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第9話

 国王の返事を聞いてから30分が経過していた。

 

 俺は国王に魔法を使おうと構成を考えている。

 寝室にはリンシアとリル、兵士達がいた。


 国王の意向を聞いたあともルシフェルは反論をしたが、リンシアが押し切ったのだ。

 ルシフェルは不満そうな顔をしていたが、「まぁよい、父上を頼んだぞ」と言って公務に戻ったのだった。


 このウイルスは伝染(でんせん)する恐れはない。だが病人から離れるに越したことはないとリンシア達には言ったのだが、治療を見せて欲しいとのことだった。



「どうやって治療するのですか?」


「まずは精神を安定させる。そして脳にこれ以上ウイルスが行かないようにあえて麻痺状態になってもらう」



 俺は前世で凶犬病(きょうげんびょう)の治療に成功した薬を魔法で再現させようとしている。

 国王がウイルスの症状に耐え切れず途中で死ぬ危険性も高いので一刻を争う。



「麻痺状態ですか……」



 リンシアは少し不安そうに呟いた。



「一時的にな。それからウイルスを殺す魔法をかける」


「ウイルスを殺す魔法だけではダメなのですか?」


「ダメだな。今俺が使える魔法だけではウイルスを完全に消しきれない。そしてこの魔法はあくまで補助。この病気は国王自身の免疫力に頑張ってもらわなければいけない」


「そういうことですか……わかりました」



 俺はリンシアが納得したことを確認してから、振り返り国王に問いかけた。



「そういう内容のものだ。魔法をかけるがいいか?」


「頼む……」


「先ほど言ったが助かる確率は極めて低い。そして治療には苦痛が伴うこともある。それでもやるか?」


「頼む……」



 国王の短い返事を聞き入れた俺は魔法を発動させる。


 発動させたのは俺が独自に効果を改ざんした魔法だ。

 魔法の原理は前世のプログラミングよく似ている。数字の羅列、そこに属性を加わると属性魔法になるのだ。

 例えば【ヒール】が123000の光属性魔法だとしたら、123001の光属性と定義するだけでヒールみたいな効果を持つ別の魔法になるという仕組みだ。


 一つ一つの魔法は256桁の数字と属性で構成されており、定義化されている。それをこの世界の人たちは詠唱とイメージで呼び出しているのだ。

 この仕組みを理解したのが5歳の頃。それから俺は魔法の開発に勤しんだものだ。


 今回は麻痺効果を与える【パラライズ】、精神を安定させる【リラックス】、状態異常を治す上位魔法【ハイキュア】を変更して使う。

 凶犬病(きょうげんびょう)と確信した時に頭の中で薬に近い効果が出るように演算していた。

 そして30分間、何度か実験を繰り返して魔法を完成させたのだ。


 ちなみに凶犬病(きょうげんびょう)ウイルスに状態異常を回復させる【キュア】系等の魔法は効かなかった。おそらく状態異常の定義に何かしら反しているのだろう。



「【リラックス】【パラライズ】【Cキュア】」



 魔法を発動させた。ちなみに【Cキュア】は俺が勝手に命名した。意味はC型系統のウイルスに効果が出る前世の薬を真似しているからである。



「んぐっ…」



 国王は声を上げた。麻痺にかかったのだ。

 様子から察するに前世と同じ薬の効果が出ていると感じた。

 あとはこれを定期的に国王に使ってやればいい。



「どうなのですか?」



 心配そうにリンシアが問いかける。



「まだわからんが、魔法の効果自体は成功している。あとは1ヶ月、朝晩これを続けることだ。そして栄養補給をしなければならないが、この王都にA級ポーションはあるか?」


 

 Aポーション以上だと体力が完全回復する効果があるのだが、それを利用して免疫力を高めるのである。



「A級ポーションなら数があります。リル!」


「かしこまりました」



 返事をしたリルが寝室から出て行く。しばらくするとA級ポーションがたくさん入った箱を持ったリルが戻ってきた。俺はそのポーションに魔法をかけた。



「今、何を?」


「ポーションの効果を少し変更した。これを――」



 俺はそう言って国王の口からポーションを少しずつ流し込んでいく。

 本当は血液に直接入れたいが、注射器がない。



「あとは安静にするだけだ。途中でくたばらなければ1ヶ月ほどで治るだろう」



 適正量摂取させてから、リンシア達の方を向いて俺は言った。



「わかりました。それで、後遺症とかは……?」



 不安そうにリンシアは問いかけてきた。

 後遺症が残れば治っても国王としての責務は果たせなくなるだろうからか。



「それはわからない。治ってから診断しないと」



 俺はあえて突き放す言い方をする。



「そうですね、覚悟は決めています」



 そう言ってリンシアは凛とした表情で国王に目を向ける。



「お父様、頑張ってください。私もついていますから」



 そして励ましの声をかけるのだった。



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