表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/32

その19 新たな仲間その2







 アテナとの出会いから5分後―

 頭に魔法使いが被っているような三角帽子と、ローブを纏った女性が駆け足でハルルの近くまで来る。


「遅くなってすみません、お待たせしました」


 女性は到着するなり、一同に待たせたことへの謝罪をする。


「いえ、突然呼び出したのは、こちらですから気にしないでください」


 ハルルが頭を下げた女性にそう言うと、一同も頷いて彼女の言葉を肯定する。

 すると女性はホッとした様子を見せて、自己紹介を始めた。


「みなさん、始めまして。こちらのハルルさんのフレンドで、<Violetバイオレット>と言います。よろしくお願いします」


 バイオレットは、薄い茶色の緩いウェーブが掛かった髪と紫色の瞳をしており、どこかのお嬢様のように品がある女性だった。


「はじめまして、私はアカネって言います」

「A.Lよ。よろしくね」

「ナオシゲでござる。そして、こちらはアテナ。よろしくお願い致す。」


 アテナはナオシゲの後ろから、ぺこりと頭を下げて挨拶をした。

 自己紹介が終わると、クエスト攻略のための話し合いをおこなう。


「まず、このメインクエをクリアした人は手を上げてください」


 進行役はハルルが行い、彼女はまずこのクエの経験者を確認すると、手を上げたのはナオシゲ、バイオレット、アテナ、そしてハルル自身であった。


「参加者のうち3分の2が経験者なら、まあ大丈夫でしょう」


 経験者が4人居るため、今回のクエストはスムーズに進むだろうと、ハルルたちは考える。

 実際経験者はこの後何が起きて、どう対処すればいいのか解るため、事故が起こりにくいからだ。


 次に今回の参加者のロール(ジョブ)を確認する。


 アカネはLV23で<侍>、STスタミナDEX(技量)AGI(敏捷)に主にポイントを振っており、火力とパリィと回避重視の紙防御侍であった。


「アカネちゃん… えらくピーキーな(ポイントの)振り方をしたね…。範囲攻撃を受けたら、ヤバいから気をつけなよ?」


 ハルルの忠告通り、強MOBは範囲攻撃を使用してくるものが多く、当然パリィでは防げないので、回避をミスると今のアカネの防御力では即死、運が良くても瀕死となるだろう。


「大丈夫! 昔の偉い人も” 当たらなければ、どうということはない”って言っていたからね♪」


 その言葉を聞いたアテナ以外の4人は同じ事を考えてしまう。


(あっ これ完璧フラグだ……)と…


 ハルルはLV23の<ガンナー>で、銃による中距離を得意とするが耐久は同じく低い。ゲーマーなだけあって、このレベルのガンナーとしては申し分ないステータス配分となっている。


 A.L(初音)はLV15の<魔法剣士>ではあるが、このレベルではどっち付かずの中途半端な能力で、今回のメンバーの中ではレベルの低さもあって、一番役に立たない可能性もあるが、中の人が怖いので誰もそこには触れない。


 バイオレットはLV20の見た目通りの<魔法使い>で、中距離からの攻撃魔法と弱体魔法を得意とする。あとソロ用にMND(精神)を上げているので初級のヒールも使用できる。


 ただし、その分MAG(魔力)が極振りの魔法使いより低いので火力が落ちる。

 そして、彼女も防御力は無い。


 アテナ・LV20<神職者>、所謂ヒーラーで味方のHP回復や状態異常回復、味方への強化魔法も使用できる。彼女の頑張りでパーティーの生存率が大きく変わるだろう。姉の勧めでポイントはMNDとMP重視なので回復力は高い。だが、防御力は無い。


 ナオシゲ・LV38<侍>、レベルが高いため攻撃力が高く、全身に甲冑を装備しているので防御面でも頼れる。そのため彼が今回のタンク役を務めることになった。


 因みに今回のナオシゲの胴は赤一色で、TE○GAカラーではない。これはもちろん初音の指示(命令)であり、女の子だけのパーティーであるためTPOに配慮した結果である。


「じゃあ、アカネちゃんとA.Lさんは、あそこに立っている兵士に話し掛けて来てください。それでクエストを受けられるので」


 そう言われ、二人はクエストを受けるために、NPCの下へ向かう。


「おお冒険者か。丁度いいところに来た。実はここから北に暫く行った所に、【オークの前哨陣地】があるのだが、数日前にそこを監視している者から、【魔晶石】が持ち込まれたという報告が入った」


【魔晶石】の説明が無いことにモヤるアカネだったが、兵士は話を続け本題に入る。


「知っての通り【魔晶石】はとても危険なモノだ。使用される前に回収しなければならない。だが、こんな田舎の町ではそんな兵力は無い。そこで、君達冒険者に協力を求めている。どうだ、【魔晶石回収作戦】参加しないか?」


 説明が終わると<はい いいえ>の選択肢が出現したので、アカネとA.Lは<はい>を押してクエストを受領すると皆のもとに戻ってきた。


 戻って来たアカネは、開口一番ハルルに【魔晶石】の事を尋ねる。


「ねえ、ハルルちゃん。【魔晶石】って何?」


 親友の質問に、ハルルは笑顔でこう答える。


「アカネちゃん…。ググれカ― 」


 ―が、言い終わる前に同じく笑顔のA.Lの手が肩に置かれる。

 すると、ハルルは引きつった笑顔で、慌てて説明を始めた。


「まっ 【魔晶石】というのはね。魔力が凝縮されて結晶化したモノで、この世界では大変貴重なモノであり、危険なモノでもあると設定されている重要アイテムだよ…です…」


「そうなんだ~。ありがとうね、ハルルちゃん」

「いえ… どういたしまして……です…」


 ニコニコしながら礼を言うアカネに、ハルルは若干怯えながら何故か丁寧語で返答した。


「では、北の前哨陣地に出発しましょう」


 A.Lの言葉で一行は前哨陣地へと向かった。

 前哨陣地への道中、MOBと出会うがアカネ、ナオシゲが撃破していく。


 アカネはパリィと受け流しを多用して、宣言通りに無傷で撃破していく。


 アカネはゴブリンがクロスボウで放ったボルトを刀で撃ち落とすと、次弾反射までにダッシュで近づき一撃を加え、反撃してくる前に連続でもう一撃を加えて撃破する。


 その背後から別のゴブリンが彼女に剣を振り下ろすが、それを斜めに構えた刀で受け流しして相手の態勢が崩れたところへ斬撃を繰り出す。


 ゲームの仕様上受け流しやパリィで体勢を崩された相手への攻撃は、クリティカルになる確率が非常に高くなるため、受け流しからの流れるような斬撃を放つアカネの攻撃は、クリティカルとなり相手にかなりのダメージを与えレベル以上の攻撃力を叩き出す。


(うん。順調順調♪)


 彼女は内心でそう思いながら、順調にモンスターを倒していく。


 その様子を見たアテナ以外のメンバーは


(順調にフラグを積み重ねている…)


 と危惧する。

 だが、アテナだけは


(アカネお姉さん… かっこいい…)


 と、憧れの眼差しを向けていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ