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第19話

 王都を出て2時間ほど歩くと、ダンジョンの入口に着いた。

 入口付近には小屋が用意されていて、そこにはギルド職員が何人か配置されていた。

 ダンジョンに入る前にここで申請するらしい。死亡した場合のために備えてらしい


 そして小屋に入って話を聞くとダンジョンに一般人が入るには冒険者ランクE以上が必要という事実を聞かされた。

 だが依頼や騎士、貴族などの身分が高いものの付き添いならなら大丈夫とのことなので、ヴァンが申請してくれた。


 申請を済ませた俺達はダンジョンに入る。

 ダンジョン内は薄暗く、洞窟のように奥に繋がっていた。

 壁の所々に遺跡のような作りの壁があり、松明が所々に設置されていて、大気は魔力に満ちていた。



「ダンジョンってここ以外にもあるのか?」



 俺はあたりを眺めながら、前に進もうとしているヴァンに素朴な疑問を投げかける。



「ダンジョンはここ以外にも5つ発見されていて、ここは赤のダンジョンと呼ばれてるんだぜ」


「あと5つもあるのか」


「おう、あとダンジョンの特徴としては魔物は無限に沸くって事と、その魔物は魔石しか落とさないってところだな」



 なるほど、魔石は日用品などにも使われていてかなりの需要がある。冒険者などはここで魔石を集めて売っているのか。



「素材は集められないわけだな?」


「そういうことだ」


「この奥に転移石が使える場所があるのか?」



 転移石は決められた場所でしか使えないとヴァンから聞いていた。



「そうだ、だから今からそこに向かう。ここから一直線に進んだ広場で転移石を使う場所がある」



 ヴァンは何度かダンジョンには来たことがあるらしく、詳しかった。

 俺は説明に納得しつつ足を進めた。



「何層まであるんだ?」


「ん~わかんないけど、50層までは攻略されてて、地図とかも売ってるな」


「まだ奥があるということか?」


「わかんねーけど、それ以上奥には道がないそうだぜ」 



 ダンジョンの存在意義ってなんだろうと考えながら足を進める。

 しばらくすると広間のようなところに到着する。巨大な円がかいてあり、真ん中は薄い光の柱がたっていた。



「ここで転移石を使うんだぜ」


「一応聞くが、何か作戦はあるのか?」


「《アースドラゴン》は動きは遅いし、飛べない。地属性魔法を使ってくる。そして――」



 俺はヴァンから《アースドラゴン》の特徴を聞いていく。

 地上ではかなり早く動けるらしい。

 ジャンプで空中を蹴ることも出来て、地属性ブレスは受けると鈍足などの状態異常にかかる。

 冒険者ギルドで定められた魔物ランクはB。ちなみにオークジェネラルはB++らしい。



「――とまぁこんな感じだ。作戦は特にないけど、俺にはこれがあるから大丈夫だ」



 説明を終えたヴァンが腰にさげている剣を見せて言った。

 脳筋スタイルすぎだろうと思ったが、話を聞く限りゴリ押しでも大丈夫だな。

 それよりもヴァンが腰にさげている剣が気になる。確か12本しかない神器とか言ってたな。



「その神器とやらはどんな剣なんだ?」


「これは神剣(しんけん)アレス。神が作った武器で神器(じんぎ)と言われているんだ。前にも説明した通り世界に12個ある神器のうちの1つだな!」


「全く魔力を感じないんだが?」



 王都で説明された時から思っていたが、ヴァンの剣からは全く魔力を感じないのだ。

 強そうには思えない。



「神器は選ばれた者にしか使えない。神剣(しんけん)アレスはクロード家の先代が手に入れたもので、先祖様以外だと俺しか使えなかったらしい」



 ヴァンはそう言って剣の柄を握った。

 その直後剣から凄まじい魔力が流れているのがわかった。

 大気の魔力すらも剣に引き寄せられているのがわかる。



「なるほど」



 選ばれた者にしか使えない。だからヴァンは貴重な神器を所持していたわけか。



「なら前衛は頼むぞ」


 俺は笑顔でヴァンに言った。

 神器とやらの力をゆっくり後衛で観察したかったからだ。



「おう、任せとけって!」



 そう言ってヴァンは懐から転移石を2つ取り出し、ひとつを俺に渡した。

 どうやら転移石は1人1つらしい。



「じゃあ行くぜ!」


「あぁ」



 転移石に魔力を流し始めたのか、石から光が漏れ出す。

 その光は俺達を包み込んだ。



<パキッ>



 俺の視界にヒビが入ったように感じた。


 光が収まると、先程の広間と同じような開けた場所につく。さっきの部屋とは壁の模様や作りは違う。

 正面にはいかにも「この中にボスがいます」という大きい扉があった。



「光に包まれた瞬間視界にヒビが入ったが――あれ?」



 ヴァンに声をかけようとするとヴァンの気配がないことに気づく。

 広間を見渡すと俺以外見当たらなかった。

 俺はヴァンがミスして渡す転移石を間違えたのだと判断した。



「帰り方しらねー」



 こんなことなら帰り方聞いとくべきだった。

 そして後ろを向くと上の層に繋がっていると思われる道が存在した。


 俺は考えた。


 前に進めばおそらくボス、後ろはおそらく帰り道。

 不測の事態なのでここは引き返すのが正解である――普通なら。



「……」



 俺は口元を緩ませて無言で前に進み出す。

 『不測の事態』、『ボス』、この非日常感がたまらなく楽しかったからだ。


 扉に触れるとビリビリと電撃が流れる。扉が入ることを拒絶するかのように。

 それでも俺は扉を押し出した。すると扉は光り、ゆっくりと開く。


 俺はそのまま光の中に入った。


 扉の中は明るく、木々や緑がたくさんある。

 青い空が広がっており、のどかな高原のような感じになっている。

 ここが本当にダンジョン内なのかと疑問に思うほどだ。


 前に足を進めると扉が閉まった。



「逃がさないというわけか」



 閉まった扉をみて俺は笑った。いい演出だ。

 最初から逃げるつもりはない。


 俺はしばらく奥に進むがのどかな高原なのに生き物の存在を感じなかった――




「グルワァァァアアアア!!!」



 そう思った直後上空に魔力を感じ、高原全体に響くような魔物のような雄叫びが聞こえる。

 雄叫びの方向を見ると、遠くの空からドラゴンがこちらに向かって飛んできている。



「《アースドラゴン》ではないようだな」



 《アースドラゴン》は飛ばないとヴァンが言っていたのを思い出す。

 見た目は黒いドラゴン。大きさは7メートルぐらいか。額には赤、青、緑、黄色とそれぞれ色が違う4つの丸い宝石がひし型に並んでいた。



「どこかでみたことあるか……?」



 昔本で読んだ神話のドラゴンにこんなやつがいたような気がする。

 確か名前は《マテリアルドラゴン》。

 火、水、地、風の4属性の完全耐性、物理攻撃が通らない硬くて黒い皮膚。

 最凶にして最恐のS級ドラゴン。


 そしてそのドラゴンの特徴が――


 すると《マテリアルドラゴン》はこちらに向かいながら口に魔力を貯め始めた。

 魔力は螺旋を描くような球体になっていく。それのせいか周りの空間が微妙に(ゆが)んでいる。

 魔力量からしてあれはまずい。



「あれを喰らったら流石にキツいな」



 火、水、風、地、4属性が重なり合い混じりあうブレスが《マテリアルドラゴン》の特徴だ。

 喰らったものは蒸発すると本に書いてあった。


 球体に貯まる魔力が止まった。

 ブレスを使うのだろうと俺は思ったが、ドラゴンはその球を1度飲み込んだ。



「はっ?」



 一瞬で空間を歪めていたほどの魔力が感じなくなった。

 その直後だった。


 遠くの空にいたドラゴンの気配が消えた。

 そして――



<――――――――――――――!!>



 真後ろから耳を(つんざ)くような凄まじい高音が鳴り出す。

 目の前にいたはずのドラゴンが真後ろから攻撃してきのだ。



 避ける余裕がない俺はブレスに直撃した。

 凄まじい轟音(ごうおん)とともに視界が光に包まれていった――――









――――どれくらい吹き飛ばされただろう。


 朦朧(もうろう)とする意識の中で状況を把握しようとする。

 全身は焼け焦げ、血だらけになっている。

 俺は手を正面に出し、立っていた。


 避けることを諦めた俺は一瞬の判断で自身の強化魔法と【魔法障壁(まほうしょうへき)】を発動させたのだ。


 頭の中に何かが響く。

 【麻痺】【火傷】【魔力低下】【鈍足】【マテリアルドラゴンの呪い】


 今までこんなことが起こったことはなかった。

 だけどこれは俺の状態異常を示しているのだと瞬時にわかった。


 【マテリアルドラゴンの呪い】これは火、水、風、地属性魔法以外全て使えなくする状態異常であることもなぜか瞬時に理解出来た。


 4属性の完全耐性をもつ《マテリアルドラゴン》に対しては好都合の呪いだ。

 それに光属性が使えないと回復も使えない。

 そして俺先程のブレスで傷だらけ。


 絶体絶命の状況であった――




「ククッ」




 俺は意図しない間に笑っていた。

 あぁそうか――




「この状況がたまらなく楽しいんだ」




 前世から今世かけて、何でもできてしまう俺にはピンチというものが存在しなかった。



 退屈は人を殺すと言うが、まさにその通りだったようだ。



 苦戦をしない者は成長しない。失敗を経験しないと変われない。



 俺は今まで死んでるように生きているだけだった。



 このピンチを切り抜けたとき、俺は初めて成長するような気がする。



 楽しい。



 楽しいぞ!




 俺は笑いながら《マテリアルドラゴン》に渾身の殺気を放った。


 追撃しようとしていた《マテリアルドラゴン》は俺の殺気を受けて一瞬たじろいだ。

 そして凄まじい殺気を返してくる。



「開戦だ」



 ドラゴンの殺気を受けながら俺は笑顔で言い放った。

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