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第39話

前の話のエミルのセリフに統一性がなかったので少し直して、統一性させました。

 自宅である屋敷に戻る頃には日も落ちて、すっかり暗くなっていた。



「ん?」



 すると門の前に見た事のある馬車が止まっている。

 王族の紋章が大々的に目立っているその馬車はリンシアのものであった。

 ちょうど到着したばかりようで馬車からメル、リンシア、そしてリルが降りてきた。



「クレイ、ちょうどいいところに帰ってきましたね」



 いち早く俺を発見したリンシアが笑顔で言った。メルは後ろの方で俺を見るなりソワソワし始める。



「みんな揃ってどうしたんだ? 金目の物はうちにはないぞ」


「知ってます。爆弾で吹っ飛ばしに来ました」


「それはやめてくれ」



 すまし顔で言ったリルに対して冷静にツッコミをいれる。



「どんな様子か見に来たんですが、思ったよりも綺麗な屋敷なんですね」



 そんなコントを流すようにリンシアは屋敷を見て喜んで言った。

 やはりリンシアは屋敷の惨状を確認していないようだ。これは後で叱る必要があるな……兄として。



「掃除したからな、とりあえず……もう帰るところか?」


「今来たばかりですよ!?」



 帰ることを勧める俺に対してリンシアは目を見開いた。そしてしょんぼりした顔になっていく。



「一応上がってくか? 何も無いけど」



 そんな顔を見てると悪いことをした気分になったので、冗談をやめて提案することにした。

 すると――



「おかえりなさい、ご主人様」



 屋敷の方から声がした、エミルである。



「「え?」」


「クレイ様、ついに(いた)してしまいましたか……衛兵さんこっちです!」


「まてこらっ!」



 目を見開いて驚いているメルとリンシア。

 驚きながらも冷静にふざけているリルの首根っこを掴む。



「この人達は敵ですか? ご主人様」


「敵じゃないし、いつからそんな好戦的になったんだ。それにそのご主人様はどこから出てきたんだ、やめろ」


「本に書いてあったの……」



 しょぼくれるエミル。

 そういえば家事が出来るようにと教養の本をいくつか置いたんだっけ。



「クレイ、それよりもどういうことなんですか! この子、例のエルフの子供ですよね?」


「……とりあえず落ち着け。全て説明するからまずみんな中に入ろうか」



 俺はリンシア達を落ち着かせて、屋敷の中へ誘導した。

 即興で用意した机と椅子に座らせ、リンシア達にエミルのこと、商会のことなど、今日の経緯について説明していく。

 エミルは俺がハーフエルフについて話すことに抵抗があったようだったが、「大丈夫だ」と宥めた。



「なるほど、この子はハーフエルフでしたか」


「それにしてもクレイ殿は優しいんだな」



 納得した様子でリンシアは首を縦に振った。そしてにこやかな表情を向けるメル。

 ただ自分の利益に繋がるという理由に過ぎないのだが、なるほど優しいと言われるか。


 それに3人にはハーフエルフだということを毛嫌いしている様子はないようだった。



「商会の方も動き出したし、ちょうどよかったんだ。エミルは優秀だから秘書として育てようと思ってな。それに――この屋敷の管理を1人でしろというのは(ひど)()ぎやしないか?」



 俺は周りを見渡し、リンシアに向けて言った。



「うっ……確かにそうですね。こんなに広いとは思いませんでした」



 リンシアは戸惑っているようだ。俺はチャンスだと思い追撃をすることにした。



「リンシアよ、購入する際に屋敷は確認したのか?」


「……してません」


「あのなぁ、物件を買う時はしっかり確認しないとダメだぞ。来た時は扉は壊れるし、幽霊屋敷かってほど古くて酷い有様だったんだからな」


「そうなんですか? でもこんなに綺麗な――」


「それは俺が魔法で綺麗にしたんだよ」



 俺の言葉にリンシア、メル、リル、そしてエミルまでも驚いている。



「クレイは本当になんでもありなんですね……」



 リンシアは呆れ半分の表情を俺に向けて言う。

 いくら俺でもなんでもは出来ない。知識にあったことを組み合わせただけだ。



「話しはわかりました。エミルちゃんは小さいので大丈夫だとは思いますがその……」



 言いにくそうにするリンシアが何を言おうとしているかなんとなくわかった。間違いは犯すなということだろう。



「クレイ様はワイセツの(かたまり)なので、我慢できるか……」


「お前の中で俺はどんなイメージなんだよ、それに俺は子供には興味はない」


「私一応15歳よ」


「「「「えっ?(まじで?)」」」」



 エミルの言葉に一同が驚く。見た目は8歳ぐらいの少女は実は15歳……ってことは歳上なのか?

 いや、俺は前世では18歳だったので精神的には32歳ということだから歳下、つまりセーフだろう。って何がセーフなのか。


 頭の中で自分にツッコミを入れながらエミルに目を向けた。



「エルフは長寿と聞きますし、歳を取るのも遅いということなんですね」



 リンシアは関心して言った。話を逸らしてくれてありがたい。



「15歳ということは、合法的に……」



 リルが何やら小声で呟いている。

 話を戻すなよ。



「とりあえずそんなことはないから安心して欲しいんだが、メルとリンシアについては明日、例の特訓をしたいと思う」


 俺は話しを逸らそつつ、リンシアの3つ目の頼みごとである特訓を提案した。

 それを聞き、リンシアとメルの表情が真剣なものになる。



「わかりました」

「わかった」



「だから明日に備えて今日はもう帰って休め。それと……リル、お前に頼みがあるんだが」


「クレイ様が頼み? 明日は隕石祭りですか?」


「どんな祭りだよ、でも少し楽しそうだな……

 じゃなくて、俺がメルとリンシアを鍛えている間、エミルにメイドとしての技、作法、心得を教えて欲しい。大丈夫か?」



 俺は確認の意味でリンシアの方にも目線を向けた。リルはリンシアのメイドだからだ。



「リルがよければ構わないですよ」


「私も、別にいいですが……」


「頼む、先輩だろ?」


「わかりました、メイドとしての技を全て教えましょう」



 先輩という響きがよかったのか、リルは即答してくれた。

 ちょろいやつだな。



「エミルもそれでいいな?」


「ご主人様の為ならば頑張るわ」



 エミルは両手を握りガッツポーズをして意気込む。



「よし、それじゃあ明日の朝頼むぞ」



 こうして話が終わり俺達は解散した。

 だが帰る際にリンシアが「くれぐれも間違いはないようにお願いしますね」と釘を指してきた。


 リンシア達が帰った後、時間も空いたので俺はエミルに魔法を教えることにした。



「エミル、お前は1度見たものを完璧に覚えれるだろ?」


「……覚えれる……わ」



 エミルの口調はぎこちない。【完全記憶】に対してなにか嫌な出来事があったのだろうか。



「俺もだ。1度見たものは二度と忘れない」


「そうなの?」


「あぁ、この才能はあまり使える者はいない、だからお前も特別なんだ、胸を張れ」


「わかったわ」



 エミルは表情を崩し、口元が緩む。そして胸部を突き出すように前に出す。

 そういうことじゃない。



「まずは属性チェックだ、風属性以外で使えるものを確認する」



 俺は手を差し出し、エミルに手を置かせた。そして順番に魔力を練って貰う。



「風、水、光、無属性は使えるようだな。無属性が使えるなら……」



 俺は【転写(てんしゃ)】そして【複写(ふくしゃ)】の魔法を発動させた。



「試しにこれを覚えてもらう、まずは【複写】だ」


「わかったわ」



 エミルは地図が書かれた紙と真っ白な紙に【複写】の魔法を放つ。

 紙にはうっすらと同じ地図が写し出されているが、はっきり表示されていない。



「失敗だな」



 その言葉を聞き、エミルは落ち込んでいる。



「発動が出来ているようだからあとは――」



 俺はエミルの手を握り【複写】の魔法を放つ。

 魔法の値である256桁の数字は【魔法改変】のスキルを持っている俺でしか見ることも変えることも出来ないらしい。だけど完成した魔法が発動する感覚を伝えることは出来る。

 エミルにはその感覚を覚えてもらうのだ。



「やってみろ」



 すかさずエミルが魔法を発動する。【複写】が成功した。

 続いて【転写】にも挑戦するが、同じ方法でなんなく成功する。

 【転写】の場合は、【複写】で写したのではなく【完全記憶】で覚えた地図を【転写】させたのである。



「いい感じだな」



 俺は面白くなって次々にオリジナル魔法を教えていく。使えそうな魔法は一通り。

 エミルはさすが【完全記憶】を持っているだけあって、すぐにものにしていく。

 だが発動が困難な魔法もあった。

 わかったことはおそらくスキルである【魔法制御】があることによって、ある程度簡単な魔法なら覚えてすぐ使えるが、難しい魔法に関しては何度か挑戦して感覚を掴む必要があるということだ。

 覚える事と、実際に出来る事が違うという典型的な例である。



「素晴らしい才能だ」


「ご主人様の役に立てる?」


「あぁ、立てるどころではないな」



 俺は無意識にエミルの頭に手を置いていた。



「ご主人様の手、暖かい」


「……さっきの3人の手も十分暖かいぞ」



 口元を緩めて言った。



「さて次は戦闘魔法も少し覚えておこう。護身のためにな」



 エミルに使えそうな戦闘魔法も教えていく。屋敷の中なのでほどほどにだが。 

 風属性に関しては才能があるだけあってすぐに覚えていく。

 元々適正がなかった、火や土のような魔法は不得意なようで感覚を教えても何回か失敗してしまう。

 1級魔法であれば発動出来るが、それより上は根気と努力が必要なようだ。

 そして次元属性魔法については全く使えなかった。



「ご主人様ってなんでも出来るのね、凄い」


「知識にあることだけならな」



 感嘆するエミルを俺は宥める。

 優先するものを一通り覚えさせた辺りで、もう遅いので寝ようということになった。

 風呂はまだ使えないので生活魔法である【クリーン】を使い、身体を綺麗にして寝室へ向かう。



「ここがお前の部屋だ」


「ご主人様と一緒に寝られないの?」


「流石に別の部屋で寝る」


「寂しい……」


「我慢してくれ」



 グズるエミルをなんとか宥めて寝室へ送る。そして俺も自分のベッドに入り眠りについた。

 エミルには前からあった家具を魔法で修繕した豪華なベッドを使わせた。俺は自分の魔法で使った即興ベッドである。


 寝室で寝ていると、俺が寝ている部屋に寄ってくる気配があったので目を覚ました。気配の正体はエミルである。


 そーっと俺の部屋に入るのを、半目を開けて確認すると自分の枕を持っていた。

 俺は(おもむろ)に起き上がる。



「ひっ……」



 いきなり起き上がったことにエミルは驚き声をあげた。



「あのなぁ」


「ごめんなさい……でも今日だけお願い。1人じゃ寝れなくて……怖いの」



 落ち込むエミルを見て、追い返すのもめんどくさいし、まぁいいかと思った。

 俺は即興で作ったベッドを広く作り直した。

 キングサイズぐらいの大きさだ。



「一緒のベッドでは寝てやるがくっついてくるなよ」


「わかったわ」



 気配が間近にあると俺が寝れなくなる。

 スラム街育ちの副作用のようなものだな。


 同じベッドだが、しぶしぶ少し離れたところにエミルは入った。

 それでも安心したようで、すぐに眠りについた。


 しばらくして、俺も眠りについたのだった。

 そいうえばご主人様呼びについて改めて言及するの忘れていたな。まぁいいか、悪い気分でもないし。

ご愛読、ブックマーク等ありがとうございます。

更新の励みとなっております。

必ず完結させるので応援よろしくお願いします!

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