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竜の声  作者: 水仙(スイセン)
溟海ノ使者編
35/43

第34話 クッデとルゾロ

自由な旅人(フリートラベラー)の本部から離れた町の広場。

昼間なら子供や老人達が集まり、それぞれ自由な時間を過ごしているのだが、時刻は日が沈みかけの夕方、広場には殆ど人がいなかった。

そんな広場の噴水のある場所に、荒い息を整えるクッデの姿があった。

ただでさえ本部から遠い場所へ、ボロボロの体を無理に動かしたのだから当たり前だ。

しかしクッデには、無理してでもあの場から離れなければいけない理由があった。


「珍しいな。お前が俺から逃げるなんて」


背後から聞き慣れた声が聞こえた。

元凶が来たのだ。

クッデは深呼吸をし、無理やり呼吸を整えるとゆっくりと後ろを向く。

左目を異様な形に変化させているルゾロが立っていた。


「普段のお前なら、何か馬鹿やらかしても逃げも隠れもせずに謝りに来るくせに」

「ルゾロさんこそ。普段なら有無も言わさず殴りかかってくるのに…」

「じゃあリクエストに応じて殴ってやろうか?」

「やめてください」


さっと右手拳をあげるルゾロに対し、クッデはマジのトーンで拒否する。


「まぁ、お前の話は後で聞いてやる。それよりもだ、何で俺が怒っているのか分かるか?」

「約束破って竜化(ドラゴン)の力を50%以上使用したから」

「分かってるなら話は早い。テメェ何度目だ俺の約束破ったの」

「……二度目です」

「三度目だ」

「二度」

「三度目だ!!」

「……はい」

「それをテメェは……いいか? この世に存在する魔法には、属性魔法(エレメント)獣化魔法(トランス)特殊魔法(ワンダー)の三種類あるが、そのうち最も扱うに当たって危険な魔法は獣化魔法(トランス)だが…理由は分かるよな?」

「…使用した際、暴走する確率が高い魔法だから」

「そうだ。そして暴走したらどうなる?」

「制御が効かなくなりみさかえなく暴れまわって、最悪の場合、死の危険性が高いため」

「よく分かってんじゃねぇか。特にお前の竜化(ドラゴン)はその暴走する確率が極めて高い。それをテメェは…何度言ったら分かるんだ!!!?」

「じゃあ制御の方法を教えてくれよ!!! 親父には教えたんだろ!?」

「テメェの親父は制御出来る力量と精神力があったから力の扱いを教えたんだ。だがテメェにはまだねぇ!!! もっと強くなってからではないと無理だ」

「ぐっ…」


ルゾロの気迫に押されたか、少し後ずさりをする。

正直な話ルゾロの言っている事は何一つ間違ってはいない。

現にクッデは過去二回、竜化(ドラゴン)の力を制御しきれずに暴走してルゾロさんのお世話になっているのだから。


「取り敢えずテメェの説教はまた今度にしといてやるよ。それでお前の用件はなんだ? お前の行動から察するになんか重要な事なんだろ?」

「どのみち説教は続けるんだな…まぁありがとうございます」


早めに説教を切り上げてくれたルゾロに対し軽く感謝の言葉を送ってから、クッデは本題を話し始める。


「あの場から離れたのは、ただニィアをルゾロさんから離したかったからだけ。彼女優しいから、これから話す内容の真実を、後で心読んで僕に伝えに来るから。だけどそれじゃあ駄目なんだよ、俺はルゾロさんの口からはっきりと聞きたいですよ」

「??? よく分からないが…その聞きたいって事はなんなんだ」

「今回の仕事で俺はある男と戦いました。そしてその男からある話を聞いたんですよ」

「だからなんなんだ!!!? さっさと用件を言え!!」

「7年前…俺に似て同じ魔法を使う男と戦ったと」

「!?」

「似てるだけでもしかしたら別人かもしれないけど、俺と同じ魔法……竜化(ドラゴン)を使える人間なんて俺には1人しか思い当たらないんだよ…"13年前に死んだって聞かされてる親父"のしかさ」


イラついていたルゾロの表情は、動揺しているのか少し口を開き冷や汗をかきはじめた。

この時クッデは何かを知っていると確信した。


「何故13年前に死んだ親父を7年前に見たって人がいるんですか」

「…」

「その顔は何か知っているんですよね? 一体何を隠しているんですか!! 話してください!!!」

「…」

「ルゾロさん!!!」

「…構えろ」

「え」


クッデは困惑した。

突如質問とは全く関係のない事を口ずさむからだ。


「お前俺に力の使い方を教えてくれと言ったな。教えてやるよ…ただし俺に一撃でも攻撃を入られたならば」

「話を逸らすつもりですが? こっちは真剣に」

「ついでに今のお前に対する質問にも答えてやるよ」

「!!?」


そう言いながら、ルゾロはポケットに手を突っ込み足を広げる。

この体勢をクッデは何度も見たことがあった。

ルゾロの戦闘体勢だ。

突然の提案に更にクッデは困惑し始めた…が、これはまたにもないチャンスだった。

たった一撃、ルゾロに対して攻撃を当てることができれば、二つの頼みがことを聞き入れてくれるのだから。


「…本当ですか?」

「あぁ、俺は嘘はつかないからな」

「今今嘘を付いているのを暴いてるんですけどね…けどいいよそれで」


クッデは両腕を構えて攻撃体勢を取り始める。

かと思いきや。

取り終わる前にクッデは一直線に、ルゾロに向かってダッシュし間合いを詰め殴りかかる。


「(正当法でやったって当てることは不可能だ!!! だったら不意打ちかますしか)」

「お前がそう言う手を使うことくらい、察されない俺だと思っているのか?」


ルゾロはサッと攻撃を避けると、膝をクッデの目掛けて放つ。

壮絶な威力だったためか、クッデは白目を剥きそのまま意識を失い倒れこむ。


「第1そんなボロボロの体で無理に決まってるだろ。普通日を開けてからやらないかなぁ…焦る気持ちも分からなくもないが」


気絶し聞こえないクッデに、1人ぶつぶつと話すルゾロは、彼を片手で持ち上げる。


「だがな…まだ真実を教える時じゃないんだよ…それだけは理解してくれクッデ。お前がもっと強くなったその時全て教えてやるからなだから…話を聞きたきゃ日を改めなクソガキ」


途中まで優しい口調で話していたが、最後の部分だけ怒り混じりの声で言うと、ルゾロはゆっくりと自宅の方へと歩き始めた。


「あらら〜やっぱバレちゃったか〜」


先程までルゾロがいた場所の近くの木に、もたれかかる形で、黒いローブを見にまとうヘルザが立っていた。


「ちょっと心配だったから見に来ただけなんだけどな〜けど今の話は聞き流されないよね〜日を改めてか〜今日は僕も疲れたしそうさせていただこうかね〜」


1人で勝手に納得すると、ヘルザはもたれかかっていた木から離れ、ルゾロが歩き出した方角とは別の方へと歩き始めた。

日が沈み暗くなっていく闇の方へと…。


〜溟海の使者編 完〜


〜総帥不在編に続く〜

大変お待たせしました

次回から新編です

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