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星降る丘の黄昏に包まれて  作者: 中原 司
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チャプター1-1

【レヴィウス歴 六三七年】


[ルシーナ=アストラル  十歳]



 リートンという名の国がある。大陸の西南部に位置する辺境の国。人口は僅か十万人規模の小国。広大な大自然に囲まれているために外界との接触はほとんどと言っていい程なく、この国独自の文明文化を築き上げていることは、大陸全土にも知れ渡っている。

 小国ではあるが、金の産出量が尋常ではないため、国家としての財力はその他の国を遙かに凌ぐ。その為、この国を植民地にしようと考えた各国は、何度と無く侵略を試みるが、険しい山脈と荒々しい渓流に阻まれ、その野望が叶えられたことは一度たりとてない。

 唯一の貿易国であるリヴィールとは和平協定を結んでおり、金の行商を独占的に行える代わりに、リートンへの強固な玄関役を成している。

 そのような幾多もの自然の恩恵が重なり、いつしか大陸の人々はリートンのことを『神々に護られし国』と称するようになった。

もちろん、リートン国民も例外ではない。国民達は皆、神の存在を信じ、敬い、信仰してやまない。国内の各地には壮大な装飾が施された神殿が幾つも建造され、国を治める王族よりもその地位は高い。

 そのリートン国民の統一的宗教として『神子みこ信仰』というものがある。

 これは『宗教』と言ったような偏見的な枠内の考え方ではなく、この『神子信仰』こそが国の考え方であり、方針であるのだ。

 『神子』つまり『神の子』を崇め、奉る信仰である。

 この国には、太陽、月、星、大地、水、風、火といった七つの神が存在するとされ、その神々それぞれに『神子』と言った従者が数人、仕えている。

 『神子』は年に一度、それぞれの神に定められた日に産まれた子供がその資格有りとされ、五歳まで神殿で教育を受ける。そして、その中で秀でた者が『神子』となり、それ以外の者は、女であれば『巫女』、男であれば『僧師』となり、『神子』に仕える。望むなら『巫女』『僧師』はやめることが出来るが、『神子』は『神子』であることを決してやめることは出来ない。『巫女』や『僧師』の場合は、定められた日に生まれなくとも、逆に後から修行によってなることが出来る。

 『神子』は自分が仕える神に関する大災害、例えば地の神であれば、地震などがこの国を襲うと、『生け贄』となり、儀式を介して神の元に赴き、怒りを静めるように頼みに行く。

 そしてその後、天界においてその神に仕えるとされている。しかし、自分が生きているうちに何も起こらなければ天寿を全う出来ることもある。

 王は神の眷属ではなく、あくまで『人』であるが、『神子』はいずれ神に仕える『神の子』であるとされているので、人々の信仰上、その地位は王族よりも高い。王は全て、神子の長老達が決めるため、無能と判断された場合は、嫌がおうにも解任を余儀なくされるのだ。そして、次の王もまた長老達が指名、任命する。

 つまり、人為的内争や自然災害、さらに国益や政治進行に関してまで、その全てが神の意志で進められていると考えられており、神の信託を受けること、もしくは神の怒りを沈めることで全てが解決すると信じている、一種の狂信的信者の思想が織りなす国。それがリートンなのである。

 

 ルシーナが月の神子として神殿に仕えてから二年。特例のような形で神子になってしまったので、当初は各神子達の長老が一堂に会する『永神会』で猛烈な反発を被るが、その中の中心的存在、太陽の神子であるファムル長老が「神の意志である」と述べると、全てが丸く収まり、今では平穏な日常を送っている。

 仕えだした頃は神殿内部でも、給仕のような役割を努めていたのだが、時が経ち、徐々に頭角を現すにつれて、今では同じ月の神子の中でも幼いながら上位に位置している。

 元々、リヴィールの上流階級で育てられていたルシーナは、幼い頃から英才教育を受け、同年代の他の子供達とは一線を画していた。

 さらに、ルシーナ自体に備わっている英知溢れる才能は、神殿で教わる全てのことを直ぐさま理解し、本来ならば仕える神の神子教育しか受けないものを、たったの二年間でルシーナの知識は、その広くに及んでいた。

 僅か十歳の子供が、たったの二年間でそこまで成長しているのを見届けていた神殿の神子達は『まさに神々に選ばれし従者』と言い、賞賛の言葉を浴びせていた。

 それでもルシーナ自身は全く満足せず、多くを学び、さらなる力を付け、二年前の誓いを果たそうと、今でも自分が護るべき何かを探し続けているのであった。

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