プレ十一話 マーチの決意
「オイラがゴウクンを救い出さなきゃ」
マーチは決意に満ち溢れていた。
獄炎魔導師は、禁忌に犯されていて自分を見失っていることを
「お兄ちゃんは今何してるのかな……」
マーチは”姿見の魔水晶”とさせたその水晶を覗く。
そこで清太は、無限鏡魔導師と対峙していたのだ。
「ああ……、やっぱり。お姉ちゃんは凄く悪い人だ」
マーチは、そこの空間にある一番大きな魔法陣の上に立つと、その姿は消えた。
「ゴウクン!お願いだよ聞いてほしい!」
マーチは獄炎魔導師を説得していた。
「それにゴウクンの力があれば、なんだって解決できるんだよ!だから、ね?オイラの話を聞いて?」
「無理だと言ったはずだぞ、マーチ。ほら、おいで」
獄炎魔導師が優しく手を差し伸べると、マーチは諦めるかのようにその腕の中に収まった。
「どうしても駄目なの……?オイラはこれ以上傀儡人形を増やしてほしくない……。これ以上悲しむ人が増えてほしくないんだ」
マーチの目には涙が浮かんでいた。
「マーチ……。お前がそんなに悲しんではこの俺も悲しい。もっと笑ってくれないか。お前のその素敵な笑顔を見せてくれ」
「でもオイラ……。もうどうすればいいかわからない」
獄炎魔導師はマーチの頭を優しく撫でる。
「そうだな……。いいか、マーチ。傀儡人形というのはお互いに共鳴し、お互いの力を増幅させる。更には、お互いが一つとなり強大な力を得る。そうすれば、我々の善き行いを邪魔する者どもを近寄らせずに済むと思わんか?」
「そう……、か。じゃあ、ここに来たのは少し遅すぎたってことなんだね」
「どういう意味だ……?」
マーチは再び姿を消した、と思うと時空が歪む。
「……グスン。ここのゴウクンに語りかけても全然聞き耳もってくれなかったから。じゃあ、もっと”前”に行かなきゃならない……」
マーチは、その時空に形成された巨大な写真フィルムの左の方に記された”初期のゴウクン”という文字の下の写真フィルムへと指先を触れた。
――ポワーン……と水面が揺れると、その中へと入りこんでった。




