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第22話

 俺は天使の笑顔(殺気)笑顔(殺気)で返した。

 お互いの殺気のぶつけ合いは異様な空気を生み、この場に静けさを生む。

 しばらく睨み合っていると、天使はゆっくりと前に進み出す。

 【マテリアルドラゴンの呪い】が消えていない以上、不利な条件は変わらない。

 そして魔力もすっからかんなうえにダメージも相当負っている。


 加えて相手は魔力が桁外れな得体の知れない天使。むしろこいつがマテリアルドラゴンの本体なのだろうか。

 この天使を倒さなきゃ呪い解けないみたいな展開なら本当に勘弁して欲しいものだ。


 俺が使える手札は少ない。気力を使う【剛拳(ごうけん)】と自己強化魔法である【自己加速・風】ぐらいだ。

 「限界を超える!」みたいな展開は実際にはありえないというのは理解しているつもりだ。

 神を信じたことはないが、神がいたら1回ぶん殴ってやりたい状況である。

 俺が思考を回転させていると、前に進んできた天使が口を開いた。



「お主は面白いなぁ」



 (めぐ)らせていた考察(こうさつ)を1度破棄して、落ち着いて対応することにした。

 会話する意思があるなら穏便(おんびん)に済ませられそうだ。



「試してみるか?」



 いかんいかん。挑発してしまった。

 穏便に済ませるのが正解とわかっていても、心のどこかでこの天使と戦いたいと思っているからだろうか。

 それに会話が始まっても緩めようとしない殺気のせいもあるのだろうか。



「フフフ、やはり面白いな。この状況で挑発か。それにあの強さ――お主は12神の使徒か?」



 ようやく放っていた殺気を解いた天使は意味不明なことを聞いてくる。

 12神の使徒?加護持ち?



「何の話をしている。それよりもここで1戦やるのか?」


「12神の使徒ではないのか?」



 挑発を質問で返してきやがった。そんなに大事かその確認。



「なんのことかわからんがそんなものは知らんな」


「ほぉ~、なのにマテリアルドラゴンを葬る強さか、あっぱれじゃ。じゃが――」



そう言った天使が1度目をつぶる。



「身の程をわきまえろ」



 目を開けると先程より濃厚な殺気を放ってくる。

 殺気の凄まじさに大気や木々が揺れる。

 マテリアルドラゴンがその殺気だけで倒せるレベルだぞ。



「身の程はわきまえるのはお前だろ?」



 俺も殺気を放つが、今のレベルでは到底この天使に及ばない。



「やはり面白い。この殺気を耐えたうえに、殺気を放つ度胸があるとはな」


「度胸も何も戦えば俺が勝つからな」



 頭の中で戦闘が始まったときのシュミレーションを数百パターン同時に考えていく。

 どのパターンも詰みすぎてて笑えてくる。



「お主はどの神の加護を受けたのじゃ?」


「さっきから12神の使徒だったり加護だったり、全く意味がわからないんだが」



 俺は天使の質問に知ったかぶりをすることもできたが、正直に何も知らないことを明かすことにした。



「ムムっ。お主は5歳の頃に受ける信徒(しんと)()をやっていないのか?」



 また新しい単語が出てくる。使徒の儀……初耳だ。



「そもそも信徒の義がわからない。5歳のときにやるものなのか?」


「この世界では5歳になったら神から加護を貰える儀式を行うのが普通じゃろ。そこで新たな加護をもらい、使える魔法の上限が無くなるのじゃ」



 天使は和やかな笑顔を向けてくる。

 5歳だとスラム街であるジルムンクにいた頃だ。そんな儀式受けたこともない。

 それに聞き捨てならない言葉が出てきたぞ。使える魔法の上限を無くすだと?



「儀式は受けてない。ろくなところで育ってきていないもんでな」


「そうなのか――この世界では教養にもなっていたはずなのじゃがなぁ……」


「気になる点が2つ、まず魔法の上限を無くすとはどういうことだ?」



 "使える魔法の上限を無くす"これが可能であるなら、今の俺の手数は一気に増やす事ができる。

 なぜなら俺はどの属性も5級魔法までしか使えないからだ。

 存在自体は知っていたが、条件を改めて追求しようとは考えていなかった。



「言葉の通りじゃ。この世界に(せい)を受けた段階ですべての魔法が使えるようになるわけではないのじゃ。信徒の儀を受け、神の加護を得て初めて魔法が全て使えるようになる。ただそれだけじゃ」


「つまり受けていない俺は半人前ということか?」


「半人前というには(いささ)か強すぎるとは思うが……そうじゃな」



 話しながらも俺に歩み寄り、からかうように天使は言った。

 俺はそれに対して少しずつ距離を開けながら淡々と次の質問をする。



「2つ目なんだが、12神の使徒とはなんだ?」


「それは言えんのじゃ。お主が信徒の儀を受けてからでないと話せん。儀式の内容次第でも話せんが」



 なるほど、つまりは儀式を受ければ色々わかるってことか。



「もう14歳になったのだが、儀式を受けれるのか?」


「儀式は5歳を超えればいつでも受けれる」



 なら急ぐこともないか。

 リンシアに儀式について聞いて、暇な時にでも受けてみるか。

 魔法の上限解放が魅力的だ。その条件が儀式にあったとは。



「それよりもお主は半人前でその強さ、さらに度胸もあり、意外に男前じゃな」



 一瞬で距離をつめてきた天使は、年下をからかうような表情で俺に顔を近ずけてくる。

 ほのかに人間味のある甘い匂いが鼻をくすぐった。



「まぁな」



 俺は笑顔で答えた。



「フフフ――自分の実力、そして面に自信があるのじゃな、ますます気に入ったのじゃ」


「お主は12神の使徒の可能性もあるからの、次に再会出来るようにお主に妾から加護をやろう」


「いや、別にいらない」



 なんか恩を売られているような気がしたので即座に断る。

 それに再会は別に望んでいない。



「そういうでない、ツンデレの割合は7:3が好みじゃよ」



 何を言っているのかさっぱりわからない。



「妾はアリエル。お主の名は?」


「……クレイだ」



 返答に迷った挙句、答えることにした。

 正直に答えておかないと後々めんどくさそうだ。



「クレイ、お主に加護をやろう」


「いや、だからいらないって」



 俺が断ったことをなかったことにして強引に話を進めようとしてきた。

 少し抵抗を試みるが、身体が動かなかった。金縛りとかきたねぇ。

 

 アリエルが俺に手をかざすと、俺の身体は光出し始めた。

 光はすぐに収まると、身体の傷や【マテリアルドラゴンの呪い】をふくめた状態異常が全て治っていた。

 それ以外は何も変わらない。何か加護を受けたのだろうか。



「あとこれは餞別(せんべつ)じゃ」



 アリエルは耳元で囁くと、俺の頬に唇を軽く触れさせた。



「お主は人間だが、妾のタイプじゃ」



 ケラケラと、からかいを交えながらアリエルは笑った。

 若干頬が赤く染まっているのは気のせいだろうか。


 そして自分は人間じゃないみたいな言い方だが、羽も生えてるし人間ではないか。



「じゃあまたの」



 そしてアリエルは光とともに消えていった。


 アリエルがいなくなったあと、緑が生い茂った高原が広がっていた。


 先程の戦闘がなかったかのような、のどかな高原。

 そして俺はふと思う。

 あれっ、ここからどうやって帰るんだ?

面白い、続きが見たいと思った方はブックマークよろしくお願いします!

必ず完結させるので応援よろしくお願いします!


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