第29話 四季vs素在 ①
時は遡り、クッデがハクセイを倒す数十分前の事。
〜ブラックサイド〜
クッデやロッド達と別れてから、一人地下2階を黙々と探索するブラック。
しかし、その姿はうつむきで、何処か苦しそうだった。
「よう、元気にしてっか? "サザン"」
聞き覚えのある声がして、ブラックは顔を上げる。
そこには、リュウセイの部下の一人のナナシが憎たらしい顔をしながら立っていた。
少しの間、立ち止まって見ていたが、普段通り無視して歩き始める。
「おいおい、無視すんなよサザn」
「その名を口にするな」
しつこく、ブラックとは違う名で呼ぶナナシに対し、ブラックは彼の首元に刀を近づける。
「なんだよ、オメェの本名なんだからええゃろ」
「ふざけるな!!! 俺はもうその名を捨てたんだ!!!」
「じゃあ、名前と一緒にこの刀も捨てればよかったじゃねぇか」
「!!! なんだと!!」
いつも冷静なブラックの表情は、怒りによって歪む。
刀を持つ手に力が入る。
「どぅらぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「「!!!?」」
謎の緊迫な空間は、叫び声と共に、床を突き破った男によって掻き消された。
そう、見覚えのある赤髪の男が。
「リュウセイ!!!」
「リーダー!!!!」
ブラックとナナシは同時に叫ぶ。
床を突き破ってきたのはリュウセイだったのだ。
しかし、リュウセイだけでは無く、もう一人見覚えのある青髪の男がいた。
リュウセイに担がれるように持ち上げられているゾイだ。
そんな彼ら二人の体は傷だらけで、特にリュウセイは左肩、ゾイは両足が血塗れだった。
「おい!! 二人ともその怪我どうしたんだ!!?」
「もたもたすんなゾイ!!! さっさとやりやがれ!!!」
「ぜぇ……ぜぇ……分かっとるわ!!!!」
リュウセイとゾイは焦って聞こえてないのか、ブラックの質問に答えず、二人だけで会話を進める。
ゾイは担がれたまま、リュウセイが突き破った床穴に手をかざし、氷で床を閉ざす。
「ほら閉じたぞ!!! 休んでねぇでさっさと走りやがれ!!!」
「指図するな!!! 俺はお前を担いでるんだぞ!!! 」
「おいお前ら!! 一旦落ち着け、何があったんだ?」
二人を無視して、走り出そうとするリュウセイを、ブラックは前に立ち塞がり止める。
そこでやっと、リュウセイとゾイは、ブラックとナナシに気がつく。
「ブラックにナナシ!!! くっ、話は走りながらするから、まず此処から離れるぞ!!!」
「は? 何を言って」
「いいから走れ!.!!」
血相変えて怒鳴りつけるリュウセイ。
だが、ブラックがその言葉の意味を理解するのが遅すぎた。
ゾイが閉ざした氷が、突如下から砕かれ中を舞った。
そのすぐ後に、空いた床穴から一人の男が飛び出してきた。
白髪……いや白毛の老人だった。
「逃がさんぞガキどもが」
「あの爺さんは……」
「アレは"素在のナランディア"!!! 此処の組織のボスだ!!!」
「何!!!こいつが!!!」
ブラックは驚くよりも先に武器を構え、ナランディアに対する攻撃態勢を取る。
「馬鹿野郎!!! 逃げろと言ってるだろ!!!」
「何言っているんだ!! この爺さんは討伐対象だろ!! なぜ逃げなきゃならないんだ!!」
「説明している暇はないんだよ堅物野郎!!! ほら攻撃来るぞ!!!」
リュウセイの言葉を発する最中に、ナランディアは右手に何かの魔力を貯める。
そして溜まりきったのか、ブラックに向けて小さな魔力の塊を投げつける。
「このようなもの……」
ブラックは技を見切り、目にも留まらぬ速さの居合で、魔力の塊を切断する。
「それに攻撃するな!!!!!」
「え、今n」
ブラックの攻撃後にリュウセイから叫ばれた言葉。
あまりの声の大きさだったため、ブラックは聞き取れなかった。
しかし、それを聞き返す事は出来なかった。
ブラックが切断した魔力の塊は、切られた直後に急激に膨張し破裂したのだ。
まるで、ダイナマイトが爆発したかのようなものだった。
「サザン!!!!!」
爆風に耐えながら、ナナシはブラックが立っていた砂埃が舞う場に向けて叫ぶ。
それから1、2秒経った後に、砂埃の中から身体中傷だらけのブラックが飛び出してきた。
「よかった……無事か」
「がっ……はぁ……無事なものか……しかし、一体何が起きたんだ?」
「空気弾だ」
「……空気弾?」
「そう、空気を無理矢理圧縮させ、元に戻ろうとする時の空圧を利用した技だ。彼奴は空気を自由自在に操ることの出来る魔法"空気"の使い手なんだよ…いてて」
「空気を操るって……そんな事が」
傷口をさすりながら、ブラックとナナシに対して、ゾイが説明する。
「無駄話はそこまでにしろ、攻撃来るぞ!!!!」
会話中のゾイたちに対し、リュウセイは走りながら忠告する。
すると、砂埃の向こうから先程と飛んで来た空気弾とは違う、細長い空気の塊が二発飛んできた。
「今度は何d」
「絶対に避けろ!!! 間違っても受け流そうとするなよ!!!」
凄い形相で叫び声ながらブラック達に忠告する。
今度はその忠告に対し反発しず、しっかりと見極め避ける。
そして驚愕した。
細長い空気の塊が通った壁や床は、刃物で切ったかのような切り口が出来上がっていた。
「なっ!!?」
「どうなってやがる!!」
「あれは空気を凝縮し、水圧カッターのように発射した言わば空圧カッターだ!!! 切れ味は見ての通りだ!!」
「此奴の氷も俺の装鋼鉄も果物でもカットするかのように簡単に切断しやがった!!! チートだろあれ!!!!」
「成る程、その左肩は初見で喰らった時の傷か」
「あぁそうだ……いちち……テメェに言うのは恥ずかしいが、正直油断したぜ」
「反省会中悪いが、追撃が沢山来たぞ!!!」
リュウセイに担がれながら、後ろの状況を見ていたゾイが3人に伝える。
砂埃が消えた場に立つナランディアは、鬼の形相で空気の魔法を放ちながら追いかけてきた。
「"空弾"!!! "空断"!!!」
物凄い数の空気の爆弾と斬撃が、ブラック一行を襲う。
辛うじて全員攻撃を避ける事が出来ていたが、ナナシ以外全員怪我を負っているためか、徐々に走るスピードが落ちてきている。
「リーダー!!! これ以上は辛いっす!!!」
「テメェ無傷だろうがぁ!!! もういい!!! 此奴捨てるz」
「おいやめろ俺を見殺しにする気か脳筋ゴリラ!!!」
「うるせぇ年中ストーカーやろぉ!!!」
「何つったオラァ!!!」
「お前らよくこんな時に喧嘩出来るな!! それより、逃げ去った後どうするつもりだったんだ!!? 何か考えはあったんだろ!?」
「一応望みは薄いが、お前とクッデと合流sドワット!!!……合流して四人で戦えばいけるかと思ったんだがどうだ!!」
「それは無理だ!! クッデは今強敵と戦ってる!! 彼の実力から勝てるとは思うが、正直あの怪物と連戦して戦える体力が残ってるとは思えない!!!」
「マジかよそれ……」
「くそぉっ!!! じゃあどうする!!! このままだと俺たち、この無差別攻撃にやられるか、崩れ始めたこの建物の瓦礫やなんかに生き埋めにされるのがオチだぞ!!」
「いやだ俺はまだフューチェさんデートすらしてないのn」
「やっぱお前ここで捨てる」
「やめてくれぇ!!!」
「生き埋め……そうだ!!!! お前ら手貸せ!!」
「あ? 何する気だ!!?」
「……ブラック……お前まさかだと思うが」
「そのまさかだ!! 彼奴生き埋めにするぞ!!!」
「はっ!!? テメェ何言ってやがるんだ!!! 第1どうやって生き埋めなんかn」
「説明する暇はない!! 俺の攻撃に続け!!」
一方的にリュウセイ達に命令するブラックは、急ブレーキと同時に体を反転し、鞘から一瞬刀を抜くとすぐに鞘に戻す。
するとどうだろうか、ブラック達とナランディアの間の道を全て切り刻まれ、床は瓦礫となり下の階へと崩れていく。
突然な出来事にナランディアは止まれず、抜けた床と共に下の階へと落ちていく。
「ずげぇ…一瞬で切りやがった…」
「感心してる場合か!!! こうなったら俺らも続くぞ!!」
「くっ…分かったよ!!! 付き合ってやんよ!!!」
ゾイに後押しされた為か、渋々リュウセイは承諾する。
そして肩に担いでたゾイを宙に放り投げる。
それに合わせて、ゾイはナランディアの上空に手を向けて氷の塊を造形する。
「"氷槌"!!!」
氷の塊が金槌の形に造形されると、手を振り下ろしナランディアに向けて落とす。
足場が落下しバランスが崩れたナランディアは、避けることもままならず、氷槌が直撃する。
その間にリュウセイは、動く右手を鉄化させ崩壊した床の上に位置する天井に手を埋め込ませる。
天井に破裂が走り始める。
そして言葉にならない叫び声と共に、右腕に全力を加える。
そんなリュウセイの腕力に耐えれるわけもなく、音を立てながら天井は崩れ始める。
瓦礫はゾイの氷槌に続き、ナランディアの頭上へと落下していく。
少しの間、辺り一面に激しい騒音が鳴り響いていたが、徐々に音も小さくなっていき、最後にはブラック達の疲れきった吐息だけが聞こえていった。
〜tobe contenued〜




