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2.ようこそ!

誤字報告ありがとうございます。

修正しました。

だんだんぼやけたピントがあっていくように、洋風な街並みの背景が浮かび上がる。その真ん中に


『The Dreams』にログインしますか?

   YES or NO


という文字が現れた。


 鬼火はいかにもファンタジーな背景に気を取られながら、YESを選択する。


 視界が真っ暗になる。そして次の瞬間には、先程までは無かった、何処かに立っている感覚が感じられた。

 もう始まっているのかと瞼を開いてみる。


 真っ白な壁。真っ白な床。なんの継ぎ目も無く、ただ無機質で箱の中のような部屋。窓は無いが不思議と明るい。


「ここは?」


 ファンタジーゲームによくあるような街並みを予想していた鬼火は、予想が外れて辺りをきょろきょろ見回す。

 そしてその背後に一人の女性が立っていることに気付いていない。


 彼女はこのゲームのチュートリアルで最初に出会う、サポートAI「アデル」。緩いウェーブがかかるブロンドの髪に琥珀色の瞳の美女だ。


 アデルは鬼火が自分に気付いていない事にやや戸惑いながらも、チュートリアルを開始すべく声を掛けた。


「『The Dreams』の世界へようこそ。鬼火さんですね?」


「うぉっと。ああ、はいそうです」


 後ろに居たのか。気が付かなかった、と女性にあるまじき声がした事はスルーして、鬼火は返事を返す。

 アデルもそれには動じず、では早速、と説明を始めた。


「ここはゲーム本編を始める前にプレイヤーとキャストが一度は訪れる場所です。キャラ設定とチュートリアルをここで行います。鬼火さんの場合は既に見た目は決まっていますね。こちらです」


 言葉と共に、薄い青色をした半透明な画面が一枚宙に現れた。一人のアバターのステータスや見た目が映し出されている。


 光を吸い込むような黒髪は、眉の辺りと顎の高さで真っ直ぐに切りそろえられているが、左側の一房のみ長い。それらよりも僅かに青みのある眼は、つり目気味だ。

 十歳程で、顔立ちが整っているためか、人形のような印象の少女。


「この姿は?」


 くて、と首を傾げて鬼火が疑問を零す。鬼火は自分がプレイするアバターは成人男性だと聞いていた。


「正真正銘、これは鬼火さんのアバターですよ。マスターから変更になったと連絡が来ました。使えるようにするので少し待って下さいね。それと目を閉じていて下さい」


 鬼火に返事を返したアデルは、浮かぶ板を何やら操作し始めた。鬼火は素直に目を閉じる。


「もういいですよ。目を開けてください」


 鬼火はパチリと目を開けた。

 鬼火の見た目は先程見たアバターへと変わっている。

 そして無表情のまま目の前に立っていたアデルを見上げる。

 鬼火が無表情なのは現実でも同じなのだが、アバターの見た目が良いだけあって、今はやはり人形が動いているようにしか見えない。


「違和感などはありませんか?」


 相変わらずにこにこしながら、アデルは問いかける。


「無いようだ。大丈夫」


 不思議そうに自分の体を見たり動かしたりしながら、鬼火は答えた。


「ではチュートリアルに移っていきますね。まずはメニューを開いてみて下さい」


 鬼火は、視界の隅にあるメニューを触るようにして選択した……。



 暫くして、鬼火は説明を聞き終える。視界の隅のメニューの上には、先程とは違いHPなどのバーが表示されている。

 たったそれだけの変化なのだが、鬼火の雰囲気は何かをやり切った時のドヤ顔をしている時と似ている。


 つまり、一通りの説明が終わったということだ。この程度でとか、ゲーマーレベルが低い鬼火にそんな事は言ってはいけない。


「ではゲームを始めましょう。ゲームが始まる場所は人それぞれ違います。そこで一人のNPCに出会うと思うので、その人に道を聞いてギルドへ向かって下さい」


 アデルの言葉に鬼火はこれでチュートリアルは終わりかと、こくりと頷いた。


「そこで冒険者登録と職業の設定をすることになりますからどんな職業なのか楽しみにしていて下さいね。キャストの仕事頑張って下さい。では、改めまして」


 コホンと咳払いをして切り換え、アデルは告げる。


「ようこそ! 『The Dreams』の世界へ!」


 そこで鬼火は光の粒子に包まれた。



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