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星降る丘の黄昏に包まれて  作者: 中原 司
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チャプター2-2


「ルシーナ様!」

 そんな声が聞こえたのは、町の中心に至った頃であった。振り返ると太陽の神子の一人が肩で荒い息を吐きながら、全力でルシーナの元に駆け寄ってくる。

「どうかしたのですか? 太陽の神子よ」

 焦っている相手を落ち着かせるように、柔らかな声でルシーナは話しかける。

 その言葉を受け、急いで息を整えている神子は、まだ上体を上下させながらも言葉を紡いだ。

「はぁっはぁっ…セリア様が…セリア様が…」

「セリア様がどうかしたのですか?」

 世話をしている姫神子の名前が出てくると、落ち着きを取り払っていたルシーナにも焦りが出てくる。地上に存在するときから神であるとされている姫神子の身に何かあったとあれば、世話役であるルシーナが命を絶ったとしても償いきれるものではない。

ルシーナにとって自分の生き死になど元々眼中にはなかったが、八年という長い月日を共に過ごし、様々なことを学んできたセリアという存在はルシーナにとって、姫神子としての神的存在では無く、実の妹のような存在であった。

 十年前の災厄時を最後に出会っていない実の妹の生死は定かではない。もし生きていれば、セリアとほぼ同じ年であったであろう。そんな過去の想いも重なり、ルシーナは二度と家族のような存在である人間を失いたくはなかった。

「セリア様が…神殿から居なくなりました!」

「えっ!」

 ルシーナは困惑に顔を歪める。

「ルシーナ様が外界に赴かれると言う話を聞いた途端、私の前から姿を消し、心配になって神殿の門番を務める僧師に聞いてみると、やはり…」

「それではセリア様は今、この町の何処かにいらっしゃるというのですか?」

「恐らく…」

 基本的に姫神子が神殿から外出することは禁じられている。姫神子は既に神であり、普通の人間とはまた別次元の存在とされているからだ。

 姫神子は外の世界には興味を持たないように教育されるのであるが、異例にも元々、外界の存在でもあったルシーナが世話役を務めたことが裏目に出たのか、外界のことについて好奇心を抱き、ルシーナが取り寄せる書物を次々に読み漁っていたのだ。

 そうなると自然に町にも出たくなる。神の化身でもある姫神子の命令を僧師ごときが逆らえるはずもなく、すんなりと町に出られたはずだ。

 いつもなら、ルシーナが監視の目を光らせ、セリアの行動は全て把握しているのだが、今回に限っては完全にルシーナの失態であった。

「私の失態だ…。分かりました。太陽の神子よ。貴方は太陽の神殿に戻り、いつセリア様が戻ってきても受け入れられるようにして置いて下さい。私は、すぐにセリア様をお捜しします。見つけ次第、即刻に連れ戻します故」

「申し訳ございません、ルシーナ様。私が注意を怠ったばかりにこんな…」

「いえ、全ての責任は私にあります。しかし過去を悔やんでいる暇はありません。すぐに神殿に戻るのです」

「はい」

 走ってきた太陽の神子はまた同じ道を駆け戻っていった。その姿は雑踏に紛れ、すぐに見えなくなってしまう。

「さて、何処から探したものか…」

 ルシーナは何万人もの人間がひしめく町の中心で思案に暮れていた。

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