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第6話

重要なキャラ出したかったんです…

セリフ多めにして読みやすくしました。

 バロック王国、首都バロック。

 無事王都に付いた俺たちは馬車で王城へ向かっている最中だ。


 先ほど街の入口では大騒ぎになったばかりだった。門番もまさか王族が徒歩で門を通過しようとしているなんて思いもしなかったのだろう。


 初めての王都は、まぁよくあるRPGゲームの西洋風。ちらほらと獣人やエルフなどの異種族も目に付く。非常に活気が溢れる街並みであった。



「せっかく温泉が掘り起こされたのに、温泉を売りにしている宿はないんだな」


「先代の王妃様が少し融通の聞かない人だったらしいです。今では一部の宿が温泉を利用できるようになっています」


「ふーん」



 金儲けの予感を感じながら話を流す。

 そうこうしてる間に王城へ付いた。無駄に豪華な門をくぐり入口に着くと、豪華な衣装を着飾った金髪のさわやかイケメンと、屈強な筋肉が鎧の上からでもわかる、がっちりした男が出迎えた。

 おそらく王族と騎士だろう。



「リンシア、予定通り戻ってこないから心配したんだ。一体何があったんだい?」


「魔物の群れに襲われました。間一髪のところで逃げきれた所存です。心配をお掛けして申し訳ございません、ミロードお兄様」



 王族家計の話は道中聞かされたが、このさわやかイケメンが第1王子のミロードか。



「それは本当かい?!……よく無事で帰ってきてくれたね。兵士たちが一緒にいないということは……そういうことか」



 ミロードは兵士たちがいないことに残念そうな顔をする。

 会話の間に何かを考えていたことを見逃さなかった。あの襲撃には何か裏があるのだろうか。



「衛兵達は英雄としてあとで(とむら)おう。それで、そちらの少年は誰だい?」


「こちらはクレイ。私達を魔物の群れから助けてくれました。クレイがいなければ私もメルもここには来れなかったでしょう」


「そうか、クレイ君、妹を救ってくれて本当にありがとう」



 その言葉からは少なからず安堵の感情を感じた。先ほどの間は俺の考えすぎだったのだろうか。



「いやいや、俺は通りかかっただけなんで」


「王族に対して無礼だぞ!!」



 いつものペースでミロードに返事をすると、ミロードの隣に立っていた騎士が俺に怒鳴り声を上げた。

 剣を抜く勢いだ。



「落ち着け、彼はリンシアを救ってくれた英雄だ。寛大な心で許そうじゃないか。

 それにクレイ君は……冒険者だろう? 雰囲気がそれだ。冒険者は相手に対して自分を強く見せるために敬語は使わない者も多い。それに彼は見たところ成人前だ。大目に見ようじゃないか」


 

 騎士はミロードの言葉を聞き入れ一歩下がった。

 きっとこの騎士がミロードの聖騎士なのだろうな。


 それに冒険者は敬語使わなくても許されるのか。あとで登録しよう。



「申し訳ありません。彼は育ちが悪いみたいで」



 すかさずリンシアの横に居た護衛メイドのメルがフォローを入れる。

 育ちは確かに悪いな。



「冒険者風情だったか。ミロード様がこう仰っているから今回は見逃そう。今度から敬語ぐらい学んでおけ」



 俺は何も答えず視線で相づちを打ったが騎士に睨まれた。



「長話しになってしまったね。まずは身体を休めなさい。彼は客間に案内しておくよ」


「はい、ミロードお兄様。ありがとうございます」



 ミロードはそう言って、周りに居たメイド達に合図を送る。



「こちらです」



 メイド達の内、1人のメイドが俺に一言いって歩き出す。

 ついてこいということか。


 俺はメイドの後を負いながら、リンシア達と別れた。

 それよりも、大浴場どこだ!

 ここに来た目的を心の中で叫んだ。







 客間に通された俺はソファーに座った。王城なだけあって豪華な作りであった。

 部屋の中には先ほど案内してくれたメイドが1人だけ。背筋はピンッとしていて透き通った青髪が綺麗な印象だ。彼女は無言で素早くティーセットから紅茶をいれて俺の前に差し出した。



「うむ、苦しゅうない」



 俺はメイドに対して王様気分で(ねぎら)いの言葉をかけ、ティーカップに口をつける。



毒草(どくそう)とトイレから汲んできた水で作りました、どうぞ」



「ブゥゥゥゥゥゥ!」



 口に含んでいた紅茶を盛大に吹き出した。今このメイドなんて言った?



「うげぇ、汚い……」



 そう言いながら俺の汚した床をてきぱきと掃除し始める。



「冗談です。まぁまぁ質のいい茶葉とまぁまぁ綺麗な水を使っております」


「バカヤロウ、毒草はいいとして、トイレって聞いて驚いただろう」


「えっ、毒草はいいんですか?……野生的な育てられ方をしたんですね」



 メイドは哀れみの目をこちらに向けてくる。



「まぁ野性的ではあったな」



 俺はそんなメイドにウンウンと頷いた。



「違う違う、俺一応客ね?」


「お客様でしたか。リンシア様が拾ってきた新しい子犬かと思ってました」


「酷い言われようだな……それに子犬に毒水(どくみず)あげちゃダメだろう」


「そこですか、ツッコむところは……」



 また呆れるようにこちらを見る。



「言いたいことは山ほどある。とりあえずその態度はなんだ!もう一度言うが俺は一応、客だからね?」


「すみません、私田舎者なので教育が行き届いていなくて……ありがとうございます。この御恩は一生わすれません」



 メイドはそう言いながら頭を下げる。



「もう許されていた気でいやがるのか」


「冗談です。これは私の村流、コミュニケーションです。初対面での心の距離を縮めます」



 にこやかにメイドは言った。



「お前、村では友達いなかったんだな可哀想に」



 そんなメイドを哀れみの目で見返す。



「逆に同情されてしまいました!?グゥゥ……やりますね」



 これはなんの勝負なんだろう。



「俺の村ではなんでも相手の優位に立つのが鉄則なんでな。それよりもその態度貸しにしておこう。メイドとしての仕事をサボっていたとリンシアにチクってもいいんだけどな」



 悪代官のような表情を作って言い放つ。

 この貸しを今すぐ大浴場への案内に使うための口実にするためだ。



「ま、まさか私の身体をお求めですか!?」


「どうしてそうなる、誰がお前のような駄メイドなんかに欲情するか」


「確かに私のナイスバディーで完璧なスタイルに欲情する気持ちはわかります」



 恥ずかしそうなフリをしてメイドはこちらを見る。

 ナイスバディーって……。



「いやいや、お前みたいな貧相な胸の女に欲情するわけがないだろう」


「失礼な、Gはあります」


「嘘だろ!?」



 この世界のサイズ基準は前世と同じアルファベットで(あらわ)されていた。

 そして俺はメイドの胸部に視線を当てた。



「……見た感じBもないだろう、まな板メイドが」



 呆れ顔半分、哀れみ半分の視線を送る。



「グッ……キャーオカサレルー」



 メイドも見栄を張っていたのが恥ずかしかったのか、棒読みなセリフを吐きながら扉の方へ逃げていく。



「待て、それよりも大浴場に――」


「なんか騒がしいみたいですけど、何かあったんですか?」




 大浴場に案内させようと立ち上がったタイミングで扉が開き、リンシアが現れた。



「リンシア様ぁ、この男にオカサレそうになりましたぁ」



 メイドはグズッと泣き真似をしながらリンシアに伝える。



「オカっ……えぇ!?」



 リンシアもそれを聞き目を見開く。



「いやいやいや、この駄メイドが人の話を聞かずに被害妄想してるだけだからね」



 めんどくさそうな態度で弁解を試みた。

 メイドはリンシアの後ろから、「ぐっしっしっし」と手を口にあてて笑っている。



「まぁ、クレイさんも男の子ですからね」



 なぜかリンシアが顔を赤らめてチラっとこちらを見る。

 モジモジするなよ。



「リンシア、人の話を聞こうか」



 呆れた表情でリンシアに問いかける。



「それにしても、クレイはその……未発達な女性の方が好みなんですね」


「えっ……」



 リンシアが顔を赤らめて発した言葉に対して、メイドが固まった表情を向ける。



「リンシア様も私のこと、まな板だと思っていたんですか!?」


「まな板って……そうは思っていないけど、ちょっと発育が遅いかなと思ってたわ」


「がーん……」


「ハハハハハ!!姫様公認のまな板メイドだったわけだ!これは笑わずにはいられない」



 笑いながらメイドに言った。こんなに笑ったのは久しぶりだったなーと感じながら。



「と、とりあえず話が進まないので、1度落ち着きましょう」



リンシアが俺の高笑いを遮り、場を収めたのだった。




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