15.訪問
説明がかなり割合を占めています。
それから現実時間で数日間、ゲーム内時間でその二倍。鬼火はログインしている間ずっと引きこもって練習を繰り返していた。
他にやる事が無いからというのが鬼火が主張する理由なのだが、単に水晶を作ったり変形させたりして何かを作るのにハマり、夢中でそれしかしていなかったというのが正しい。
キャストには進めるべきメインストーリーは無く、今の所やるべきクエスト等が無いのも鬼火の引きこもりに拍車をかけていた。
店舗の棚はこの引きこもりで色々と作られたお陰で半分ほど埋まっている。ただ、一つの種類ばかりを作るには鬼火の集中が続かなかったので、全てが一点物という奇妙な状態になっている。それぞれの商品の在庫が一個しかないとも言うが。
ふとゲーム内時間を確認すれば、イベント開始時間の二日前だった。現実時間での一日である。
流石に直前まで続けるのは不味かろうと、鬼火はしぶしぶ作業を止めて片付け始める。とはいえ、道具は使わなかったためほとんど片付ける物も無く、出来た物を綺麗に商品棚に並べておく程度だ。
コンコン
「すみません、鬼火さんはいらっしゃいますか?」
それはトヨの店で顔を合わせたリリアナの声だった。鬼火はドアを開けに向かう。
軋まないドアを静かに開けて少し視線を上げれば、やはりそこに居たのはリリアナだった。
「トヨさんに生産職だと聞いたので、ギルドなどの詳しい説明をしに来ました。今は大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。中へどうぞ」
鬼火はリリアナを迎え入れる。しかし、一階の店舗スペースには椅子が無い。そこで鬼火は早速練習の成果を発揮してみようと考えた。
つまり、水晶で椅子を作り出してみせたのである。即席のものでデザイン性は無いが、少しの間座るだけならばこれで事足りるだろう。
「それで何故生産職の方にはわざわざギルド職員が伺いに来るのかと言いますと・・・・・・」
鬼火が詠唱などをしていないせいで急に現れた様に見えるそれにも動揺せずに、リリアナは話を続ける。鬼火もそれを見て腰掛けた。
「実はギルドにはランクに加えてもう一つ、ギルドに登録した人々を区別する方法があるんです。それぞれ『生産ギルド』や『魔法ギルド』、『冒険ギルド』などと呼ばれていて、基本的にはその人の職業の特徴で分けられます、ここまでは大丈夫ですか?」
「わかり易いから大丈夫だ」
「なら良かった、続けますね。それでそれぞれのギルドは依頼ボードが分けられているんです。例えば生産ギルドなら主に製作依頼などが貼り出されています。これは目安の様なものなので、他のギルドの依頼を受ける事は可能ですよ?もちろんランクによる制限はありますけどね」
一息ついてまた続ける。
「そこで最初に戻りますが、つまり各ギルドの仕組みと鬼火さんのギルドが何処になったかのお知らせがまず一つ。そして、中々ギルドに来ない生産職の方の生存確認伺った、という事なんです。そしてこちらその通知書です」
再発行は幾らでも出来ますが念の為、大切に保管しておいて下さい、という言葉と共に差し出された一枚の紙。大人の手に収まる大き目な名刺程の大きさには、簡潔にギルドが発行した事と鬼火が生産ギルドになったのかが記されていた。
「説明はこれで終わりです。くれぐれも、くれぐれも鬼火さんは他の生産職の様に引きこもらないでくださいね。何かまた質問がありましたらギルドで気軽に聞いてください」
そう言ってリリアナは帰って行った。まだ他に用事があるらしく出ていく姿は忙しげだった。
とても懇願していたが、一体これまでにどんな人がいたのだろうか。
鬼火はメニューからクエスト欄を見てみた。クリア済の中に、クエスト『ギルド説明』という文字が増えていた。
ふむ、と頷いた鬼火は、今受け取ったばかりのクエスト報酬を仕舞った。そして水晶の椅子を消して、鬼火は今度こそログアウトした。




