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「時節家次期当主は君が認めなければなれないから。並外れた実力があろうが、前当主が認めようがそんな事は関係ない。君が仕えるに価するべき相手と悟らなければ意味がない。成程、見る目は今も健在のようだね」
「私はお前様と世間話をしに来たのではない。お嬢が怯えているから即刻立ち去って頂こう」
刃を首にめり込ませ、首を飛ばすのは脅しでは無いことを証明しに掛かる。食い込んだ柔肌からとろとろと赤が滲み出してきた。
怖いと思う。日常的に私に優しく、紳士的な彼が敵に対して容赦なく威圧しに掛かる様が。敵に回したらどうなるか、遠回しに示されているようだった。
「今日のところは君に免じて見逃してあげる。だから刃を納めてくれない?」
カチャン、と音を立てて刃を離すと同時に男の姿は消えて無くなった。煙に巻いたように、霧にでも溶かしたように。
「お嬢」
式に呼ばれて押さえ付けていた緊張が一気に解れる。怖かった。本当に怖かった。到底叶わない霊力を当て付けてくる男も。連れ去るように伸ばされた手も。そして何より普段から私に甘い式が、容赦なく首を跳ねようとすることが怖くて仕方なかった。
「怖い思いをさせて申し訳ない。護衛失格だな」
地面に尻を付けたままの私に、彼はそっと手を伸ばす。そこに強い殺気も、威圧感もない。ただ娘を甘やかす父の匂いがした。
黙って差し伸べられた手を摂ると、そのまま持ち上げて抱えて歩き出す。
「帰ろうか」
「.......うん」
「銀庭、怖かった」
「お嬢の身に何かあって、穏やかで居られる程に、私は余裕のある男じゃないのでね。お許し頂きたい」
太い首にしがみついて、ぽそっと耳元で言った一言に、彼はきっと苦笑いで答えたのだろう。声音が困ったような響きが含まれていた。思えば今も昔も身内には甘く、敵には容赦ない男だった。頼りになる。と言えばそれまでだが。この男が仕える主に相応しいようになると決意したのは、また別のお話。
時節さんという苗字があるか、まっっっったく分かりません!!
出来れば実在する苗字で推していきたかったので、ちょっと曖昧な気持ちです。




