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第205話

遅れてすみません……

 王国の首都より北東の方角には名家3公爵、シュナイダー家が管理するシュナイダー領がある。


 そこよりもさらに東――ジルムンク領からであれば北部に進んだ先にあるのは、マルクスやエルドの家であるカンニバル伯爵家の領地だ。

 横に長いその領地には3つの街があり、侯爵未満で都市規模の街を3つ以上管理できるのはカンニバル家のみなので、伯爵の中でも優秀な家柄なのだ。


 俺はオーガストと共にその領地の末端、ちょうどシュナイダー領との境にある商業街に足を運んでいた。


 人口1万人と小規模ではあるが、石造りの路面はしっかり整備されていて、レンガの建物が区画ごとに綺麗に並んでいる。

 まるで大都市の一角を切り抜いたような情景で、昼間であれば人々が賑わい活気の溢れる街並みを想像させるほどだ。


 しかしながら今は深夜であり、月光に照らされた街には人の姿はほとんどない。

 ちらほらと魔石による照明が窓から盛れている家が数軒あるぐらいである。


 俺は3階建ての宿屋の屋根上という見晴らしのいい場所から【千里眼】を発動させてある場所を見つめていた。

 それはこの商業街の中核にあたる武器庫である。


 兜こそ付けていないものの、鉄のプレートに身を固めた衛兵が4人も入口を守るように配置していた。



「確かに見張りが厳重だな。深夜ということを差し引いても4人は多いぞ」


「あれっ、おいらが入ったときよりも増えてますね。前は2人でした」



 俺の問いかけに、後ろで待機していたオーガストが疑問符を浮かべるように首を傾げる。



「前回、お前が痕跡を残したとも考えにくいな」



 教会の子供たちの中で最年長のひとりであるオーガストは人の認識や注意を他に逸らす力――ミスディレクションの才能があった。


 使っていたはずの食器がいつの間に片付けられていたり、話している最中に姿が消えていたりと、教会にいた頃からその才能の片鱗は見えていたという。


 陽気で人懐っこい性格であるため決して存在感がないわけでもない。

 オーガストは純粋に人の視線や注視しているものを見定めて対応する力があるのだ。


 付け加えるなら運動神経もいい。特に武器を持たない武術はAランクのスキルを持っている。


 俺は商売の要ともなる情報収集にその才能を活かすため、工作員としてオーガストに教育を施すことにしたのだ。


 俺には他者の成長を促す加護、【アリエルの加護(愛の返報)】がある。

 そのおかげでオーガストは目覚しいほどの速さで成長し、【気配遮断(シャドウ)】のような基礎魔法の取得だけではなく【存在遮断(バニッシュ)】や【認識阻害(オブストラクション)】などの隠密上級魔法10種まで使いこなせるようになっていた。


 今や様々な都市に支店を構えていて数多くの従業員を抱えるラバール商会だが、その中でも1番優秀な情報収集能力を持つほどに成長したのだ。



「そんなヘマはしてないはずなんですけど……」



 故にオーガストが何らかのミスをして守備が固められたとは考えにくい。

 他に理由があるとするなら、向こう側で何か新しい動きがあったことが推測できる。例えば、奴隷商への出荷が今日行われる――などである。


 下手をしたら今日中に全ての痕跡が消されていたかもしれない。



「急がないと手遅れになるかもな。捕らえられている者は魔族を含めると12人でいいんだな?」


「そうですね。男が5人、女が7人です。いずれも成人していそうでしたが、20歳には満たなそうな人たちでした」


「魔族の方は?」


「見た目はふたりとも綺麗で超可愛かったです。赤髪の子は胸もすごくありました」


「聞いてねーよ? 他に告げるべき情報があるだろ」


「魔族の基準はわかりませんが、おいら達と同じぐらいの年齢だと思います。目立たない感じの衣服でしたが、振る舞いや容姿は貴族っぽかったですね。ちなみにおいらは顔はもうひとりの方が好きですが、総合的に赤髪の子の方が好みでした」


「……そうか」


「ボスはあまり気にしないんでしたっけ。おいらは大きければ大きい方がいいですけどね。特大は大を兼ねるんです」


「お前の好みはわかったよ」



 真面目なトーンで言い放つオーガストを適当にあしらう。


 この世界で婚約をする平均年齢は貴族は18歳と若い。ただ平民の婚約は20から30歳の間がほとんどで、場合によっては生涯添い遂げない者までいるぐらいなのだ。

 故に成人して間もないオーガストにもまだ決まった相手はいない。

 だからこそ、そういった色事には興味があるのだろう。


 ちなみに俺は大小よりも、身長やサイズ、パーツなどそれぞれのバランスが重要だと思っている。あくまでも外見でのみの話だが。



「全員逃すのは厳しいですか?」


「問題ないだろ。皇国のセントラル商会に保護してもらうことになってる」


「さすがです、ボス!」



 オーガストは嬉しげな表情で言う。



「黒幕がわかるまでは王国に置いておくのは危険だからな」


「やっぱりカンニバル家がやったんですかね?」


「闇ギルドが関わっているなら、そうとも考えにくい。あいつらは侯爵以上の依頼しか受けないからな。ただ無関係とは言えないだろう」



 現当主のカンニバル伯爵が黒幕に協力しているか、もしくは利用されているかだろう。その子息であるマルクスがこのことを知っているとも思えない。



「魔族はできればラバールで保護したいんだが……どこの国の者かにもよるな」



 貴族の可能性があるのであれば無碍に扱うことは許されない。国によっては戦争の火種にもなりかねないからだ。


 最悪の場合は実力行使もありえる。ただなんとなくだが、話せばわかってくれるような人物像がイメージできた。



「そろそろ行くぞ」



 2時間毎の見張りが交代するタイミングがくる。俺は【気配遮断(シャドウ)】と【認識阻害(オブストラクション)】を発動させた。

 作戦などは特になく、正面からどうどうと侵入するためである。



「いつ見ても見事な隠蔽ですねぇ」


「世辞はいい。それよりも【アンチストーン】の位置が動いているかもしれないから効果範囲には気をつけろよ」


「あっ、はい!」



 遅れてオーガストも隠蔽魔法を発動させる。やはり見事な隠蔽能力だ。夜闇に紛れた彼の姿は大抵の者には視認することができないだろう。

 俺たちは足音ひとつ立てずに武器庫の入口へと向かった。



――



『ここを進めば5つの通路に繋がる広場があります。右から2番目の通路の奥が捕らわれている場所です』



 オーガストは声を発さず、口の動きで俺に伝える。

 見張りの交代時間を見計らい侵入に成功した俺たちは大人4、5人が通れる広さの薄暗い通路を歩いていた。


 所々、通路を隔てて部屋がいくつもあり、何かしらの武器が無数に収容されている。武器商の中核でもあり、珍しい武器も収容されていた。


 そして、人も少ない。

 巡回している衛兵がいると思いこんでいたが、入口からここまで人っ子一人いないのだ。


 深夜であり、出入口が少ないということからそこまで人を配備していないのだろう。



『――まて』



 そんなことを考えていた矢先、なんとも不穏な気配を感じた俺は前を歩くオーガストの肩を掴む。


 あと少しで通路に続く広場があるのだが、そこには既に先客がいるようだ。



『待機』



 俺はオーガストにジェスチャーで伝えて前に出る。

 ゆっくりと広場の方を覗き込むとふたりの男が会話をしていた。


 豪奢な服を着用した男と明らかに衛兵の類ではない盗賊の風貌をした男。


 ひとりは貴族で間違いないだろう。

 しかし、もうひとりは異様な空気を放っていた。


 ツンケンした髪、バンダナで片目を覆っていて肩から鎖帷子をじゃらじゃらと垂れ流している。

 胡座をかいて椅子に悠々ともたれかかってる。仕草の一つ一つの態度が大きい。


 小型のナイフの柄ではなく刃先の部分を指で摘み、そのまま空中に放っては再び刃先をキャッチ――そんな動作を繰り返していた。


 それだけ見れば異常者そのものだが、その男からは普通の盗賊とは思えないほどの強力な気力、闘気を感じる。


 憶測ではあるが、実力は王都のギルドマスターであるガロウと同等ぐらいかもしれない。



「なぁ、よぉ。あの魔族は本当に処刑しちまうのかぁ?」


「私はそう聞いている」



 盗賊の質問に貴族は淡々と答える。言葉使いから対等の間柄なのかもしれない。



「もったいねぇ、もったいねぇよぉ。王族選抜なんていうくだらない催しのために、貴重な実験材料を処分しちゃうんだからなぁおい」


「魔族への憎悪が大きい今だからこそ効果があるんだよ。貴族どころか一般国民からの支持も入るようになるだろう。まぁ、シュナイダー殿には他に狙いがありそうにも見えたがな」



 それを聞いて、盗賊は不服そうな顔をする。

 貴族は宥めるように続けた。



「いいじゃないか。死体はお前たちの好きにしていいという契約だろう」


「死体じゃできることが限られるんだーよぉ。わかんねーかなぁ?」



 盗賊は突然、空中で回していたナイフを人差し指で弾く。



「っ!!」



 飛ばされたナイフは凄まじい速度で瞬く間に貴族の喉元へと飛んでいき――やがてピタッ、と空中で制止した。まるで時間が止まったかのような止まり方である。

 目の前に現れたナイフを見て貴族は固まり、ゴクリと唾を飲み込む。そんな姿を見て盗賊はニヤリと口元を緩めた。



「契約は契約だからな。ただし、違反したらお前ら皆殺しだからな? 俺たちからすれば貴族の肩書きには意味を成さない」



 そう言って濃厚な殺気を盗賊が放つと貴族は無言で頷いた。

 先程まで同じ立場で話していた様子は見るかげもない。完全に格差があるようだ。



 ――カラッ……。



 背後から小石が転がる音が微かに聞こえた。



『――っ!!』



 しまったという様子でオーガストが目を見開いている。どうやら盗賊の殺気に充てられて、一歩引いたことにより起きてしまったようだ。



「んん……?」



 そばにいる俺ですら曖昧で僅かに聞こえた音――にも関わらず、盗賊は目線を俺たちのいる通路へと動かしていた。殺気のオマケ付きである。



「どうした?」


「……よっと」



 貴族の問いかけには答えず、盗賊は無言でナイフを投げ放った。

 ナイフは通路に差し掛かったところで、カクっと直角に曲がり、俺の胸元目掛けて飛んでくる。

 柄の部分からキラリと光が反射する。細い糸のようだ。



 ――なるほど、魔法糸か。




 そう判断した俺はオーガストを庇うように躱す。


 腕は悪くない、ただ速さもない。

 すると突然、先程のようにナイフが制止――したかと思えば、カクカクと直角に曲がり、壁と床の間を何度も往復していく。まるで何かを探しているような動きである。


 俺は1歩ずつ音を立てずに冷静に躱していくと、糸の限界に達したのか、やがて通ってきたルートを正確になぞってナイフは戻っていった。



「はぁん?」



 怪訝そうな声を漏らし盗賊はこちらへと歩き出す。

 そして、俺たちのいた通路を覗き込むみ、眉間に皺を寄せた。無い空間を睨みつけている。



「なんだなんだ、何かいたのか?」



 貴族も歩み寄ってきた。



「物音がしたんだがなぁ」


「ネズミとかじゃないのか? 食料を運んでいるせいで、最近出始めたんだよ」


「ネズミねぇ……まぁいいか」



 盗賊は興味を無くしたかのような反応を示し、通路をそのまま歩き出す。後を追う形で貴族も並ぶ。



「これから帝国へ行くのか?」


「あぁ、ヘマした馬鹿の尻拭いだよ。まぁ、ドリームポーションはもう完成してんだけどな」


「本当か!? 汎用性は高いのか?」


「それについては、ここで話すことじゃねぇ」


「そ、そうだな」



 盗賊たちはそんなことを話しながら、俺たちが隠れている部屋を素通りしていく。

 そのまま出入口に繋がる通路をゆっくりと進んでいったのだった。



『申し訳ないです、ボス!』



 ふたりの男が見えなくなってから、オーガストが勢いよく頭を下げた。



『気にする必要はない。逆に、あの殺気の第二波をよく耐えたな』


『咄嗟にボスが殺気を遮ってくれたじゃないですか。その一瞬で立て直せました』


『いや、いい反応だったぞ』



 俺は感心の意を込めて伝えると、オーガストは嬉しそうに後頭部を摩る。


 あの盗賊に限っては、控えめに言っても王国騎士団長やSランク冒険者ぐらいの実力を持っているだろう。


 戦闘のみの実力ならばBランク冒険者相当であるオーガストにはどう足掻いても太刀打ちできるわけもなく、そんな男が放つ殺気もまた凄まじいものに感じていたはずなのだ。


 あの瞬間、逃げるという選択をしても誰も咎めたりしないだろう。しかし、オーガストは意志をしっかり持ち、自分ができる最前のその場に留まるという選択したのだ。


 もしあの場で逃げていたら、即バレていただろう。



「あいつが闇ギルドの一員ですかね」


「十中八九な。幹部クラス、もしくはまとめ役、リーダーの立ち位置かもしれない」


「あいつがリーダーなら納得ですよ」



 もしバレていたとしても戦闘になっていただろう。

 だがそれは今の状況では避けたいところであった。


 繋がっている貴族との裏をまだ取れていないし、何より国王選抜に影響が出てくる可能性があるからだ。



「色々情報も得られたしな……でかしたぞ」


「ありがとうございます!」



 俺の言葉にオーガストは嬉しそうに笑う。歳はひとつしか離れていないが、なんともいえない後輩のような雰囲気に俺も心地よさを感じるのだった。



――



 オーガストの案内に沿って通路を進んでいくと、捕まっている者たちがいる倉庫に着いた。


 もちろん入口に見張りをしていた者はいたのだが、軽い手刀で後頭部を打ち付けて意識を刈り取り、速やかに倉庫内へと入ったのだ。


 そこは300坪はありそうな巨大な倉庫であった。

 鉄と石でしっかりと固められた壁と高い天井。踏み台に乗ってようやく手が届くであろう金属製の棚が迷路のように並べられていて、鎧や剣、魔石などがずらりと陳列していた。


 そんな倉庫の一番奥の壁まで進み、棚を曲がるとその場所にたどり着く。


 人がひとり入れる大きさの鉄格子の檻。それが見世物小屋のように並んでいる。

 そのいずれも中には人が入っており、数は報告通り12人。まだ中の埋まっていない檻も無数にある。


 俺は【認識阻害(オブストラクション)】を解除することにした。



「もう解除していいぞ」


「了解です」


「思いのほか、大人しいんだな」



 意外にも辺りは静寂に包まれていて、会話をしたり、ましてや抵抗して暴れたりしている者もいなかった。


 よく見ればひとりひとり目が据わっている。

 設置された【アンチストーン】のせいで魔法が使えないだけでなく、何か薬を盛られていて抵抗力を失っているように思えた。


 そんな中、一際目立つ存在がふたつ――俺と同い年ぐらいの女性たちの視線がこちらへと動く。


 健康的な褐色の肌。烈火のような赤い髪がふわりと動く。それと同じぐらい燃えるような紅の瞳で憤りをぶつけるように睨みつけてくる。


 もうひとりはミルクのような白い肌とミルキーベージュの髪の少女だ。小柄で、大きな目には力がない。褐色肌の女性とは異なり、憂いを帯びていた。


 目立つ理由はその端正な容姿だけではない。

 前頭部の左右から生えている角のせいである。明らかに人間ではないそれは、1度目にしたことのある魔族を示すものであった。



「妾たちにあの薬は効かぬぞ」



 そして、褐色肌の女性が開口一番で言い放つ。

 思った通りで、薬を盛られていたらしい。それに少し息が荒く、衰弱気味のようであった。


 俺はオーガストと目を合わせた。

 どうやら俺たちをここへ誘拐した一味の仲間だと思っているらしい。



生憎(あいにく)と俺は――」


「妾のことはどうとでも扱ってくれていい。ただ、向こうの――彼女だけは逃がしてくれぬか?」



 説明をしようとした矢先、褐色肌の女性は感情をぶつけるように懇願をする。

 オーガストの報告通りで、言葉の節々に気品を感じる。貴族か、それに準ずる地位の魔族なのだろう。



「その必要はない。そもそも俺は――」


「いいえ、私が役目を果たします。何でもします。だからお願いです、ひ――彼女を逃がしてください」



 すると次にベージュ髪の少女が悲愴の感情を口から零す。

 思い詰めた瞳は真剣で、彼女を逃がすためなら本気で全てを捧げてもいいと思えるほどの決意を感じる。



「話を聞け、俺は――」


「おいらは赤髪の子がいいです! ボス!」


「……」


「いてっ」



 とりあえずオーガストの額をデコピンで小突く。

 話の展開がややこしくなりそうだったからである。



「不埒な思考、やはり男は皆そうなのだな」



 案の定、誤解されていた。

 何故だか俺に侮蔑の眼差しが向けられる。


 ただ救いなのが、『人間』ではなく『男』と言ったことだ。少なからず人族に憎悪を向けているわけではないらしい。


 仲間を庇おうとする行動といい、思ったよりも良い奴なのかもしれない。



「やるなら私をやってください!」



 そしてもう1人の魔族からも道徳的思考が感じられる。というよりも、主君に向けての忠誠心のようなものかもしれない。振る舞いから、おそらく褐色肌の女性の侍女だと推測した。



「その娘では満足できんよ。妾の方が良かろう?」



 そう言って、彼女は体のラインを強調するように腰をくねらせ、わざとらしくその豊満な胸元を強調する。

 どうやらよからぬ方向に話が進んでいるようだ。



「ただし……だ。代わりに、妾の頼みを聞いてくれぬか」


「……頼み?」



 否定するよりも先に褐色肌の女性が提案をして手招きをする。


 直感ではあるが、その『頼み』に惹かれるものを感じた。

 恐らく何かある。そう考え、手招きされるがままに1歩ずつ近寄っていく。


 どうでもいい話だが、彼女はリンシアレベルの【魅了】を持っているようだ。



「今日の出来事を忘れぬようにして欲しい」


「忘れるな、ということか?」



 問答は続く。オーガストがなんとも言えない視線を俺たちに向けている。



「妾をお主だけの女にして欲しいということだ」


「……」



 手の届く距離にまで側に寄る。

 すると彼女は檻の隙間から細い腕を出す。

 そのまま俺の頬に向かって伸びていく。



「うむ。だから、お主は妾以外の者を忘れて欲しいのだ。()()を妾に預けてくれぬか?」


「それは断る」



 俺はそう言って頬に伸びかけた彼女の手を叩いた。


 その瞬間――ビリリっと電撃が体中を駆け巡ったような感覚に苛まれる。


 この感覚には覚えがあった。

 俺と同じ結論に至ったであろう彼女も目を見開らいてこちらを見据えている。



「お主、まさか……使徒なのか?」

ご愛読、ブックマーク等ありがとうございます。

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