十二話 清太の兆候
大変お待たせしました!!落ち着いてきたので連載再開です(´・ω・`)
(これはまずい展開になった……)
国待清太はそう感じた。
それもそのはずだ。目の前にはあの無限鏡魔導師がいるからである。
「あら?意外とあなた動揺しないのね。私みたいなエロイお姉さんを前にしたら大抵の若い男は顔に出るものよ」
もはや清太はその女の話を聞いている暇などなかった。
――どうやってこの世界から抜け出してマーチのもとへ行けばいいのか。それだけを考えていたのである。
「大丈夫よ。私はあなたみたいな可愛い男の子に危害を加えるつもりはないの。そもそも好みじゃないし。私はもっと危なっかしい男が好き」
無限鏡魔導師は頬を赤らめる。
「あの呪死って男……。私に興味ない感じ凄くいいわね」
この人は何を言っているんだろう……?
そう考えている暇すらないと感じた。
――きっと、最終的にこの女は俺を殺すつもりだ。
そもそも、この無限鏡世界に引きずり込んだ張本人だからだ……。
清太はこの世界のカラクリをなんとなく掴んでいた。
さっきから不規則に位置が代わる代わる変わっていくのだが、それにはある法則性がある。
とある鏡が少し位置をずらすと、その次にまた別の鏡が少し位置をずらす……。
というように、決して不規則なわけではなくまるで連動しているかのように複数の鏡は位置をずらしていたのだ。
「――この世界にはどういったカラクリがあるの?是非教えて欲しいもんだ」
清太はゆっくり口を開きそう告げた。この狂乱女と会話をするのはいささか危険なのだろうが、何とか平静を取り繕った。
「あらあ?口が聞けたのね。とてもいい子よ。でもね、君。それはダメよ?それを教えてしまったらあなたがこの世界から逃げられてしまうじゃないの」
女は紫色のチョーカーに軽く手を触れると、次第に複数の鏡が彼女を纏った。
「せっかくマーチの絆の魔法陣を攻略できてあなたを私のものにできそうなのに……。せっかく逃がしちゃったらもったいないでしょ?」
――来る!
女は、鏡を自在に操り星の形に並べるとみるみるうちに、鏡の表面が禍々しく変色していくのだ。
――一体どんな技が来るのか……。清太はついこの間入学したばかりの高校生であり、まるで戦闘経験はゼロである。
確かに、アニキに色々なことを教わったり、現場へ行かされたりしているがましてや殺人士と対峙するなど、あまりにも清太には早すぎた。
――だが、清太の決意は固かった。
(絶対逃げ切ってやる……!!そして呪死先生か理事長を見つけてこいつを倒してもらうんだ!)
変わる男の成長速度は凄まじい。そう決意を固めた清太の体からは力操作系の力強いオーラが出ており、彼を纏っていた。
「あら?そうだったわね。あなたそういえば、力転成士の子供だったかしら。あいつには散々な目に逢わされたのよね……」
無限鏡魔導師は額に指をあてて困った様子をみせた。
「でもいいわ。その代わりその子供を徹底的に調べ尽くして、国待に次会った時にはこの世界に閉じ込められるようにしておくわ。そしてこの上ない醜態を晒してあげようかしらね……」
女は頬を赤らめ、光悦感のある表情をする。
(――いくぞ!!)
まさにこのタイミングしかないと清太は感じ取った。
――マーチが教えてくれたことを想像し、自分の脚力が作用する方向を思い描いた。
――パキューン!!
綺麗な音を立てて、清太の足が地面を蹴り上げた瞬間に漂う一つの鏡目掛けて飛び込んだのだ。
(よし!やったぞ!)
「あら……?」
女は、一気に暗い表情へと変わる。
「あの男の子はベスト転成力を身に付けていなかったはずよ。それなのに、なぜ……?」
女は再びチョーカーに手をあてると、清太が向かう鏡が独りでに動き出した。
(まて……!あの鏡に入れば恐らく一番距離を空けられるはずなんだ……!)
清太は再びその鏡の方向へ向かうための脚力の動きをイメージする。
すると、清太の体はクッと曲がり再び足で蹴り上げた勢いで今度は高く跳んだのだ。
「なるほどねえ。マーチったらまた、“経験の魔法陣”の力を善人に分け与えたのね。だからゼロ転成士もあんなおバカさんになっちゃったのに。まあ、いいわ。どうせ状況は変わらないわ」
清太の転成力はとてもアクロバティックであった。
凄まじい速度で、地面を蹴り上げた勢いで飛んでいったかと思えば、その次はたった一蹴りで今度は高く跳んだ。
(ここで恐らくあいつはこの鏡をもっと追いかけられないぐらいの場所まで移動させるはずだ。でも大丈夫その“移動に作用する力”を逆にかけてやれば……)
――グン!と鏡が速度を上げたかと思うと、なんと清太目掛けてこれまた物凄い勢いで迫りだす。
「え、ちょっと……、それは困るわね」
しかし、勢い付いたスピードは元には戻せなかった。
――ポワーン……。と、鏡は勢いよく清太を飲み込んだ直後に動きを止めたのだ。
「あらそう。マーチによってあの子は“作用力転成”に目覚めたってわけね。まあ、大した敵じゃないわよ。それに、あの鏡の行先なら知ってるし、私もそこへ行くだけね」
女は、目の前に形が他とは違う独自の鏡を出現させた。
その鏡の縁に触れ、少し経ってから女はその鏡の中にポワーンと消えていった。




