第31話 "黄泉"のヘルザ
「今年チョコレート一個ももらえなかったヘルザ〜ここに参上や!!!」
「すみませんそれ二回も言う必要あるんですか?」
半ギレ顔で同じことを二回言うヘルザに対し、クッデは冷静にツッコミを入れる。
「大切な事だから二回言ったんだよクッデ君。分かるか?ん?」
「何ですかそれ…チョコ貰った僕に対しての八つ当たりか何かですか?」
「て言うかバレンタインとか何ヶ月も前の話だろ…どんだけ根に持ったんだよ」
「やめたげな、悲しい人なんだよ」
「(なんでもいいが早く助けてくれないかな)」
「まぁ〜この話に関しては後でゆっくりするとして〜」
話の根源であるヘルザは無理やり話を終わらせると、瓦礫が積み重なって出来た高台からクッデ達のいる場所まで飛び降りる。
そして此方を睨むナランディアの方へとゆっくり顔を向ける。
「まずはこの邪魔者を排除するとしよう」
優しい目つきだったヘルザは、冷たく鋭い目つきへと変化させると同時に何処からともなく身の丈程の黒光りする大鎌を取り出す。
その様子を目にしていたから、クッデは安堵の顔を浮かべてその場にどかっと座り込む。
ゾイ達も体を無理やり動かし、楽な姿勢を取ってヘルザの方へと向く。
「排除だと……お主なんぞにこのワシに勝てるとでも思っているのか!!!」
ナランディアはチョップするかのように、左手を垂直に下に振り下ろす。
「"空断"!!!」
魔法によって圧縮された空気の斬撃がヘルザ目掛けて真っ直ぐ放たれる。
しかし、ヘルザは避けるところか防御する様子すらなく、ただただニヤついている。
「"三途送り"」
小さく一言だけ呟くと、一瞬ヘルザの周りの空間が歪む。
すると先程とクッデに向けられた空気弾と同じく、何故かヘルザの少し手前で軌道がズレて横を通り過ぎていき、後方にある瓦礫の山を切断していく。
「ぬぅ…またもや軌道が…お主一体何をしたのじゃ!!」
「ふふふ〜何をしたでしょうか〜」
「ぐぅ…これならはどうじゃ!!!」
ナランディアは両手で空気の斬撃を作り出し、二つ同時に飛ばす。
しかし、その二つもヘルザに当たることはなく横を通り過ぎていく。
「ならばこうじゃ!!!」
次にナランディアは指一本につき小さな空気の塊を一つ、計十の空気弾を作り出す。
「"空小弾"!!!」
十の空気弾をヘルザに向けて放つ。
が、これも全ての横を頭上を通り過ぎ、見当はずれの場所で爆破する。
「どうしたの〜これでお終い〜?」
余裕な表情でヘルザはナランディアに対して煽る言葉を送る。
「調子に乗りよって小童がぁぁ!!! はぁぁぁぁ!!!」
ヘルザの煽りにカチンと来たのか、ナランディアは怒り狂ったような表情を露わにし、全身に魔力をため始める。
自身の拠点を崩壊させた技と同じ体勢だった。
「どんな手を使っているか知らぬが!!! これではさけれまい!!! "空気間滅"!!!」
全身に溜めた魔力を一気に解き放ち、先程同じく時速100kmの空気の壁がヘルザ達目掛けて放たれる。
その圧倒的魔力を見てもヘルザは表情を変えず、左手を前にかざす。
*****
「そう言えば、私ヘルザさんの戦闘一度だけ見たことあるんですが、彼の使う魔法ってどう言うのなん?」
「屈折」
「え?」
「ヘルザの持つ魔法の名よ」
メインバはポケットの中からタバコを取り出し、口に咥えふかす。
そして、自分に対して質問をして来たミココに対して説明を続ける。
「自身や付与した仲間の周りの空間を歪ませ、その空間内に入った飛び魔法や道具を例外なく全て屈折させ、向けられた人物に当たらないようする空間魔法よ」
「なにそれ無敵じゃん」
「残念ながら無敵ではないわ、この魔法には弱点があるのよ」
「弱点ですか?」
「えぇ。これは防護する技に当たっては決定的な弱点ね……ただ、その弱点も彼の前では無意味よ」
「え?それは何故ですか?」
ミココの更なる質問に対し、メインバはタバコの煙を吹かす為に一度言葉を止める。
その時、先程ニィアと会話をしている時と同じ地響きがし始めた。
その場にいた全員が、ほぼ同タイミングで戦いが繰り広げられている敵本拠地の方へと顔を向ける。
「まだこの地響き……リーダー達は大丈夫なんかね」
「…」
*****
荒い息を立てながら、膝をつき呼吸をするナランディア。
流石にあの大技を二度も打った為か、体力的に少しキツくなってきたのであろう。
周りは二発目の広範囲技によって、山積みになった瓦礫が崩れ始め、その上にまた新しく出来た瓦礫がつき重なっていき、その度激しい音が鳴り響き砂埃が舞う。
しかし、ナランディアの表情は変わるどころかより険しくなっていった。
それもそのはず、自身の目の前には特大の一撃を放ったのにも関わらず、無傷で平然と立っているヘルザが此方に向かって手を振っているからだ。
それどころか、ヘルザの後方にいるクッデら四人にも危害が加わっておらず、瓦礫が降るところか砂埃すら舞っていないのだ。
これほどの屈辱を彼は一度も味わったことがなかった。
しかし、此処までの過程で彼はあることに気が付いた。
「お主の魔法……どう言うものか詳しくはまだ分からぬが、どうやら防御面に特化した魔法じゃの」
「ありゃりゃ〜よく分かったね〜」
「数回見ればそれくらい猿でも学習できるわい。そして、お主の魔法の弱点もな」
「弱点〜?」
「先程からワシの魔法攻撃は全て軌道をずらされておる。つまりお主の魔法は、飛び道具又は遠距離魔法を全て外させる魔法じゃ。じゃが、物理攻撃はどうじゃ?体が支えとなってずらしようのない物理攻撃に関しては防ぐことはできんのではないのか?」
「わぉ〜たった数回見ただけで僕の魔法の弱点にまで気付くなんて〜流石に驚いたわ〜」
流石のヘルザも心から驚いたのか、鎌を地面に立たせて腕で支えながら、空いた手で拍手をする。
その様子を見てかナランディアはよりいっそう顔を歪める。
どうやらヘルザの今の行動を煽りと勘違いしたらしく、怒りが頂点にまで達したようだ。
ナランディアは静かに、右手空気の塊を作り出す。
しかし、今度は投げるのではなく、自身の手に纏わせ始めたのだ。
「"空圧拳"。これでお主もおしまいじゃ!!!!」
ナランディアは迷うことなく、ただ真っ直ぐにヘルザの方へと突っ込んでいく。
それに対しヘルザは と立てかけていた鎌を、くるくる回しながら手に持ち構える。
その顔は一瞬だが、真剣な顔つきに変わっていた。
「死ねえぇえ!!!」
爺さんとは思えない足の速さだった。
数秒で10m以上離れていたヘルザとの間合いを詰めて、既に拳の当たる射程内入っていた。
しかし、ヘルザはピクリとも動かず、静かに一言だけ発する。
「"奈落送り"」
その言葉を発したと同時だった。
こちらに向かって走ってきたナランディアが、突如ヘルザの目の前で顔面から地面にめり込んだのだ。
ヘルザは鎌を構えた状態から1mmたりとも動いていない。
そう……1mmも。
ナランディアが地面にめり込んでから数秒後。
ヘルザの周りの空間が少しずつ歪み始め、徐々にポーズが変化していき、最終的には武器を構える姿から鎌の裏側でナランディアの頭頂部を攻撃し終えた後の状態へと変わっていた。
周りに居た四季達は何が起きたのか理解出来ておらず、全員が首を傾げる。
ヘルザはいつ振り下ろしたのか分からないが、鎌を振り上げて肩にかける。
「(どうしよう………一撃で倒してしまった…僕の出番が終わってしまう)」
〜to be contenued〜
バレンタインの数日前に書いた奴だけどまぁ気にしない(




