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3.最初の出会い

 鬼火の目に映ったのは本がぎっちりと詰まった本棚だった。鬼火が立っているのは幾つも立ち並ぶ本棚の間、通路のようになっている所のようだ。


「まず、ここからチュートリアルで、それをクリアしてからあいつと合流か」


 これからの予定を呟く。

 そしてふと、ここは図書館なのだろうか、と考えた鬼火の勘は正しく、ここはとある学園の図書棟なのであった。


 鬼火はまずここがどこなのかを確認しようと、チュートリアルで習った通りに視界の隅に映るメニューからマップを開いた。簡単な説明が付いているのでどんな機能か分かりやすい。


 地名の欄には「国立学園(こくりつがくえん)」とだけあり、マップには鬼火のいる場所を示すマークだけがあった。少し歩いてみるとその分だけマップ上に道が現れたので、少しずつ埋めて行けばいいのかと考える。


 古めかしく、厳格な雰囲気が漂い、どこかの映画に出てきそうな所だ。


背後から声が聞こえた。


「なぁ、あんたは……」


若い男の声だった。


「……『神々の気紛れ』か?」


 振り向けば、いた。


 ちなみに、プレイヤー達のような存在はNPCから「渡り人」や「神々の気紛れ」と呼ばれている。また、後者の方が古い言い回しになる事を鬼火はアデルからの説明で知っていた。

 最初に出会ったこの世界の住人から古い言い回しを聞くことになって、鬼火は少し驚いている。


 その男は、図書館のような場所には似つかわしくない無骨なベルト付きのブーツを履いていた。底に金属の板でも仕込まれているのか、石の床でカツカツと鋭い音がする。

 その背中では灰色の長い三つ編みが揺れ、左耳の小さな石を金具で繋げた耳飾りが、鎖の様にも見える。


 奇妙な男だ、と鬼火は思った。


 身に付けている物だけを見れば、軍人か何かのように無骨で全くこの場には似合わないのに、仕草がそれを全て裏切っている。


 この男がアデルの言っていたNPCなら、ギルドまでの道を聞けばいいのか、と鬼火が考えている間に男はすぐ側まで近付いていた。


 男の台詞は独り言だったのか、返事を待たずふむと一つ頷く。


「やっぱりそうだ。なら、ギルドまで連れていきゃいいのか」


 これもまた独り言のようだった。


 まぁその前に自己紹介だな、こっちで座ろう、と声を掛けて男はどこかへ歩いていき、鬼火はそれについて行く。


 その先には、腰掛けるのに丁度良さそうな椅子と机があった。


「俺は巌城(いわしろ)(かなめ)。要って呼んでくれ。あんたの名前は?」


 鬼火の体には少し大きい椅子に座ったのを見て、男、要は声を掛けた。


「私は鬼火。よろしく」


 カタカナじゃなくて漢字の名前なのか、と思つつ、鬼火は返事を返す。

 椅子に座っていても二人の身長差は多少あり、目を合わせようとする鬼火と要は、それぞれ斜めを向いている。


「宜しく、鬼火。俺達があんたみたいな渡り人を見つけたら冒険者ギルドまで案内する事になってのは知ってるか?」


「ああ、それは知っている」


 子供に言い聞かせるように言う要。

 鬼火は、見た目に合わない口調で返事を返す。


「なら話は早いな。とはいえ、だ」


 要が席も立ち歩き出しながら言い、鬼火はそれについて行く。


 今からギルドに行くのか、どんな所だろう、と鬼火はわくわくしていて、いつもより目が輝いているようだ。

 もちろん、「ファンタジー=いかにもな雰囲気の冒険者ギルド」という図式が彼女の頭の中にあるという訳では無い。


「ただ単にギルドに連れていくだけは面白くないなぁ」


 俺には先に済ませないといけない用事もあることだし、と悪戯を思い付いた子供のようににやりと笑って続ける。


「なぁ、鬼火。冒険は好きか?」


「それなりに好きだが、何かあるのか?」


 鬼火が、くて、と子供らしく首を傾げた。


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