と状況で使い分けろ”ってことだね」


「そういうことだね。でも、今のアカネちゃんだと直ぐにMPが切れて、蜂の巣にされると思うけどね」


「うわぁ…… それは嫌だな……」


 こうして、アカネの初めてのメインクエは無事(?)に終わった。


「これから、何かサブクエストでもしましょうか?」

「そうですね。では、デイリークエストの<薬草取りⅢ>なんて、どうでしょうか?」


 と、言うハルルの提案に乗り、バイオレットがデイリークエストというサブクエを提案してくる。


 メイン・サブのクエストは、基本一度クリアすると後は受けることができない。

 だが、デイリークエストとは、毎日一回だけ受けられるサブクエストで、ソロでクリアできるⅠから高レベルPTで挑むⅤまであり、難易度に沿ったお金と経験値を取得する事ができる。


 4人は<薬草取りⅢ>を受けると、早速目的の場所まで移動を開始するため、お金を消費して移動を助けてくれる馬に乗りこむ。


「私、馬に乗るのは初めてだよ」

「まあ、お金に余裕がないとなかなか乗らないよね」


 アカネの呟きにハルルが答える。

 目的地は街の東にある平原地帯を越えた先にある山であるが、馬に乗ると移動速度は通常より2倍ほど早くなり魔物に襲われずに済むので、移動手段としては優秀であると言えるだろう。


 ただし、200ドルドル消費するので、利用するにはお財布と相談だ。

 4人のプレイヤーを乗せた馬が草原を走り始める。


「あ、見て、あそこに羊がいる!」


「ああ、あれはシープだね。ツノウサギと一緒で、こちらから攻撃しないと襲ってこない子だよ。でも、もふもふしようとして触るとこの前のツノウサギのように、角で刺されるから気をつけてね、《《アカネちゃん》》♪」


「もう、それ今言わなくてもいいよね!? ハルルちゃんのいじわるぅー!」


 アカネがプンスカ怒っているのを見て、バイオレットとアテナは楽しそうにクスリとする。

 そうこうしているうちに、目的地点への山の入口に到着したので馬を降りて、山エリアに侵入した。


 すると、頭上にLV18と表示されたゴブリンが、道を遮るように歩いている。

 山道は木や岩のオブジェクトが点在していているので、道幅が狭く戦闘回避は難しい。

 よって、4人は覚悟を決めて戦闘を開始する。


「アカネちゃん! バイオレットさんとアテナちゃんは、LV20でゴブリンとレベル差が無くて攻撃を受けると大ダメージになるから、何が何でもターゲットを維持してね! 最悪アカネちゃんがサンドバックになってでも、維持してね!」


「そんな~」


 ハルルの指示に対して、アカネは泣きそうな声を上げる。

 そんなアカネにハルルは優しく微笑む。


「大丈夫! HP回復頑張るから! だから、安心して逝ってきてね! アカネちゃん♡」

「字が違う気がするのは、私の勘違いかな!?」


 こうして、このメンバーによる初戦闘が開始される。


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