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一人ぼっちのタンポポ

作者: たまゆら

ここは広い草原、暖かい日差しがいっぱいに草木をつつみます。

春、春が来たのです。

みんな喜びに満ちています。

それぞれが、それぞれの春を精一杯咲かせようと、草原は力づよいメロディーにあふれています。

そんな中、フワリというタンポポは、一人とてもご機嫌ななめです。フワリは独り言をつぶやいています。

「なんだよ、みんな、ばかみたいにうかれちゃってよ、うるさくてかなわない。おれは独りが、孤独が好きなんだ。」とかなりご立腹のご様子です。

フワリの仲間は数えきれないほどたくさんいます。

アメリカから強い種類のタンポポたちがほとんどで、幅を利かせていますが、日本種の優しい雰囲気のタンポポたちも微笑んで仲良くしています。

どこからともなく子どもたちの歌声が聞こえてきましたよ。

今日はとても良いお天気、近くのあけぼの幼稚園の園児たちが、

遠足にやってきたのです。

きゃあきゃあ、ワーワー、大騒ぎ。ほっぺたを赤くして、おでこは汗がキラキラ。

益々草原は活きづいてきました。

フワリは独り、尚ご機嫌ななめです。

「畜生うるさいガキどもめ、俺様に少しでも触れてみろ、

ただではおかないぞ。」といきまいています

「さあさあ、皆さんお弁当の時間まで自由時間ですよ。

お友達とたくさん遊んでくださいね。」

園児たちは一斉にわ~と声を上げ、めいめい好きな場所に飛んで行きました。タンポポを摘んでビニール袋に入れる子供たちは

「これおうちにもってかえって、おかあさんにあげようっと。

よろこんでくれるかな。ふふふ。」とかわいいエクボを、つくっています。草の上で寝そべって空を見上げている子は、つぶらな瞳で雲を追いながら何やらとてもたのしそう。もしかして宇宙旅行の夢を見ているのかも。

土をほって虫を探している子もいます。

何人かで輪になって歌をうたっている子もいます。先生たちは、しばしの休憩です。優しい目で園児たちを見守っています。

あたたかく、優しい時間が流れていきます。

でも、フワリだけは相変わらずふくれっ面でにこりともしません。いつの間にやらフワリのそばに男の子が一人。優しい瞳でフワリをじっと見つめています。そのどこまでも優しい瞳をみているとフワリはそわそわしました。どうしたらいいのかわからなくなりました。男の子とフワリだけの不思議な時間が流れていきます。

そこへ、突然どやどやと、何人かの園児たちがきました。

そしてその男の子をからかいはじめました。口々に言うのです。

間抜け、バカ、幽霊などと。でも男の子は、グッと唇を結んだままこらえています。フワリはなぜ何も言い返さないのか歯痒い気持ちになりました。園児の一人が言いました。『やっぱり喋れない奴はつまらないな。もう行こう。』園児たちはその場を離れていこうとしました。その中のひとりが、ふと、振り向いてフワリを踏みつけようとしました。すると、今までじっと堪えていた男の子が、突然その園児に飛びかかりました。うーうー、うーうーと言葉にならない言葉をうなりました。他の園児は驚いて先生の所に走って行きました。先生はその園児たちと急いでフワリたちの元へやって来ました。先生は男の子の肩をつかみ二人をひきはがしました。そして問いました。なぜこんなことになったのか。園児たちは、皆言いました。何も自分たちはしていないのに男の子が突然掴みかかってきたと。男の子は口を一文字にしてこらえています。フワリはたまらなくなってきました。先生は男の子に、本当にそうなのかと尋ねました。園児たちは一斉に『そうだ、そうだ、こいつが悪いんだ。』とさけびます。

フワリは胸が詰まりました。なぜ男の子が彼らに言い返さなかったのか、なぜ園児に飛びかかって行ったのか、そして今の男の子の胸の中を思うと、自分に出来る事があるのならどうしても助けてあげたいと思いました。フワリは、広い草原を見回しました。そこにはたくさんのタンポポが。フワリは大声で叫びました。「おおーい。お願いだ。このここの子を助けてやりたいんだ。力を貸してくれないか。」

タンポポたちは本当に驚きました。あのひねくれ者のフワリが自分以外の者のために必死になっている。そしてタンポポたちも一部始終を見ていたので何とかしてやりたいと思っていたのです。声を合わせて皆言いました。

「ようーし。いいともまかせておけ。みてな。」

タンポポたちは一斉に震えました。みんなふれあいます。すると不思議なメロディーが生まれ草原いっぱいに広がりました。空にまで広がっていきます。鳥たちは歌います.。木々は肩を組んでハミングします。蝶々はひらひらと円舞します。虫たちはぴょんぴょん跳ねました。春の宴です。園児、先生、男の子、そしてフワリ皆なメロディーに優しく包まれました。

園児たちは男の子に謝りました。先生は全てを知りました。先生は男の子を抱きしめました。男の子は光る瞳でにっこりほほえみました。フワリはもう胸がいっぱいです。そして自分に言いました。もう一人はやめだ。ひとりじゃないんだ。

『さあ、皆さん。お弁当にしましょう。タンポポさんを踏まないようにね。』あの園児たちが男の子の手を取り行こうと言いました。少し進んだのですが、フワリのもとへ帰り

小さな手でそっとフワリ

をなでて友達のもとへ帰っていきました。

フワリは言いました。『皆、ありがとう。今までごめんね。俺間違ってたよ。これから仲間にしてくれるかい。』

タンポポたちは一斉にメロディーで答えました。「なんてことないさずっと仲間だったさ。これからも楽しくやっていこうぜ、ずっと、ずっとな。」草原にはいつまでもいつまでも優しいメロディーが流れていきます。そして、空に、山に,谷にわたっていくのです。

ある春の日の出来事。



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