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竜の声  作者: 水仙(スイセン)
溟海ノ使者編
28/43

第27話 不完全な竜

〜クッデサイド〜

「なんか……呆気なかったな」


目の前の壁に埋め込んだハクセイを見ながら、クッデは失望したような声で呟く。

当のハクセイはと、ピクリとも動かない。

気絶したと見られるのは言うまでもない。


「まぁ、倒せたのだから良いとするか。さて、ブラック達を追いかけるとしようかな」


腕の竜化を解き、ハクセイに背中を向けて、ブラック達が進んだ方向へと歩みを始める。


「………ん?」


急に動きを止めて後ろを振り返る。

が、特に変わらず気絶しているハクセイが座り込んでいるだけだ。


「……気のせいか?」


首を傾げながら、クッデは顔の向きを戻す。

目と鼻の先に、鋭い爪が迫っている前方へ。


「!!?」


咄嗟の判断でクッデは片足を広げ、しゃがんで攻撃を避ける。

そして、敵の姿を確認する間も無く、しゃがんだ体勢で足払いをかける。

クッデの足払いは成功した。

敵は両足を同じ方向へ蹴られ、体勢を崩し一瞬中を浮いた。

その一瞬を見逃すクッデではなく、右手を竜化させた後、アッパーカットの応用で、腹に拳を放つ。

敵は天井に衝突し、そのまま落ちて仰向けで倒れた。

クッデは冷や汗をかきながら、敵の姿を確認する。

目を丸くした。

そこに倒れていたのは、今倒した筈の獣化したハクセイの姿だった。


「ど、どう言う事だ!!? 此奴は確かに、そこの壁に」


ガシッ


「なっ!?」


突然後ろから、何者かが脇の下から腕を回し込み、クッデの両腕を拘束してきた。

無論、すぐに後ろに向き敵の姿を確認する。

するとどうだろう、そこに居たのはそこの壁に倒れていたはずのハクサイだ。

前にも後ろにも、瓜二つの人物が存在しているのだ。


「いたたたた、全く酷いですねぇ。急に殴りかかるとは」

「お、お前…何故!?」

「何故やられていないのかですか?簡単な話、やられたフリをしていたのですよ。君が油断するのを待つためにね」

「違う、俺が聞きたいのはそれじゃない!!! 何故お前が2人もいるかだ!!? 兄弟とかそっくりさんとか、そう言う類のレベルじゃねぇよな!!!」

「あぁ、その事ですか。 うぅ〜ん、答えてあげてもよろしいんでしょうかね?」


クッデを拘束していたハクサイが、クッデの奥の方を見ながら質問する。

それにつられてか、クッデも前方を向く。

そこには、倒れているハクサイとは別に、獣化していないハクサイが立っていた。

今、この場に同じ人間が3人もいるのだ。


「別に問題ないでしょ、すぐにバレるんですから。それより君、いつまで寝てるんですか?早く起きなさい」


獣化していないハクサイが、倒れているハクサイに対して手を差し伸べる。

倒れているハクサイは、それに捕まり、体を起こした。


「いやいや、中々の威力でしたよ今の。君は喰らってないから分からないでしょうけど」

「えぇ、君らがぶつかった壁や天井のヒビ割れのぐあいから察しますよ」

「(なんなんだこの空間は)」


クッデは、状況を全く理解できていないためか、ポカーンと口を半開きしていた。


「"三頭犬(ケルベロス)"。それが僕の魔法の名前です」

「ケル…ベロス?」

「そうです。君の竜化(ドラゴン)と同じ、神話に出て来る、頭が3つある冥府の番犬をモチーフにした魔法です」

「(俺と同じタイプの魔法だと?)」

「そして、この魔法で出来ることは2つ。1つはケルベロスと同じ鋭い牙と爪と分厚い体毛をを変身で得られる事。そしてそして、もう一つがなななんと!!! "3人に分身する"事が出来るですよ」

「……成る程、この不思議な光景はそういう事か」

「そういう事ですね、人数的に有利な状況で戦う事が出来るんですよ」

「そして、一方的に敵に攻撃を加える事が出来るんですよ。こういう風にね」

「ガッ!!!」


丁寧に説明しながら、獣化していないハクサイが、拘束されているクッデの腹を殴りつける。

鋭い痛みが腹から身体中に伝わる。

しかし、後ろから押さえつけられてるため、倒れこむ事も出来ず、頭だけ下向きになる。


「なので、此方としては先程の人達が居られると戦いづらくて仕方がないのですよ。あ、今のは最初に僕が受けた分です。そしてこれが、今受けた分です」

「ゴハッ!!!」


下を向いていた頭に対し、膝蹴りを入れる。

腹に受けたよりもより遥かに痛い。


「はい、これでおあいことですね」

「ぐっ……竜技……」

「?」

「"風翼"!!!」


クッデが叫ぶと同時に、彼の周りから強い風が吹き起こった。

急な出来事だった為か、クッデを拘束していたハクサイは、風の勢いに負けて腕が外れて拘束が解かれてしまった。

その弾みに、クッデは後ろに向けて膝で攻撃をする。

後ろを見ずに攻撃したため、何処に当たったか分からないが、確実に後ろのハクサイに当たったという感触があった。

そのままクッデは地面を蹴り、目の前にいる獣化していないハクサイに対し、連続で爪攻撃する。

獣化していないハクサイは、後ろに下がりながら確実にクッデの攻撃をかわして行く。


「くそぉ!!! 何故当たらない!!!」

「はぁ、折角の竜化(ドラゴン)も、これでは宝の持ち腐れですね」

「んだとオラァ!!!!」


ハクサイの言葉にカチンと来たのか、無意識のうちに大振りの攻撃し始めた。

その事を後悔するのはそう遠くなかった。

クッデの大振りの攻撃を、ハクサイは身をかがめて避ける。

その後すぐだ、いつからいたのか、ハクサイのすぐ後ろに、獣化したもう1人のハクサイが攻撃の態勢を取りながら立っていた。

その事にクッデは、すぐに気が付いたがもう遅かった。


「"冥犬突き"!!!」

「グホラァッ!!!」


大振りの攻撃を外した事によるスキは大きく、避ける事も防御する事も出来ず、腰を深く落としてから放たれたハクサイの拳はクッデの顔面に直撃した。

殴られた勢いで、クッデは後方へと吹き飛ぶも、すぐさまもう一人のハクサイ目掛けて攻撃態勢をとる。


「今の肘打ちの分ですよ。オラァ!!!」


背後からの回し蹴り、

最初の一撃で吹っ飛ばした勢いと蹴りによる攻撃によって、威力が最初の一撃より遥かに高かった。

クッデの意識が、一瞬飛びそうになる程だった。

しかし、そんな暇はクッデには無かった。


「これでお終いです!!!」


回し蹴りを受け宙を浮いたクッデを、獣化してなかったハクサイはいつのまにか獣化して顔を鷲掴みにし、地面に叩きつける。

失いかけた意識がカッと戻ってきた。


「ガッ!!!……ぐっ……」

「どうです、僕達の連携攻撃は? この魔法の効果なのか、他の自分との意思疎通力が高くてですねぇ…このような連携も容易く行えるんですよ」


クッデを床に押さえつけながら、誇らしげな顔で淡々の話し始めた。


「それにしても、君はよくそのような"不完全な魔法"で今まで戦って来て生きていましたね」

「はぁ…はぁ…どう言う…事だ?」

「どう言う事だと言われましても……それは自分がよく知っているのでは無いんですか? 君は竜化(ドラゴン)の力を100%引き出していない…いえ、引き出せないのでしょう? その両腕のみの竜化と、先程の弱々しい風魔法が何よりの証拠ですよ」

「はぁ…はぁ…お前…何故…この魔法に…ついて…詳しい…んだ?」

「何故ですか? 簡単な事です、私以前に戦ったことがあるのですよ。君と同じ"竜化(ドラゴン)の魔法を操る男"と」

「!?」

「あの時は手酷くやられましたよ……いやはや、思い出すだけで……とても腹立たしいですね!!!」

「がぁぁぁぁぁぁ!!!」


頭を鷲掴みにする手の力を強める。

あまりの苦痛に、クッデは叫んではいられなかった。


「初めてですよ、仲間の前であのように無様に負けてしまったのは!!!! しかも、君のその髪型に色!!! 目つき!!! あの男と瓜二つ!!! 全くもって不愉快きわまりない!!!!」


ハクセイの息遣いが荒くなる。

その顔は、礼儀正しく優しそうな顔から、どんどん凶悪な殺人鬼の顔はと変貌していく。

周りの2人も、体を震わせながらその光景を、ジッと眺めていた。


「かぁぁぁぁ……そ……れは……ぐっ……いい…こと…がっ……きいた……ぜ……」

「ん? 今何と言いました?」


苦痛の叫びの中、何か言葉を発したのを感じたハクセイは聞き直す。

その時、彼は不意に頭を鷲掴みにする手の力を緩めてしまった。

苦痛が無くなった瞬間、クッデは片足でハクセイを蹴り飛ばす。

ハクセイは、吹っ飛ばされた勢いに、倒れそうになるが、後方で待機させておいたもう1人の自分に支えられ、倒れることはなかった。


「大丈夫ですか?」

「いてて、えぇ大丈夫です。少し油断しました」


蹴られた場所をさすりながら答える。

その表情は変えず、ギロっとクッデの方へと睨む。

その間に、クッデはよろめきながらも立ち上がっていた。

頭からは血が出ており、息をするたびに体が小刻みに震えていた。


「はぁ…はぁ…一つだけ…訂正しておくよ…」

「訂正? 何をですか?」

「俺が……竜化(ドラゴン)の力を…引き出せないって…話だよ…確かに…100%は引き出せなさ…だけど……今が10%だとしたら…俺は50%の力までなら…引き出せるんだけどな…」

「!!? そ、そんな苦し紛れな言葉!!信じるとでも!!」

「苦し紛れか……どうかは……この姿を見てからいいな!!!」


途切れ途切れで言葉を発するクッデは、着ていた上着を脱ぎ捨てる。

その目には光がなく虚ろだったが、何処か決意に満ちていた。

その目を見て危機感を感じたのか、ハクセイ達は身構える。


「(へへへ……カッコつけて言ってみたけど、こんなボロボロだし、何分持つか……それに本当は、この力使っちゃいけないんだけどな……けど、死にたくないし、此奴を倒さなきゃならならないしな……あの人の情報を!!!)」


〜tobe contenued〜

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