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作者: 雨野じゃく

私は今、子供を助けています。

私は今、人を殺して生きています。

子供や同志からの依頼を受けて、仕事をしています。

私は権威によって苦しめられてきました。

これからも苦しめられるでしょう。

だから私は、権威を殺し続けたいと思っています。


私は昔、暴力にさらされて生きてきました。

母、学校のせ生徒、教師、そして世間に。

母は夫に捨てられ、借金を背負っていました。

彼女は苦しかったのでしょう。自分がみじめだと認めたくなかったのでしょう。

母はお仕事から帰ってくるたび、僕をけります。なぜか手は使いませんでした。

僕を落とすことで、相対的に彼女は上がります。

何が上がっていたか、当時は感覚でしかわかっていませんでしたが、今は理解できます。

学校の生徒も同じです。教師は少し違ったようですが。

でも結局のところ、世間に問題があると思います。世間が悪いとは思いません。ただ問題はあります。

私たちの欲求を満たせる仕組みがあれば、私たちは幸せです。しかし、私たちが生きている間は、一生来ない。絶対に。


私はある日、母を殺しました。包丁で。

家に帰ると珍しく母は陽気に歌っていました。私の知らない昔の曲です。

母は珍しく汗臭くありませんでした。石鹸の臭いにおいです。

彼女は自ら語りだします。「あの人が見つかってね、お金をくれたのよ。」

そう言って彼女は手に持った札束を我が子のように、恍惚と見つめます。僕はその表情を生まれてから十年間、一度も見たことがありませんでした。

その時、僕は動き出しました。とても滑らかに、プログラム通りに動く機械のように。

僕は冷静だったと記憶しています。ただ、時が来た。そんな感じでした。

僕は台所の扉を開け、唯一であるさびれた包丁を手に取り、彼女の首を、背後から掻っ捌きました。人を殺す方法は学校で教えてもらってます。

簡単です。母は血をふきながら正面に倒れこみます。血だまりが、ぶわぁっと床に広がっていきます。僕は彼女の手に包丁を握らせてから、彼女の太ももの上に頭をのせ、目を閉じます。そこからは記憶がありません。

僕は体で学んだように思います。いえ、もともと知っていたことですが、ただ立場が逆になっただけでした。結局、優劣であると。

頭のない僕にできることはこんなことでした。

それからというもの、僕は病院に一度移されます。それからは勉強をし、今では自営業をしています。

その時に学んだことを、今でも私は感謝しています。だからこそ、勉強をしました。いうならば専門的であることが優劣の境目ですから。


私は今も子供を救っています。

私は今も人を殺しています。直接的に殺すのはNGなので、間接的に。

私が直接殺すのではなく、誰かが。あるいは自ら。

人であったり、なかったり。

結局、その正体は権威なのです。

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