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第47話

 洞窟の中は薄暗く、湿った空気が漂っていた。俺には【神の五感】があるので暗闇でも見えるのだが、リオンからすると何も見えないだろう。



「【発光(ライト)】っす」



 すると前を歩いていたリオンが魔法を使い始める。



「ほう無詠唱か」


「これくらい当然っす」



 リオンは胸を張り、得意げな顔をしている。

 1級とはいえ前衛職が無詠唱なのは関心である。



「ガルルゥ」



 そこから20歩ほど進むと先ほど森に出てきた魔物よりも一回り大きい狼型の魔物が現れた。



「討伐ランクDの《ルビーウルフ》っす。森の魔物とは格が違うっすね」



 そう言って好戦的に武器を構えるリオン。

 森に出てきた魔物と何が違うんだろうか。



「やるのか?」


「もちろん、援護頼むっすよ! 自己加速!」



 そう叫んでリオンは飛び出していく。

 リオンの武器は短刀の二刀流。

 騎士科のSクラスなだけあって、かなりの剣さばきである。



「やぁぁっす!」



 リオンの剣撃は危なげなく《ルビーウルフ》に傷を与えていく。

 素早い魔物への対処が的確だ。



「とどめっす!」



 首元を切り刻み《ルビーウルフ》の目から光がきえた。



「やるじゃないか、援護も必要なかっただろ」


「うへへ、有り合わせの剣じゃなかったらもっと強いんすよ!」



 魔物の死骸から討伐部位を回収して先に進む。

 しばらくすると2匹の魔物を発見したリオンが慌てた様子で俺に言う。



「クレイ君隠れるっす」



 リオンは壁の裏に移動した。

 俺はそれに従ってリオンの後を追う。



「《ダイアウルフ》っす。しかも2匹も」


「強いのか?」



 【ダイアウルフ】は先ほどの【ルビーウルフ】よりも一回り大きい。そして凶暴な目をして唸っていた。




「討伐ランクCの魔物っす。さっきの【ダイアウルフ】の素早さにあの大きさ、かなりのパワーっすよ」


「ほう」



 それを聞いた俺は立ち上がり前に出る。



「クレイ君、危ないっすよ! いくらクレイ君でも無傷じゃ倒せないっす! 【グレイブスワイバーン】までは万全の状態で行きた――」



 瞬時に《ダイアウルフ》の前へ移動し、速攻で放った【柔爽雷拳(じゅうそうらいけん)】により2匹とも絶命させる。



「これぐらいなら目をつぶっても勝てるだろう」



 俺が振り向くと、リオンは口をポカーンと開けて目を見開いている。



「あははぁ……Cランクの魔物を一撃っすか、しかも2匹も……クレイ君って私が思ってるよりも強いんすかね」


「さっさと先に行くぞ」


「ま、待ってほしいっす」



 それからは出てくる魔物は次々に倒していった。

 リオンが倒せそうな魔物は全て任せて、俺も援護をする。

 センスがいいのか、俺が援護をすればCランクの魔物も容易く短期討伐できるぐらいにはなっていた。



「いたっ」



 リオンが悲痛に叫ぶ。流石に1日以上寝ていない負担からか、リオンが魔物の攻撃を喰らってしまった。

 俺は魔物を片付け、リオンの元へ向かう。



「無理しすぎたっすかね、ミスしちゃったっす」



 舌をペロっと出して平気な振る舞いをしているが、傷は痛そうである。



「【ハイヒール】【疲労回復(タイアルド)】」



 毒性のものがないかを確認したし、回復魔法と疲労回復魔法をかける。



「ちょ、ちょっと待つっす、クレイ君回復魔法が使えるんすか!? しかも【ハイヒール】って3級魔法っすよ!?」



 リオンは先ほどよりも驚愕してすっとんきょうな声を上げる。



「これくらい常備しとかないと生きていけないだろ」


「どんな過酷な状況っすか! それに【疲労回復(タイアルド)】なんて初めて聞いたっす!」


「少しは楽になったか?」


「なんか身体が楽になったような……」


「あくまで応急処置的なものだ。明日には疲労がどっと来るがな」


「そんな効果聞いたことないっす。クレイ君って何者っすか?」


「何者とか言われてもな、ただの村人だ」


「ただの村人は魔物を一撃で倒したり回復魔法を使ったりはできないっ――」



 呆れながら述べるリオンの言葉を俺は途中で遮る。



「何か聞こえないか?」


「えっ、聞こえないっすよ?」



 耳を済ませると確かに人の声が聞こえる。それにこの気配は人ではない。しかもこちらに向かってきている。



「この奥に誰かいる。しかもこちらに向かってくる」


「本当っすか?」


「【範囲気配遮断(エリアシャドウ)】」



 俺はリオンと自分に魔法をかけて壁裏の影に隠れることにした。

 しばらく待っていると奥から3人の男が現れた。ただ人間ではなかった。

 頭からは角が生えていて、角から魔力が漏れ出ている。

 あれはおそらく魔族だろう。



「ベーグル様、これで我が国の力が増しますね」


「そうだな、あと残りの輝石も集めなくてはな」


「我々魔族が世界を支配する日も近いですね」


「早合点するな、サタンとベルゼブブがまだ完全ではない。まずは王国と帝国が争っている隙に法国を潰す作を提示しよう。そこに次なる輝石(きせき)が眠っている」



 何やら不穏な会話をしている魔族たちを俺はじっと見つめる。

 そしてベーグルと呼ばれていた魔族は金色に輝く玉を持っている。

 それはボーリング玉ぐらいの大きで、輝石(きせき)というやつなのだろう。

 それにサタンという言葉も聞こえてきたのが気になる。



「扉を開け、我が国に戻るぞ」


「待つのです」



 するともうひとつの声が聞こえる。

 声の主は長い髪の女性で、背中に妖精のような羽が生えていた。

 まさか精霊だろうか。


 その精霊は全身傷だらけで今にも倒れそうなほどフラフラであった。



「まだ生きてたか、皆殺しにしたはずだがな」


「その輝石(きせき)を返しなさい。あなた達は世界をめちゃくちゃに……するつもりですか!」


「心外だな、支配だ。我々魔族が勝つための布石だぞ?」


「あなた達はそこまでして他種族を滅ぼしたいのですか」


「当たり前だろう。魔族のみがこの世界にふさわしい」


「そんなことをは許しません」


「そうか、無駄話はすんだか? おい、やれ」



 ベーグルは口元を緩めながら精霊を見下し、部下に命令した。

 部下はそれを聞き、即座に魔法を詠唱し始める。



「じゃあ死んでもらいますね」



 顔をニコニコさせながら部下の男が魔法を放つ。闇属性3級魔法【ドレイン】。確か相手の生命力を奪う魔法である。



「うっ……ぐっ……」



 精霊は抵抗する力も残っていないのか、なすすべなく悲痛な叫びをあげる

 これは助けないとあの精霊は死ぬ。



「待つっす」



 俺が立ち上がろうとしたら、先にリオンが出て声を上げた。

 なぜ不意打ちをしないんだこいつは。



「あぁ? 貴様らは誰だ?」


「通りすがりの学生だな」



 俺は即座にリオンの後から前に出る。

 そして1級魔法である【ファイアボール】を放った。もちろん試験の時に使った威力増し増しのやつである。



「のわっあぶねぇ」



 【ドレイン】を放っていた男は寸前で躱す。【ファイアボール】は壁に激突し爆発した。



「リオン、俺があいつらをなんとかすから、あの精霊を頼めるか?」


「わ、わかったっす。でも大丈夫っすか?」


「なんとかなるだろ」



 俺は小声でリオンに指示を出し、魔族を見た。



――――――――

《ベーグル・カリーヤ・マンティス》


Aスキル

【極・魔力量】


Bスキル

【上・魔力制御】【上・剣技】


Cスキル

【威圧】【闇魔法】


加護

【信徒の加護】

――――――――

《ギル・ボーヤ》


Cスキル

【闇魔法】【魔力制御】


加護

【信徒の加護】

――――――――

《ザス・ミーヤ》


Cスキル

【光魔法】【地魔法】


加護

【信徒の加護】

――――――――



「魔族もなかなかやるようだな、ただの木偶の坊に見えたのだが」


「おい、調子に――」



 ベーグルが部下を手で静止させ言葉をやめさせた。そして手に持っている輝石を部下に預ける。




「貴様はわかっていないようだな、人生経験が浅いガキの出る幕ではないんだ。消えてくれないか?」


「消えるのはお前だな。あとその輝石(きせき)とやらも置いていけ」


「状況がわかっていないようだな……」



 ベーグルは失笑した。そして魔力が一気に膨れ上がり、目に見えてどす黒いオーラが身体から漏れ出す。



「遊んでやろうと思ったが、貴様は即あの世行きだ。生意気な自分に後悔しろ」



 そう言ってベーグルの手から黒い魔力の玉が放たれる。俺はそれを躱そうとすると目の前で弾けた。

 そして身体全体に重りが乗っかったような感覚が襲う。



「【グラビティーボール】を喰らうのは初めてか?」



 弾けた場所から半径3メートルほどの円状に掛かる重力。普段よりも何倍いや何十倍の重力が伸し掛る。



「それで、それだけか?」



 平然な顔で立っている俺にベーグルは驚愕した。だがすぐ笑顔になる。



「そこそこ出来るようだな、だがっ」



 ベーグルは魔力をさらに活性化させ剣を構え出す。

 そして瞬時に地面を蹴り、俺に向かって跳んできた。



「これで終わりだ」


「あくびが出そうだぞ」


「なっ――」



 ベーグルはまたも驚愕する。

 そして気づいた時には意識は刈り取られていた。


 【掌底破】。全身ボロボロにするつもりで放ったのだが意識を狩るぐらいだったか。

 気絶したベーグルはしばらく宙を舞い、地面に叩きつけられた。


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