第17話
訓練場をあとにした俺は街に出ていた。
前に馬車から眺めた時にも思ったが、この街は活気がいい。
街の人たちは賑わい、所々で露天や屋台なども見受けられる
しばらくウロウロしていると、串焼きを売っている屋台のおっさんが声をかけてきた。。
「おいそこの坊ちゃん、一本どうだい?」
スキンヘッドで無精髭が似合うガタイのいいおっさんが笑顔で串焼きを勧めてきた。
ものすごく香ばしい匂いがする。そういえば朝食をとっていない。
「何の肉なんだ?」
匂いにつられて俺はおっさんに質問を返した。
「これは《クロウ》の肉だ」
「《クロウ》?」
「平原や森とかで鳥みたいに飛んでる魔物だな」
前に見たことある。
カラスみたいな見た目の魔物で、肉も美味かった気がする。
俺は串焼きを1本購入しようとして思い出した、お金持っていないことに。
「食べたいところだったが今回はやめとくよ」
おっさんに断りを入れる。
「そんなこと言わずにさぁ、500Bの所を400Bにまけるぜ」
この世界の通貨はベルという単位を使う。
前世での日本円とあまり変わらない価値であり、1円=1Bぐらいという印象だった。
通貨の種類は鉄、銅、銀、金、白銀、白金、アダマンタイト。
鉄が10B、銅が100B、銀が1000B、金が1万B、白銀が100万B、白金が1億B、アダマンタイトが100億Bの価値になる。
「悪い、俺は今一文無しなんだ」
「なんだよ坊ちゃん、いい服着てると思ったが一文無しかぁ」
おっさんからガッカリして肩を落とす。
「まぁいいやぁ――仕立てからいいことの坊ちゃんなのはわかるよ。1本サービスしてやるから次きた時に沢山買ってくれ」
おっさんはそう言って俺に1本クロウ焼きを渡してくる。
「そうか、わかった。ありがたく貰おう」
いいとこの坊ちゃんという訳では無いが、貰えるものは貰うことにした。
串をほうばり、肉を食べていく。
「うん、美味い」
少し硬いが、この歯ごたえとタレの味がマッチしている。
日本で食べていた焼き鳥の"ハツ"を思い出す味だ。
「そうだろう」
おっさんは自慢げに腕を組んだ。
「このタレはオリジナルで作っているのか?」
「そうさ、このタレは俺が開発したタレだ」
この串焼きに凄く自信があるのだろう。
俺はいつの間にか串を一本たいらげていた。
この味ならまた来てもいいと思える。
「うまかった、また来る」
「食べるのが早いな坊ちゃん!今度また来てくれよな」
俺はおっさんの笑顔に見送られながら串焼きの屋台を後にした。
そして街を見渡しながら、お金を稼ぐ方法を考える。
稼ぐなら雇われて労働するのは論外だ。身体を動かすなら縛られたくない。
簡単なのは物々交換をすればいい。
人は通貨ない時代には物と物を交換することで生活を成り立たせていた。
それに習い価値の低いものでも、欲しがっている人へ交渉し価値の高いものと交換していけばいい。
有名な話だとわらしべなんとかという話が前世であったな。
ただ欲しがっている人を探すのに時間がかかる。
前世の記憶を使ってこの世界では未知のものを開発して特許的なものとるのもいいが、伝がない。
つまり、、、
「冒険者登録でもするか」
この世界では魔物は金になる。
そしてその魔物は外に行けばうじゃうじゃいるわけだ。
つまり外には金の山がたくさん生息しているということになる。
なんと優しい世界なんだ。
確か買取は冒険者登録が必要と聞いたことがある。
登録しようという考えになった俺は冒険者ギルドに向かおうとすると、見知った顔が視界に入った。
「あれ、クレイじゃねーか!こんなところで何してるんだ?」
この馴れ馴れしい喋り方、紅蓮のような赤い髪色と瞳、一緒に大浴場を共にしたヴァンだった。
「ヒト違い、ボクはミカエルダヨ」
「あれ?人違いでしたか。すみません、知り合いに似てたもので」
本当に信じたのか、ヴァンは敬語で謝罪をしてきた。
「大丈夫ダヨ。ソレヨリも冒険者ギルドってドッチダイ」
面白いので俺はわざとらしく口調を変えてそのまま話を進める。
「冒険者ギルドはあっちの方ですよ。剣がクロスされているロゴマークが看板の大きな建物です。今から俺も向かおうとしていたのですが、一緒に行きますか?」
素晴らしい模範解答だ。俺への態度とは大違いである。
ただこいつが敬語を使っているのがむず痒く感じる。
「アリガトウ短小君」
「ん?今なんて?」
「アリガトウヴァン君って言っタンダヨ」
「どうして名前を……ってやっぱりクレイじゃねーか!短小君とか言っただろ!」
聞こえてるじゃねーか。
「悪いな。まさか信じるとは思っていなくてな」
「ったくよぉ、クレイだとは思ったけど、もし違かったら恥ずかしいだろ!?」
そういうところは意外と臆病なやつだなと思った。
「まぁいいや。街で何してるんだ?国王様の治療はいいのかよ」
ヴァンは呆れながらも国王のことを聞いてくる。
心配しているのだろうと感じた。
「治療は夜まではない。だから散歩していたんだが、俺は無一文だということに気づいてな」
「金持ってないのかよ……」
さらに呆れた表情をする。
「あぁ、だから冒険者ギルドに登録してパパっと稼ごうと思ってな」
「魔物を狩ってお金にするってわけか。でもよぉ、冒険者ギルド登録ってお金かかるぞ?」
「なに、いくらだ?」
登録するだけでお金がかかるのは初耳だった。
「確か5万Bだったような」
「ボッタクリすぎるだろう」
5万はボッタクリだろう。
ということは登録するための5万Bをどこかで入手しなければならないということだ。
何かいい案はないかと考えていると、それを見たヴァンが提案してきた。
「お金が必要なら俺の仕事手伝わないか?」
「聞かせてくれ」
内容次第では前向きに検討したい。
「ちょうど今から冒険者ギルドで依頼するところだったんだが、一緒にやろう。報酬は20万Bだから半々でいい」
タイミング良すぎだろう。
「仕事内容は?」
「王都近くにダンジョンがあるだろ?」
「いや、聞いたことないな」
そもそもダンジョンなんてこの世界にあったのか。
「まぁダンジョンがあるんだが、そこの30層に存在するボス《アースドラゴン》の魔石を取ってくることだ」
「《アースドラゴン》の魔石にはそれほどの価値があるのか?」
「そういうわけではないんだが、今回はクロード家に来た極秘依頼なんだ。依頼主は俺も知らない」
《アースドラゴン》の魔石を欲しがっている奴は、周りにそれを入手したことを知られたくないということだ。
だとすると《アースドラゴン》の魔石が何に使われるのか気になるところだが――。
「《アースドラゴン》は本来B~Cランクの冒険者4~5人パーティーで挑むのが普通なんだ」
「なるほど」
「んで、クレイが現れたってわけ」
「BからCランク冒険者5人パーティーで挑む魔物を2人で戦おうとしてるのか?」
「問題ないだろ?元々俺一人でも問題ないって思ってたしな」
BランクやCランク冒険者がどれぐらいの強さ基準なのかがわからないが、ヴァンは相当腕前に自信があるようだ。
わざわざ冒険者を雇に行こうとしているあたり、戦いでは慎重になるタイプだということはわかる。
「自信があるようだな。そのCランク冒険者の代わりが俺でいいのか?」
「クレイは強い! 問題ないだろ? それにクレイの実力の一旦を見てみたいしな!」
かなり買い被っているようだ。
なんの根拠で言っているのかさっぱりわからん。
「ちなみに《オークジェネラル》はどれくらいの規模で討伐するんだ?」
「《オークジェネラル》? ん~……単体ならBランク5人でも行けそうだけど、群れなら規模にもよる。大体、Aランクも含んだBランクパーティー10人以上は必要だと思うぞ」
えっ、オークジェネラルそんなに強いの?
なら《アースドラゴン》余裕そうだな。
「問題は夜までに帰れるかどうかだ」
俺は国王の治療があるため、日帰りでなければならない。
「それは大丈夫だ。ダンジョンのあるエリアでこの転移石を使えば、30層まではワープ出来るんだ! 順調に行けば昼すぎには帰ってこれる」
そんなアイテムがあるのか。ダンジョン限定のようだが便利だな。
「わかった。引き受けよう」
「そうこなくっちゃ! なら早く行こうぜ。回復アイテム揃えたいから雑貨屋に寄ってもいいか?」
「あぁ」
陽気な口調で言ったヴァンはウキウキ気分で歩き出した。
俺はヴァンとダンジョンに向かうことになった。
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