ブルーの名称1-1
「至急、至急。羅臼町ローソク岩付近、海中にて死体発見。応援、願います」
警察無線で、大空は遺体発見の第一報を伝えた。派出所の巡査が現着するまでの間に、現場保持を代行した。
行方不明者の捜索を手伝ったダイバーが、大空に近付いて警察手帳を提示した。
「道警釧路方面捜一、北越大地、巡査部長。ここはまず、関係者の足止めっしょ」
「失礼しました。中標津警察署刑事、巡査長、臼渕です。先程は協力を有難うございました」
突然の挨拶に大空は動転した。
〈嘘でしょう、刑事だったの。方面本部にいたなんて知らなかったわ〉
アイドルのような柔らかな笑顔が、癖っ毛の前髪を指で払った。やたらと背が高かった。180センチは越えている。身長が156センチの大空では見上げる必要があった。
「知っていて手伝って下さったのですか?」
「まさか、偶然だよ。非番だから、久しぶりに流氷ダイビングに参加した。テキパキした行動だったから、同業じゃないかって気付いていたけどね」
やたらと熱い視線で見つめられた。
〈もしかして、ただのナンパなの?〉
いやらしい魂胆が見え見えだった。かなり退いた。目立ちたがりの仕草と、タメ口が気に障った。それでも、〝方面本部の捜査一課の所属〟に委縮している自分が情けない。
巡査部長だから少なくとも階級は上だ。だが、〈なんだかなあ〉って感じだ。
〈ドライ・スーツに包まれていたときには、真面目な好青年の印象だったのに〉