第36話 お見送り
クッデが自宅から飛び出してから10分くらい経った頃。
多くの列車と人々が行き交う街で一番大きな駅にて、ニィアはメインバと共に、腕時計を見ながらお見送りに来てくれるはずの、クッデが来るのを待っていた。
しかし彼は約束の時間になっても一向に現れなかった。
メインバ「そろそろ時間よ。列車に乗車しておきなさい」
ニィア「もう少しだけ…もう少しだけ待ってください」
メインバ「そうは言ってもね…この列車を乗り過ごしたら会議には間に合わないのよ」
ニィアの隣に立っていたメインバは列車に乗るように促す。
彼女の言う会議とは、年に一度国に8つある傭兵組合の総帥が、一同に国城に集い、今後の方針について話し合う会議、総帥会議の事だ。
そして総帥会議には、毎年 傭兵組合所属者内から1人だけ選抜し、付き人として国城へと同行をさせられのだが、今年の自由な旅人の付き人はニィアに決まったのだ。
と言っても、ニィアは過去に二度とこの会議に参加しているため、誰も反論もなかったし本人もとても楽しみにしていた。
一名を除いて。
クッデ「ニィィィィィィィアァァァァァァ!!!!!」
ニィア「あっ来た!!」
聞き覚えのある声を聞き、ニィアの表情は一気に明るくなり振り返る。
そこには改札を抜けてこちらに向かって一直線に走るクッデの姿があった。
クッデ「ニィア!!」
ニィア「クッデ君!!!」
クッデ「ニィア!!」
ニィア「クッデ君!!!」
クッデ「ニィア!!」
ニィア「遅い!!!!」
クッデ「ぐごばっ!!!」
ニィアの目の前にくるやなか、クッデの頬に目掛けて強烈なビンタが飛んで来た。
状態によって力が格段に上昇していためか、ただただ怒りを込めた為なのか、クッデはその場から数m先まで飛んでいった。
ニィア「後数分後に汽車発車するんだけど、ギリギリ過ぎない? フューチェなんてお見送りする為に自宅から駅までずっと付いて来たんだよ。 その間クッデ君は何してたの? 寝てたの? ねぇ寝てたよね? 心読まなくても分かるからね。 私クッデ君の事は心から好きだけど、いい加減その遅刻癖辞めないかな。 直す気ないないなら頭に目覚まし時計くくりつけるよ。ねぇそうする? と言うかそうするわ。さぁ頭差し出せ、頭の中に目覚まし時計埋め込んでやるから」
クッデ「(これ死んだわ俺)」
地面に倒れたままニィアの説教を虚ろな目で聞いていたクッデは心の中で死を覚悟していた。
ニィア「そんな事で殺すわけないでしょ」
クッデ「(あ、心読まれた)」
ニィア「まぁもう慣れてるから、説教は此処までにしてあげるわ」
クッデ「お、それじゃあ」
ニィア「今度のデートの買い物服5着で許してあげるわ」
クッデ「あ…うっ…さ、3着で」
ニィア「6着」
クッデ「ちょ、増えて」
ニィア「7着」
クッデ「…分かりました」
彼女の威圧に押されて、半ば強制的に承諾する。
と言うのよりもこれ以上反論するとより酷いことになりそうだ。
そんな会話をしている間に、発車前の汽笛が駅構内に鳴り響き始めた。
どうやらニィア達の乗る汽車からだ。
それを聞き、ニィアは汽車の方へと振り向きゆっくりと歩き始める。
クッデ「…えぇ〜とニィア」
ニィア「ん?」
クッデ「やっぱ今年俺が行くよ…俺心配なんだよ。前回行った時も変な奴に絡まれたって聞くし…それに他の傭兵組合内にも危険な奴が沢山居るらしいし…それから」
ニィア「もぉ〜大丈夫だってば!!! 昔と違って私だって強くなってるんだし。それに今年の会議に"彼"が参加してくるとも限らないでしょ。クッデ君は心配性過ぎるのよ」
クッデ「けど」
メインバ「安心しなさい。私が付いてるんだから」
クッデ「余計に心配っす」
メインバ「それどう言うこと?それよりももう時間だから早く乗りなさい」
ニィア「は〜い」
クッデ「…」
不安が拭えないクッデは、どうしても納得がいかず言葉を止めてしまう。
それを見かねたニィアは、汽車へと向けて歩いていた足を止めて、クッデの方へ振り向くと急ぎ足近くへと寄って行き。
ちゅっ
クッデ「!!!??!?!!!?!?!!?!?!?!?!????!!!??!?!」
ニィア「それじゃ行ってくるね」
ニィアは先程と違い和かな顔で汽車へと乗り込んでいく。
その後1分もしないうちに汽車は汽笛を鳴らしながら走り始め、あっという間にニィア達を乗せた汽車は駅から見えない距離まで走り去って行った。
その頃駅のホームでは、クッデはボーとしながら地面に座り込んでいた。
そしてはっと我にかえると、顔を赤らめながら頭を抱えて地面に鬱ぎ込む。
クッデ「(あぁぁぁぁぁぁやっぱニィアには敵わないてぇえぇぇぇ)」
クッデは複雑な感情が入り混じった状態で、心の中で叫びまくる。
クッデ「(……はぁさて、取り敢えず傭兵組合に行こうか)」
???「羨ましいなぁお前ら」
クッデ「どわぁぁ!!!」
急に声をかけられ驚きながら後ろを振り向くと、そこには片手しかない黒髪の男が立っていた。
クッデ「お、お前は確か…リュウセイの部下の…えぇ〜と」
ナナシ「ナナシだ」
クッデ「そうそう…何で此処にいるんだ? お前もニィア達のお見送りに来たのか?」
ナナシ「あぁまぁ半分正解だな」
クッデ「……? 残りの半分は?」
ナナシ「残りの半分と言うより、本題はお前に用があって来たんだ」
クッデ「え?俺?」
ナナシ「あぁ、今日ニィアが総帥会議に付き人として参加すると聞いてな。多分お見送りに駅に来ることは分かっいたからな」
クッデ「お、おぉ…んで一体何の用なんだ?」
ナナシ「悪いがこの場で話すには時間がない。取り敢えず今は何も聞かずについて来て欲しい」
クッデ「いやそんな急に言われても」
ナナシ「分かってる。だから先に理由を話さず強引に、かつお前をこの一件に巻き込むことに関しては謝る。だが今お前しかいないんだ…俺の親友の…"命"を救えるのは」
クッデ「? 命…だと?何が何だか分からないが緊急事態ってのは理解したわ…分かった付いていくよ。ただしきちんと俺が納得できる説明をしてくれよ」
ナナシ「すまない…感謝する!!. それじゃあこっちに来てくれ、実はもう汽車のチケットは2人分買ってあるんだ」
クッデ「いや待てお前、流石に準備良すぎだろ」
ナナシ「もう後五分で出発するから早く立て歩けほら」
クッデ「…お前それが人に何かを頼む態度かよ」
ナナシに急かされ、無理矢理体を動かすと彼が案内する汽車の方へと渋々歩付いて行く。
???「……」
???「どうかしたんですか先輩?」
クッデのいる場所とは少し離れた場所にて、2人の男が汽車の入り口近くに立っていた。
片方はクッデと変わらない低身長で頭に紫のヘアバンドを身につけた灰髪の少年。
もう片方は高身長で片目が黒髪で隠れている男だ。
黒髪の男は灰髪の少年の質問に答えず、ジッとクッデ達の様子を伺っていた。
そしてクッデ達がとある汽車に乗り込むのを見ると此処で始めて口を開く。
黒髪の男「人生と言うのは偶然の連続だと言うが…全くもってその通りだな。まさかこんな所で出会い、そして"同じ場所"へと向かって行くんだからな」
灰髪の少年「……先輩?」
黒髪の男「すまん独り言だ。それより俺らも早く乗るぞ。取り返しのつかないことになる前にな」
灰髪の少年「任せてくださいよ。なんせ僕が付いてるんですから」
黒髪の男「あぁ頼りにしているぞ」
黒髪の男と灰髪の少年は、会話を終えると目の前の汽車へと乗り込んで行く。
それから数分もしずに汽笛が鳴り響き、クッデとナナシ、そして謎の2人の男を乗せた汽車は、ある場所へと向けて走り出して行く。
その先に何が待ち受けているのかも知らずに…。
〜to be contenued〜
キスの日にぴったりな話(




