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第10話

 寝室を出た俺たちは客間に戻ろうしてしていた。

 国王は魔法をかけたあと、しばらくして眠りに落ちた。

 次の治療は明日の朝なので、戻って話の続きをしようということになったのだ。


 前を歩くリンシアを俺とリルが追う。



「クレイは無詠唱……なんですね」



 リンシアが前を歩きながら呟いた。



「無詠唱は珍しいのか?」



 スラム街であるジルムンクでは生き残るために強くなる必要がある。詠唱している暇があったら相手を倒せ。そんな世界なので詠唱する暇なんてないのだ。

 それにジルムンクではある程度魔法の使える奴はみんな無詠唱だったしな。



「特段珍しいということではないです。無詠唱は魔法の境地。2級魔法までであれば無詠唱で扱う人は多いくらいです」



 なるほど、俺は最初からどの魔法も無詠唱だったからな。

 詠唱しなければいけない理由がわからない。



「ただ無詠唱だと威力も精度も落ちます。それをそのままの精度で扱えるなんて……」



 リンシアは声に呆れた感情も混ざつつ呟いた。

 思いのほか嬉しそうにも感じる。



「俺は魔法を覚えた頃から無詠唱だ」


「やはりクレイには何がなんでも私の騎士になってもらうしかないですね」



 リンシアはそう言って、再び歩き出した。

 正直俺は騎士になるつもりはない。なぜか今王族のゴタゴタに巻き込まれてはいるが、一区切りついたら冒険者になってこの国を出ようとも思っていたのだ。

 そしてリンシアの『騎士』という単語から重要な事を思い出した。



「なぁ、大浴場ってどこだ?」


「えぇ……?」


 

 俺は少し後ろを歩くリルに並んで歩き、耳打ちをした。

 リルは呆れた表情で、どうしてこんなときに大浴場の話してんだこいつ?って目で俺をうったえる。



「俺がここに来た大本命だ」


「3回まわって俺様さいっこー!!って言ったら案内してやってもいいですよ?」



 俺は即座に回転を始める。フィギュアスケートのトリプルアクセルをイメージした見事な高速回転。回転したままリンシアの前に出た。



「俺様さいっこー!!!」


「きゃっ……いきなりどうしましたか!?」



 リンシアは驚いて声を上げる。きゃって意外だな。



「本当にやるとは……それに回るってそっちじゃないんですが」


「まさかやるとは思ってなかったよなぁ?約束は守ってもらうぞ、まな板メイド!」



 俺はしてやったりという表情をリルに向けながら問いかけた。



「ググぅ……恥ずかしがらせようと思ったのに、私が悔しい思いをするなんて」



 リルは心底悔しそうな表情を向ける。



「というわけで案内してもらおう。リンシアもそれでいいよな?」


「えっと、何をですか?」


「大浴場だよ!!」


「あぁ……」



 リンシアも忘れていたのだろう。思い出したようで呆れた表情を見せる。



「ここに来た大本命だろうが……」


「わ、わかりました。リル、案内は任せます。終わったら客室に案内してください。これから1ヶ月そこで寝泊まりするので、お部屋は好きなように使ってください」



 前半はリル、後半は俺に向けてリンシアは言った。

 


「かしこまりました」


「私は少し疲れたので自室で休みます。ルシフェル兄様と騎士達にはくれぐれも気をつけてください」


「気をつけるというのは?」



 率直な疑問をぶつけてみる。

 リンシアは周りに誰もいないことを確認して、小声で俺に告げた。 



「今回の魔物の襲撃、そしてお父様の病気、もしかしたらルシフェル兄様の手のものがやった可能性があります」


「なるほど」



 つまりは今回の治療も邪魔される可能性、俺が命を狙われる危険性もあるわけか。

 誰がルシフェルの手先かわからんが警戒はしておくか。



「わかった。警戒はしておこう。お互いにな」


「はい、お互いに」



 俺の言葉にリンシアは返事をすると自室があるであろう方向に進んでいった。

 それを見送った後、俺はリルの方に笑顔で振り向いた。



「さぁ、案内してくれ」


「……案内します。付いてきてください。この時間は誰も入っていないと思うので貸切だと思います。それとそのわざとらしいニコニコ顔が不快なので死んでください」


「ひでぇ言われようだな、お前になんかしたっけ?」


「私のナイスなボディーが侮辱されました」


「ナイスなボディーって……それにリンシアだって――」



 そんなコントを繰り広げながら、リルに案内に付いていく。


 貸切か、最高じゃん!

 そう思いながら大浴場を目指すのだった。



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