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その18 新たな仲間その1





「ナオシゲさん!?」

「やっ やあ… アカネ君。久しぶり…… でござる」


 ナオシゲは3メートル位離れた場所から、挨拶してくる。


「あの… どうして、そんな距離を取っているんですか?」

「いや… その… 」


 言い辛そうにしているナオシゲ。


「もしかして… 私の事… 嫌いなんですか…?」


 悲しげな表情で見つめてくるアカネを見て、彼は慌てて否定する。


「ちっ 違う! ……これには、理由があって…」

「理由って、何ですか?!」


「それは… その…… 」


 アカネが理由を聞くために近寄ると、ナオシゲは後ずさって一定の距離を開け続ける。

 更に迫るアカネに、初音が思わず口を開く。


「彩音ちゃん、ダメよ! そんな変態に近づいたら!」


 この初音の言葉で、アカネは全てを察するとその姉に抗議し始める。


「お姉ちゃんでしょう! ナオシゲさんに距離を開けるように言ったのは! そんな失礼なこと言うなんて、酷いよ!」


 アカネに怒られた初音は“しゅん”となりながらも反論する。


「違うの! お姉ちゃんは初音ちゃんのことを思って、この変態に… 」


「ナオシゲさんはいい人だよ! 初対面なのに私のパリィの練習に付き合ってくれたんだから! 謝って!」


 姉の言い訳を遮って、アカネは初音に謝罪するように詰め寄る。


「どうして、私がこんな変態に謝罪しないとならないのよ~」


 姉は不満顔を浮かべるが、それでも妹の頼みだから仕方なく謝罪をしようとする。

 だが―


「いや、別に謝罪はいいよ。君を心配するお姉さんの気持ちも解るからね」


 ナオシゲが止めに入り、尚且姉へのフォローまでしてくれるという、まさしく【変態紳士】っぷりを見せてくれる。


 その姉はバツの悪そうな顔で、髪を触って恥ずかしさを誤魔化そうとしている。

 そんな初音の態度に、陽は違和感を覚えた。


(あれ? 初音さんにしては珍しい反応ね… いつなら私と同じで詭弁で押し通すのに……)


 彼女がそのような事を考えていると、初音が話題を変えるためにナオシゲに頼んでいたクエストに参加してくれるメンバーの事について確認する。


「ところで、頼んでいたクエスト参加メンバーの件ですが、どうなりましたか?」

「ああ、それなら… ほら、そこに」


 ナオシゲがそう言って指差すと、その先には噴水の影からこちらを窺う少女の姿が見えた。

 見た目は小学生ぐらいで、綺麗な金色の長髪の美少女だった。


 アカネたちがその少女の方を見ると、それに気付いた少女は“ビクッ”と体を震わせて、噴水の影に隠れる。


 そして、恐る恐る噴水から顔を出してこちらの様子を窺うが、こちらがまだ見ているのを確認するとすぐに引っ込んでしまう。


(かわいい…!)


 アカネとハルル、初音はそんな少女の行動を見て、思わず微笑んでしまう。


 だが、それはそれ これはこれである―


「初音さん、これGM通報案件ですよね?」

「いえ、普通に警察通報案件でしょう」


 ナオシゲのことを、汚物を見るような目で見ながら、対策を講じるハルルと初音。

 そんな二人に対して、ナオシゲは自分の無実を主張する。


「ちょっと待って! あの子はリアルで親戚の子なの! 犯罪じゃないから!!」


 必死に言い訳をするナオシゲを他所に、アカネ達はその言葉を聞いて話し合う。


「どう思います?」

有罪(ギルティ)よ!」

「でも… 本当に姪御さんかも知れないよ?」


 ナオシゲに初音の口から判決が言い渡される。


「有罪2、無罪1。よって、被告を有罪とします! 死んで償え、このド変態が…」

「いや、本当に姪っ子なんだってばーーー!」


 初音の言葉を聞いたナオシゲはorzの状態で項垂れると、その光景を見たアカネたちは苦笑いを浮かべていた。


 そして、ナオシゲは初音に蔑んだ目で見られている事に、このような思いを抱いてしまう。


(初音…。君のその汚いモノを見るような目… 僕は嫌いじゃない…!)


 茶番が終わった所で、ナオシゲは噴水から少女を連れてくる。


「では、自己紹介をしてくれ」

「……っ!」


 だが、恥ずかしがり屋な少女は、今度はナオシゲの後ろに隠れると、彼の後ろから顔を“ひょこ”っと出して、こちらを覗いて様子を窺うという先程と同じ行動を取ってくる。


(何!? この可愛い生き物は…!!)


 アカネたちは、この可愛らしい仕草を見せる少女に見惚れていた。


 その少女の眉は“ハ”の字を描いており、目は涙目でウルウルしているので、アカネはそんな彼女の姿を見ると胸が“きゅんきゅん”してきて、思わず抱きしめたくなる衝動に襲われるが、ぐっと堪えて話しかける。


「こんにちわ。私はアカネっていうの。あなたの名前はなんていうのかな?」


 アカネはしゃがんで少女と目線を合わせると、優しい声で彼女に問いかけるが、彼女は恥ずかしがり屋のようで、なかなか答えようとしない。


 ゲームなので頭上には、<Atheneアテナ>とプレイヤーネームが表記されているのだが、本人の口から聞いたほうが仲良くなれると思ったアカネは、再度優しく問いかける。


「お名前はなんて言うの?」

「…………アテナ」


 消え入りそうな小さな声だったが、なんとか聞き取れたので、アカネはその少女の名前を呼ぶ。


「そっか、いい名前だね。よろしくね、アテナちゃん」


 そう言って手を差し出すと、少女は戸惑いながらも差し出された手を握り返してくれた。

 その瞬間、アカネは思わず抱き締めそうになるが、我慢して立ち上がる。


 ナオシゲの説明によると、アテナは、このように気が弱くそれを改善するために、姉と一緒にこのゲームを始めたのだが、その姉がPVPにハマって相手をしてくれなくなり、このような性格なので今はソロでプレイしているとのことであった。


 アカネはアテナに既視感を感じる。

 それはハルルと初音も同じで、(彩音ちゃん以外にも、そんな理由でこのゲームをする子がいたのか。これは、その姉の口車に乗せられたな…)と。


「アテナちゃん、がんばろうね!」

「……はい 」


 アテナもアカネに自分と同じようなモノを感じたのか、少し懐き始めて返事をしてくれるようになった。




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