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第1話

一話です!頑張ります!

「おらぁ、やっちまえ!」



 とあるスラム街で、野太い男の声が響いた。

 そこには数百人の武器を持った、ならず者の男達が一人の男を囲んでいた。

 男達は臨戦態勢でいつでも男に飛びかかる準備が出来ている。



「今日こそクレイを沈められるっ!」



 集団のリーダー格がそんな言葉を漏らした。

 囲まれている男の名前はクレイ。銀髪碧眼が特徴的でスラム街ではかなり有名な男だ。



「ククッ」



クレイはならず者達に向かって苦笑する。

 その態度が気に入らなかったのか、一人の男がクレイに殴りかかった。

 拳は一直線にクレイの顔面を目指し、当たる寸言で対象を見失う。



「遅すぎないか?」



 そして<ゴォォン>と凄まじい音と共に男が大衆へと吹き飛んでいく。吹き飛ばされた男の首は既に折れて絶命していた。

 クレイは血塗れの拳をはらい、男達を鋭い目で睨み、笑いかけた。



「俺を殺したい気持ちはわかる。が、数が足りないんじゃないか?」



 男達はクレイの殺気に当てられて後ずさるが、もう遅かった。

 その瞬間クレイの身体が光を帯びた。魔法を使ったのだ。

 使う魔法は【自己加速】、その光とともにクレイの姿は消えた。



 すると次々に男達は吹き飛び肉片へと変わっていく。

 魔法では基本の身体強化魔法である【自己加速】なのだが、クレイの【自己加速】は普通じゃない。どんなに魔法が得意な戦士でもこの境地に立つことは出来ないだろう。一種の頂きにも近い【自己加速】であった。


 数秒後、クレイは大柄なリーダー格の目の前に現れた。辺りには先程まで威勢のよかった男達の肉片が散らばっている。



「(ばかな…こんな情報なかったぞ…!)」



 大柄なリーダー格もバカではない。事前にクレイの情報を調べて男達を集めていた。

 クレイはスラム街では禁忌とされている触れてはいけない存在。


 それは何故か。

 強すぎるからである。


 このスラム街では強きものはなんでも奪う事が出来て、弱きものはただ奪われるのみの世界。

 弱肉強食という言葉をそのまま当てはめたような街。そして、元王都でもある。


 好き勝手に暴れるためにはクレイの存在が邪魔なのだ。倒せば名も上げられる。



「次は10倍は用意しとけよ。」



 クレイはそう言って、リーダー格の男を殴り飛ばす。リーダー格の男は首だけが吹き飛び、残った体はゆっくりと倒れる。


 クレイは退屈そうに空を見上げて、晩飯は何を食べようか考えていた。







 ここはバロック王国の領土の端にある街、ジルムンク。かつて王都だったこの街も100年前の敗戦によりスラム街になっている。

 王族や貴族は逃げ伸びて、別の街を王都として発展させている。つまりジルムンクは絞りカス。

 そして、高い税金から逃げるための避難街でもあると聞いている。


 そんな好き放題の街で育った俺の名前はクレイ。年齢は14歳になったばかりだ。

 こんな俺が1人で生き抜いてきた理由は2つ。

 


 1つ目の理由は前世の記憶を持っていたからである。


 俺の前世での名前は一ノ瀬帝(いちのせみかど)。18歳の高校生だった。神に愛された男、天才、神童と呼ばれていた俺の目には世界がゆっくり進んでいてるように見えていた。


 1度見たものを完璧に覚えることが出来た。そして1度見た事は完璧以上に再現することが出来た。

 動体視力が高すぎて、集中すればなんでもスローに見える。そして投げたボールは寸分狂わず全く同じ場所に飛んでいくし、例えば球技でバスケをしたならば、どこから打ってもシュートを外すことはないのだ。



 退屈していた俺には16歳の妹がいた。名前は一ノ瀬沙奈(いちのせさな)

 そして俺はその妹を愛していた。


 そんな愛した妹を救うために俺は死んでしまった。



 そして次に目を覚ました時、俺は赤ん坊でスラム街に捨てられていた。

 幸か不幸か、ゲインという男に拾われたらしい俺は彼から生きる術を学んだ。

 ゲインに拾われたことが生き残れたもう1つの理由である。


 ゲインは俺を利用できると思ったのか、相方として育てるべく戦闘技術を俺に与えた。

 元々前世ではすべての格闘技をマスターしていた俺は直ぐに覚え、応用まで出来るようになった。

 

 さらに前世では覚えれなかった人を殺すための技術、そして魔法を()()で学んだ。

 ゲインはそんな俺を利用した。

 俺もゲインを利用していた。


 拾われてから8年がたったある日、ゲインは姿を消した。置き手紙もなしに。


 俺は探そうともしなかった。なぜならお互い生きるために利用しあっていた存在。ゲインにとって俺を必要なくなったのと同時に俺もまたゲインを必要としていなかったからである。


 その日から2年が立ち、俺は14歳。

 退屈なこの街を出ようと意気込んでいる。



「山賊王に、俺はなる!!」



 頭に浮かんだ1度言いたかったセリフを叫びながら、俺はジルムンクを出たのだった。


 目指すは西の王都!の近くの村?

 目的地が曖昧なまま旅に出る。徒歩で。

 この選択が俺の運命を変える起点となることを信じて。





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