表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/209

第21話

 ――時は戻り現在――


 心臓の鼓動がこんなにも大きく聞こえるのは始めてだ。

 目の前の《マテリアルドラゴン》は殺気を放って威嚇をし続けている。

 一向に動く気配がないので、こちらから仕掛けて見るか。


 俺は魔法を発動して自身の強化をしていく。だけど無属性魔法が使えないので普通の自己強化魔法は使えない。


 だから、火、水、風、地属性の魔法効果を改良して同じような効果を得ているのだ。

 【自己加速・風】【魔法防御強化・水】【物理防御強化・地】【思考力上昇・風地】

 そして自身の《気力》を全身に巡らせる。

 状態異常であった【麻痺】、【魔力低下】、【鈍足】が時間とともに消えていくのがわかった。

 長期の睨み合いにより、辺りの静けさすら感じる状況を俺は破った。



「【剛拳(ごうけん)】」



 一瞬でマテリアルドラゴンの正面に移動して、気力をありったけ込めた拳で顔面を思いっきりぶん殴る。

 込めた気力の分だけ破壊力が増す【剛拳(ごうけん)】。

 体長7メートルもあるドラゴンはその衝撃で数メートル吹き飛ばされる。



「ぐっ……」



 俺は口から吐血した。

 どんな攻撃でも物理攻撃であるなら衝撃は自らにも返ってくる。

 全身ダメージを追っているせいで、普段なら耐えれる衝撃が身体に染みる。



「だがこの痛みに慣れたな」



 1度知った知識を完全のものとして再現する。

 それは痛みに対しても有効である。 

 それが天才と言われていた所以の一つでもあるからだ。


 俺は瞬時に吹き飛んだマテリアルドラゴンの元へ移動し剛拳を連打した。



「グルワァァアアアアア!」



 連打しているとマテリアルドラゴンが叫びだし、魔法陣を展開させる。

 おそらく物理攻撃を防ぐシールドだろう。



「関係ない。叩き割る!」



 シールドをあえて剛拳で殴る。

 拳が触れた瞬間シールドは粉々に破壊された。

 だが連打の動きはそこで止まってしまう。



「グルワァ!」



 その隙をマテリアルドラゴンが鉤爪で攻撃してくる。

 俺も【シールド・水】を発動して防ぐが、シールドごと遠くへ吹き飛ばされる。



「やはり付け焼刃のシールドじゃ防ぎきれないか」



 俺は立ち上がると、大気の魔力が集まっているのがわかった。



「その変の魔物と違って頭が使えるようだな」



 マテリアルドラゴンは距離をかなりとって口に魔力を込めていた。

 おそらく先ほどのブレスだろう。

 再びあれを喰らったら耐えれるかわからない。


 俺は自身の魔力を右手に集め練り合わせていく。 

 数秒経つと、魔力の気配が消える。

 あのときのように飲み込んだのだろう。

 先程のを見て知ったが、あいつは次元属性魔法の【転移(てんい)】が使える。

 だったら――


 その直後、後ろからマテリアルドラゴンの気配が現れる。

 そして先程のと同じブレスを放った。



<――――――――――――――!>



 高音が当たりに響きわたった。

 そして俺は貯めた魔力をブレスに向けて放つ。



<――――――――――――――!>



 俺はマテリアルドラゴンのブレスと全く同じブレスを放った。

 1度見た魔法なら再現することが出来る。

 それがどんなに屈辱な事かこいつはわかっていないようだ。

 ブレス同士が激突して相殺された。



「グルワァァアアアアア!!」



 マテリアルドラゴンは雄叫びを上げた。

 慌てているのだろうか、怒っているのだろうか。心境はわからないが、どっちでもいい。

 そのスキを付いて俺は一瞬で正面に移動する。



「【柔拳(じゅうけん)】」



 身体の内部に攻撃をする【柔拳(じゅうけん)】を放つ。

 先程の剛拳の連打を喰らったらにも関わらず、ダメージが通っているように感じなかった。

 硬い皮膚に覆われているため、普通の物理攻撃は効かないと判断した。



「グルワァァアアアアア……!」



 効いているのか、剛拳のときよりも悲痛な雄叫びを上げだし、魔力を宿した鈎爪で攻撃してきた。

 寸前で躱すが、その魔力は形を変えて斬撃となり俺を襲う。


 斬撃は肌を掠めるが、マテリアルドラゴンはそのスキに魔法を展開する。

 マテリアルドラゴンの正面にはいくつも魔法陣が展開され、そこから先端を尖らせた氷の柱が数百本は飛んでくる。



<――――――――――!>



 俺は氷の柱を高速で(さば)いていく。

 弾き、いなし、氷の柱同士をぶつけて数を減らしていく。

 こんな正面からの攻撃は俺の反射神経前では無意味。

 メルのクナイは後ろから飛んでくるのがやっかいだったな、と頭の(すみ)で考えていた。

 全てを捌き終わると、間髪入れずに次の魔法を発動させていた。


 辺りに雲が発生し、巨大な雷がビームのように落ちてくる。

 それを(かわ)すと、次々に落ちてきて、俺を狙う。



「攻撃させる隙を与えないつもりか」



 そして極めつけには火属性のブレスで周囲を焼き払ってきた。

 こちらも瞬時に魔法を発動させる。

 水の壁を発生させる【アクアウォール】だ。



(らち)があかない」



 最初の【魔力低下】によるせいか、魔力が切れかけている。

 身体のダメージも癒えていない状態で長期戦はかなり分が悪い。


 するとマテリアルドラゴンは空を飛び始める。

 自慢のブレスも無効化され、魔法も(さば)かれている状況で空へ飛ぶ行為。

 時間稼ぎしてじっくり嬲っていくつもりのようだ。伝説のドラゴンのクセにきたねぇ奴だな。


 だけど俺はこれを好機と判断した。

 相手が攻めあぐねているということを意味しているからだ。



「まずは飛ぶのをやめろトカゲ野郎!」



 空中へ飛び、マテリアルドラゴンとの距離を一瞬で詰めた。

 そして羽に取っておきの技、【爆掌(ばくしょう)】を打ち込む。


 気力と魔力を内部に入れて爆散させる技。

 柔拳のように内部ダメージを与えるだけ出なく、爆散させることで物理的なダメージを内部にも与える。



「グルワァァアアアアア……!」



 マテリアルドラゴンの羽は破裂してボロボロになった。

 そしてすかさず空を蹴り、真上から【剛拳(ごうけん)】で地面に叩きつける。



「とどめだ」



 俺は落下しながら、ありったけの魔力と気力を拳に集めていく。

 それを放とうとした直後、マテリアルドラゴンは【転移(てんい)】を使うのがわかった。



「やると思ったよ」



 同じ場所に転移した俺を見てマテリアルドラゴンは驚いているように思えた。

 魔法の再現と改良。

 俺がしたのはマテリアルドラゴンの【転移(てんい)】を再現した。

 だが呪いによって発動が出来ないので、マテリアルドラゴンの魔法に割り込み、【転移】の範囲に俺を入れて発動してもらったということだ。



「じゃあな」



 俺は渾身の力で【絶拳(ぜっけん)】を放つ。

 魔力と気力を極限まで練り合わせた【絶拳(ぜっけん)】は対大型魔物用に独自に開発したオリジナルである。

 対象は一体と限定的だが、内部を破壊する【柔拳(じゅうけん)】と外部を破壊する【剛拳(ごうけん)】を合わせたもの。

 単純に合わせただけではなく、【柔拳(じゅうけん)】での内部を破壊したエネルギーがそのまま【剛拳(ごうけん)】のエネルギーに乗っかるのだ。

 つまり相手の体積が大きいほど、内部破壊が起こるので絶大な物理ダメージも与える。

 俺が今の状態で放てる1番火力の強い技である。



「グルワァァアアアアア!!」



 マテリアルドラゴン絶叫し、辺りに生えていた木々を倒しながら止まることなく吹き飛んでいく。


 そして遠くの壁に激突して止まった。

 壁はアテリアルドラゴンを中心に、半径20メートルほど円形に大きくへこんでいる。

 硬い皮膚で覆われているはずの腹には大きな風穴が空いていた。

 目に光を失ったマテリアルドラゴンはその場で絶命しているのがわかる。



「流石にキツいな」



 俺は口元を緩ませながらマテリアルドラゴンの元へ向かった。

 【絶拳(ぜっけん)】での反動は【剛拳(ごうけん)】の比ではない。

 全開状態であれば耐えれはするが、ダメージを追っている状態では正直キツい。

 そして今は魔力もほとんど0に近いのだ。



「魔石ってどうやって取るんだ?」



 マテリアルドラゴンの死体はそのまま残っている。どうやって魔石を回収するの聞くのを忘れていた。

 というかてっきり、光とともに消滅して魔石を落ちる、みたいな感じだと勝手に思っていた。

 ていうか身体がだるい。



「あぁ、そういえば」



 俺はアイテムボックスからヴァンから貰ったマナポーションを出そうとした。

 マナポーションで魔力を回復すればこのだるさも治るだろう。

 だけどアイテムボックスが発動しなかった。


 頭の中状態異常を浮かべると【マテリアルドラゴンの呪い】がまだ残っている。



「倒したら解除されるっていうオチでは無かったらしい」



 そう思った直後だった。

 マテリアルドラゴンの亡骸が光り始めた。


 光は球体に代わり、そして人型に変わる。


 その人型の光は次第に姿を現していく。

 そいつは天使のような羽が左右3枚ずつ生えていて、白と金をイメージした煌びやかな衣装。

 この世のものとは思えないぐらい顔が整っている女性がこちらを笑顔で見つめている。

 美しい外見とは裏腹にその笑顔は『絶望』と例えるのが一番しっくりくる。

 今まで体験したことのない凄まじい殺気を放っていて、そのせいか煌びやかなブロンドの髪の毛が妖艶に揺れていた。


 しかも先程のマテリアルドラゴンよりも10倍以上の魔力を放っていたというオマケ付きである。

 今こいつと戦ったら勝てるかわかんないんですけど。



「ククッ」



 だけど俺はここでも笑うのだった。

面白い、続きが見たいと思った方はブックマークよろしくお願いします!

必ず完結させるので応援よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=242295207&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ