プレ三話 対峙するゼロ
「ふーん、あれぇー?」
そう気持ちの悪い声を出すのは零転成士であった。
彼は、未だにこの枯れきっている田んぼで何かを探しているようだ。
「やはり、この辺で間違いないと思うんだよねー」
そう言い、スゥ……と手を振り払う。
その瞬間、零転成士の前に何かの模型のようなものが、ホログラムの様な形状で現れたのであった。
その模型はまるで、洞窟のダンジョンを表現しているかのようである。
「あららぁー。こうなってたのねぇー。確かにー、これはみつかんないよねぇー」
そして、零転成士は手のひらを広げて掲げた。その手で握りこぶしを作る。
――次の瞬間、模型があった場所に先ほどと同じく、空間に色が塗られていくように一つの小さな小屋が現れたのである。
「みつけたねぇー」
次の瞬間辺りが闇に染まった。
「……」
零転成士は、初めて怪訝な顔をする。
「さすが、といったところか零転成士」
淡々とした口調でそう告げ、闇に染まった空間の亀裂から背の高い、少し派手な黒装束を身にまとった男が現れた。
「あららぁ、獄炎魔導師クンだねぇー」
獄炎魔導師と呼ばれた男は、身長が190cm近くはあるだろうか。
――そして、何よりも特徴的であろう、彼の右手には地面から耳ぐらいまである長身の太い杖をずっしりと闇の空間に突き立てている。
「お前を瀕死にさせるのが目的だ」
「そっちから目的を教えてくれるだなんてぇー。とっても親切なのねー」
獄炎魔導師は、杖をブンブンと振り回し始めた。
時計回りに、その杖さばきを見せつけ横に杖を薙ぎ払った。
「……もーん?」
その段階では何も起きない……。
――しかし、獄炎魔導師は元通りに杖を力強く突き立てた。
ゴーォォォン……!!
地響きのような轟音ののち、闇の空間は唐突に変貌を遂げ、辺り一面にはなんとマグマが広がったのであった。
「はぁーれ?」
当然、零転成士の足元にはマグマが“存在”しておらずマグマは彼を避けているかの様であった。
「さすがに、この程度で倒せる相手ではないと。そう奢ってはいない」
獄炎魔導師は浮いている。
――だが、ゆっくりとマグマ目掛けて下降したものの、零転成士と同じく彼をマグマが“避けた”。
「そう。虚無世界、このマグマ世界ともに延長上に存在し得る。全ての転成力、魔術は無効にするはずではあるのだ」
次の瞬間世界が割れた。――そう、割れたのだ。
――カシャーン……!!
という音とともに、零転成士の姿は消える。
「なんという力……。だがこの世界からは逃れられまい」
獄炎魔導師は、再び闇に染まった世界に亀裂を入れその中に姿を眩ました。




