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星降る丘の黄昏に包まれて  作者: 中原 司
3/14

プロローグ-3



 少年の世界は全てがモノクロームと化していた。

『…どうして』

『殺せぇっ! アストラル家の人間は一人も生かすなっ! 全てを燃やし尽くせ!』

『父さん…、母さん…』

『早くお逃げなさい! 貴方だけでも生き延び────ぐぅ!?』

 唐突に飛び散る鮮血。それは白と黒の世界の中で、何故か際だった朱をしていた。

『お願い…。ルシーナ…。生きて…』

 ゆっくりとくずおれる女性。次第にその姿はシルエットとなり、少年の目の前から掻き消えていく。

『か…母さぁぁ──んっ!!』

『…坊主、恨むんならお前の親父を恨みな。我が主に逆らった罰なんだよっ!』

 黒いシルエットをした何かが、明らかな殺意を向けてくる。

 だが、それはすぐに途切れた。

『う…、ぐっ…おぅ…ぅがぁぁ……』

 黒の世界に滲む紅。一筋の軌跡を描きながら、地面にその染みを広げていく。

『父…さん』

『はぁっはぁっ…逃げるんだ、ルシーナ! いつもの地下通路は私の部下が守っている。まだ奴らは見つけていないはずだ。あそこからなら逃げられる。行け、ルシーナ!』

『い、いやだよ、そんな…。みんなをおいていくなんて…出来ないよっ!』

 感情を言葉に変え、言い放つ。

 直後、耳元で風切り音が鳴った。

 頬に衝撃が迸る。

 少年の視界の中に、幾つもの光の粒が舞う。

 だが痛みは感じない。

『っ!』

『いいか、ルシーナ。よく聞くんだ。この腐りきった国を正すために、私はこの身をこの国のために捧げた。だがどうやら願いは叶わなかったようだ。しかし、お前は違う。私と違ってお前は優秀だ。自慢の息子だよ、お前は』

 優しい言葉。温かい眼差し。逞しい腕。少年はずっとそれに包まれ、護られ育ってきた。

『父さん…』

『でやぁぁぁっぁ!─────────はぁっ!』

 瞬間、激しい金属音。剣と剣が交差する音。

 優しい言葉も、温かい眼差しも、今は少年に向けられていない。

 少年が感じるのは、多くの殺意、恐怖…そして一つの大きな意志。

『父さん!』

『行け! ルシーナ! そして生きろ! お前は大事なものを守れる強い男になれ! 見つけるんだ、お前が生涯その身を捧げるべきものを! さぁ、走れ、走るんだ! 生きろ! ルシーナ!!』

『父さぁぁぁぁ──ん!』

 急速に遠ざかっていくモノクロの世界。手を伸ばしても届かない。

 それでも必死に掴もうとするが、気が付くと少年は一人、闇の中に取り残されていた。

『父さん…、母さん…』


 延々と、そして永遠に続く黒の世界。


『はぁっはぁっはぁっはぁっはぁっ』


 一点の白も、一条の光も射さない暗闇。もはや、自分の存在すら定かではない。


『はぁっはぁっはぁっはぁっはぁっ』


 自分は何処に向かっているのだろう。この先に何があるというのだろう。


『はぁっはぁっはぁっはぁっはぁっ』


 もう、消えてしまいたい…。


『っ!?』


 だけど…。


 だけど…。


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