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星降る丘の黄昏に包まれて  作者: 中原 司
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プロローグ-1

【レヴィウス歴 六三五年】



「はぁっはぁっはぁっはぁっはぁっ」

 少年は走る。闇の中を。

 少年は探す。自分の未来を。

少年は彷徨う。失った居場所を求めて。

「はぁっはぁっはぁっはぁっはぁっ」

 全てが深い漆黒に埋め尽くされていた。己が走っている道のりも、自分の行く末も。

 木々を掻き分け、枯れ枝を踏みならし、少年は走り続ける。

 何者も追って来られないところまで。心に刻み込まれた恐怖を忘れることが出来るまで。

「はぁっはぁっはぁっはぁっはぁっ」

 全てを無くした少年に頼る者など何処にもいない。身を寄せられる場所も、帰るべき故郷も、自分の家族すらも…。

 少年の過去は業火と共に粉塵と化し、幾多もの星に包まれた夜空に舞い上がっていった。

そして滞ることなく霧散し、二度と少年の元に還ることはない。

「っ!!」

 地中から盛り上がった木の根に足を取られ、少年は勢い余って大きく前につんのめった。

 しかし、乾いた木の葉や多くの小枝が敷き詰められた森の絨毯は、少年に目立った外傷を与えない。ほとんどが擦り傷程度で、血は一滴も出てきてはいなかった。

 だが、少年はしばらくの間、立ち上がろうとはしなかった。いや、立ち上がれないのだ。

 既に何時間走り続けていたのかも分からない。少年はただひたすら前に進めるだけ進まなければならなかったのだ。疲労も蓄積され、意識は朦朧とし、体力も気力も僅かすら残っていない。今までの勢いを一度失ってしまうと、もう二度と立ち上がれなかった。手足が痺れ、思考も抵抗無く真っ白になっていく。

 何故、自分はここにいるのか。どうして走っていたのか。そんなことさえ疑問に思えてくる。もう何も考えたくはなかった。

 辺りに人がいる気配など微塵も感じられない。聞こえるのは風の精達の囁きと木々が小躍りするざわめきのみ。

 自分はここで朽ち果てるのか。誰にも看取られず、誰が悲しんでくれるわけでもなく。

 元々、薄れかかっていた意識の糸も節々に途切れだし、いつしか、自分のいる世界が夢なのか現実なのかの区別も付かなくなっていた。

 生きる目的も失われ、己という存在が虚無に還ろうとしていても、もしこの世に神という存在がいるならば、少年の願いはただ一つ。

 

 生きたい。


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