5.ギルドへ
今ある書き溜めはここまでです
4話のタイトルは訂正しましたが中身は変わってません
4話はまだ主人公がギルドにたどり着いて無かった.........
賑やかにざわめく市場に目をとられながらも、鬼火猫は早く早く、と要に催促する。
勿論人語が話せる訳では無い為、要の頭をぺしぺし叩いている。要はそれをおざなりに宥めつつ、足を進めている。ついでに後で鬼火に奢るものをどうするかを考えているようだ。
「ああ、一々叩くな。この状態で走りでもしたら、お前転げ落ちるだろ。急げって言うんなら鞄の中にでもはいるか?」
「にゃ(もう叩かない)」
要の頭の上からの景色が気に入った鬼火猫は、鞄の中に入れられたら周りが見えなくなる、と叩くのはやめにした。
「ほら、もう着いたぞ」
現在進行形で猫派を増やし続けている鬼火猫がぽけーっと辺りを眺めている間に、要はギルドに到着した。
ギルドの建物は、周りの建物が一階建てか二階建てが殆どであるのに対し、そこだけ突き出たような四階建てである。
一階には酒場があり、入口付近の階段から上れる二階には受付、三階には資料室や会議室、ギルド員用の休憩室など、四階にはギルド長室がある。その中心を貫く吹き抜けのお陰でどの階も明るい。
入る前にしれっと鬼火猫から戻した要が、立ち止まったままの鬼火を置いて階段を上っていく。
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二階に上ってすぐの右手側には受付、左側には依頼書の貼ってある大きなコルクボードがある。真ん中あたりには椅子や机があり、冒険者はそれぞれ依頼書を探したり椅子に座って話し合ったりしている。
鬼火がそのコルクボードに惹かれてふらふらと逸れて行くと、要の慣れた手つきで受付まで引き摺られた。
「あら、要さん、こんにちは。何かご依頼ですか?」
「いや、こいつの登録を頼む」
顔見知りらしい受付嬢の言葉にそう返す要。その手にはぷらんと仔猫のように吊り下げられた鬼火。
「え、隠し子ですか?」
すんなりと必要書類を準備しかけて、二度見する受付嬢。冷静なことで有名な彼女が驚くのは珍しい。
「いや、拾った」
と無表情の要。
「拾われた。渡り人の鬼火だ。よろしく」
と(通常装備である)無表情の鬼火。
成程、そうでしたか、と引き攣った、もとい、納得した表情の受付嬢が今度こそ、書類とペンを受付の上に揃えて説明を始める。
まだ吊り下げられたままだったので鬼火はぺしぺしと要の腕を叩くが反応は無い。別段苦しい訳では無いので、下ろしてもらうのは諦めた。
「冒険者になる為には特に必要な試験はありません。今までに大きな犯罪歴が無いこと、この書類に記入してもらうことの二つがが条件です。名前に関しては依頼等で個人の特定が出来ればいいので、偽名でも大丈夫です」
ふむふむと受付嬢の言葉を聞きながら、鬼火はカリカリとペンを進めていった。