第26話 脳筋とストーカー
〜クッパ&ブラックサイド〜
番犬のハクセイ。
クッデ達の前に突然現れた黒髪の男は、にこやかな顔でそう答える。
「(異名持ちだと? メインバさんの話では、この組織には、ボスを除いて異名持ちは居ないと聞いていたが……情報の間違いか?……それか組織内で付けられたものか?……それとも……」
知る情報と違う現状に、疑問を抱くブラック。
その手は無意識に刀へ伸びていた。
「待てブラック。俺がやる」
「……何?」
「お前は十分戦ったろ?それに、そんな状態で戦ったって、勝てるわけないだろ?」
「ぐっ……そ、そんな事は」
「変な意地はらずに…な?」
ブラックの肩を手でポンポンしながら、クッデは言う。
不満そうな顔をするブラックだったが、クッデの自信に溢れている笑顔を見て、小さく溜息を吐きながら、渋々刀から手を離した。
「分かった、此処は任せるよ。よしお前ら、此処はクッデに任せて、お前たちは彼女らの救助を」
「あ、もう回収して退散準備始めてます」
「早いな!? 逃げる気満々かお前ら」
「えへへへ」
「褒めてないからな」
半分呆れながら言うブラックに対し、イソイソとロッド達は被験者達を担ぎその場から離れる。
ブラックも、全員が運び出されたのを確認してから、ハクセイと名乗る男とは逆の方へと走り出す。
「よし、行ったな。にしてもお前、よく律儀に待っててくれたな。こう言う時って、『逃がさんぞぉ!!』とか、悪い顔しながら襲い掛かってくるもんじゃないのか?」
「そうですか?ご希望とあらばやりますけど♪」
「いえ結構やらなくていいです」
「あら残念。ただ安心してください。此方としては、敵の数が減ってくれるのが好都合なだけで、あまり深い意味はありません」
にこやかな表情を崩さず、ハクセイは答える。
それに対して、クッデも笑顔で返す。
「それでは、早速始めましょうかね」
ハクセイはそう言うと、体に魔力を溜め始めると、そびえ立つ壁のようになっていき、獣を彷彿させる体毛が生え始めた。
「(まぁ、"番犬"の異名から察していたが、やはり想像通りでいいのかね)」
クッデは静かにハクセイの変身を見守りながら、ただ考察を始める。
そして、数秒で彼の変身は止まった。
体は通常の二倍近く大きくなり、身体中から紺色の体毛が生え、歯は鋭い牙へと変わっていた。
「"犬化"。そうだろ、お前の魔法は?」
「ふふふ、どうでしょうか?手合わせしてみたら分かるのではないでしょうか?」
「それもそうだな。んじゃ遠陵なく」
クッデはハクセイの全体変身に対して、両腕のみ一瞬で竜化させ、一瞬で間合いを詰める。
そのスピードに対応できなかったのか、ハクセイは防御態勢も取る間も無くクッデの竜化した拳による攻撃を、まともに受け、そのまま壁まで吹き飛んでいった。
***
〜リュウセイサイド〜
「よぉよぉ、何してんだ?」
地下へと通じる階段を見つけ、地下二階まで降りてきたリュウセイ一行。
しかし、それより下に行く階段が見当たらず、この階の探索を始めていたのだが、ある程度進んだ先に場に似合わない氷の世界が広がっていた。
そして、その中心には人が閉じ込められている氷の柱と、それにもたれかかるゾイの姿があった。
「何って、敵の幹部を尋問中」
「尋問中てか、用済みになって刑執行し終わった後だろこれ。んで、ボスの居所は分かったのか?」
「……てへぺろ」
「じゃねぇよ!!! 何お前聞き出されなかったのか!!? どうすんだよ!!! ボスの居所わかんねぇじゃねぇか!!! と言うか、この凍った奴誰なんだよ!!!」
「しらね、名前聞いてないし。名無しの権兵衛でいいんじゃない?」
「お前の尋問大失敗じゃねぇか!!!」
「落ち着け脳筋ゴリラ、何が起こったか知らないが」
「お前のせいだわ年中ストーカー野郎!!!」
「なんだその変なあだ名、ネーミングセンス0か」
「お前には言われたくないわ!!!」
「なんだと? まぁけど安心しろよ、ボスの居所なら検討がついてるからよ」
「……本当だろうな?」
「あぁ、どうやらこの下にまだ階層がありようでさ。多分そこに居るから、お前のその鍛えられた筋肉で、床ぶち破って下の階に降りようぜ」
「お前の方が脳筋じゃねぇか!!!」
「さぁ、早くやるのだ!!!」
「テメェ……この戦いが終わったら一発ぶん殴ってやるからな!!! おいナナシ!!!」
「ん?マシンガントーク終わったか?」
「あぁ終わったよ。それより、俺は今からこのストーカー野郎と下の階に降りるから、お前は部下連れてこの階の制圧と、コミュ障とリア充に、俺達が下の階に向かった事を知らせておけ」
「へ〜い」
ぼけ〜としていたナナシは、適当に返事をして返す。
そして、それを聞いたリュウセイは、地面に目を向けて、両拳を鉄化する。
そして、思いっきり振りかぶるってから、殴りつける。
ゾイの腹に向けて。
「やっぱ今殴るわ」
「ぐぼらぁ!!!」
急な出来事に、ゾイは目を丸くし、殴られた腹を抑えながら、その場で膝をつく。
「がっ……ぐっ……お、お前……」
「よし、そんじゃ床ぶち抜くからお前ら離れてろ」
「無視か……畜生がぁ……」
小刻みに震えるゾイを横目に、リュウセイは再度振りかぶり、今度は床めがけて殴りつけた。
***
結果は大成功だった。
床をぶち破った先には、新たな階層が広がっていた。
リュウセイは、崩れ落ちる床の瓦礫と共に下の階へと降りて行き、少し遅れてゾイも降りてきた。
まだ腹をさすっていた。
「お前の言う通り、本当に一階層下があったな」
「……信じてなかったのかよ。まぁ、俺も100%の自信があったわけではないがな。だが気をつけろよ。この階の何処かに、此処の組織のボスがいる筈だからな」
「へいへい、分かってるよ。にしてもここ、廊下とかじゃなくて、何処かの部屋だよな?なんか無駄にだだっ広い空間だがよ」
軽く周りを見渡しながら言うリュウセイ。
どうやら、リュウセイたちが降りてきた場所は、何処かの部屋のようだ。
上の階の廊下より薄暗く、だだっ広い空間に、横の方には大理石の柱が立っており、地面には赤い絨毯がまっすぐ引かれていた。
「なんかさ本とかで読んだ、王座がある部屋に似てるな」
「あぁ、分かる分かる。そこの扉から入ったら、横一列に兵士がズラァァって並んでるんやろ?」
目の前にある扉に指をさしながらゾイが答える。
先程まで口喧嘩していた二人とは思えないほど、仲良くケタケタ笑いながら話す。
「そうそう、それでその先にある王座に…偉そうに王様が座っててよ」
話の流れで、二人はほぼ同時に後ろを振り返る。
そこには、予想通り王座のような椅子が設置してあった。
そして、偉そうに椅子に腰掛ける人もいた。
「………」
「「………」」
目があった。
椅子に腰掛ける人は、ジッと此方を見ていた。
二人はゆっくりと扉の方へと顔を戻し、小声で話し合う。
「……なんか居たぞ」
「あれだろ?王様だろ?」
「王様がこんな所にあるわけないだろ」
「じゃあ彼奴だれだよ?」
「え、それはあれだろ、此処のボスじゃないの?」
「あぁ、成る程ね〜あはははは」
「馬鹿だな〜あはははは」
「はははは」
「はははは」
「……」
「……」
少しの間静寂が訪れた。
そして、リュウセイとゾイは目を合わせて、目合図を取ると同時に魔法を発動する。
「"装鋼鉄"!!!」
「"氷槍"&"氷盾"!!!」
リュウセイは全身鉄化、ゾイは右手に氷の槍を、左手に氷の盾を造形装備させ、王座に座る男に対して突っ込んでいった。
その姿を見た王座に座る男は、ゆっくりと右手を前に突き出し、ぱちんと指鳴らした……。
〜to be contenued〜




