第25話 その頃自宅では
自由な旅人が、溟海の狂鮫と激突している頃。
ある町の一角にある家の前に、腕を組んで壁に寄りかかる一人の青年がいた。
数時間前に、クッデに戦いを挑んだ夜狼の狩人所属のデラックだ。
先程の戦い、邪魔が入り勝負は無かった事になってしまったが、彼はどうも納得がいかず、この短時間でクッデの住所を調べ上げわざわざ来たと言うのだ。
「だと言うのに、クッデところか一緒に住んでいるって言う爺さんも留守とは……どうしたものか」
不満たっぷりの顔で、ぶつぶつ独り言を言う。
それと同時に、ずっとある事を考えていた。
「(にしてもあの時、俺とクッデの戦いに殺意を含んだ目線を送って、中断させたのは一体誰なんだ?クッデの奴は、心当たりがあるような様子だったが……)」
戦闘の中断の原因となった殺意の視線の正体をずっと考え込んでいた。
「俺の家になんかようか?」
急に声をかけられたことにより、ビクッとするデラック。
すぐに声のした方へ顔を向けると、黒い帽子を被り食料の入った封筒を手にしていたデラックと目線の合う程の男が立っていた。 ※デラックの身長は195cmです
顔にシワが出ているところから、年齢はデラックよりもずっと歳上だと思われる。
「……『俺の家』って事は、あんたがクッデと同居してるっていう爺さんか?」
「爺s……まぁいい。確かに俺がクッデの野郎に部屋貸している者だ」
「そうか……んでよ爺さ」
「"ルゾロ"だ。今度爺さんと呼んだらぶん殴るぞ」
不機嫌な表情をしながら、ルゾロは拳をデラックの顔前まで突き出す。
「お、おう、すまないな。えぇ〜と…ルゾロさんか?俺はあんたと同居してるクッデに用があるんだが、何処にいるか知らないか?」
デラックは軽く謝罪をし、本題を切り込む。
それを聞いたルゾロは、呆れたようにため息をつき、鋭い目つきでデラックを睨む。
「まだ諦めてなかったのか小僧」
「!?」
反射的に後ろへ下り、攻撃態勢をとるデラック。
その顔は青ざめていた。
「(この爺さん!今朝の出来事を知っているのか!?それにこの視線は!!?)」
「警告はしたんだがな、どうやら効果は無かったようだな」
「(間違いない!!あん時の殺意混じりの視線だ!!)」
「どうやら、お灸を添えなきゃいけないようだな」
「(やばい……この爺さん何かがやばい!!)」
ジリジリと近づいてくるルゾロに対し、デラックは震えながら後ろへと下がっていく。
「どうした? 逃げるのか?」
「なに!?」
「どうやらとんだ腰抜け野郎だったようだな」
「くっ……言わせておけば!!俺は誇り高き、夜狼の狩人の傭兵組合員だ!!あんたが何者だか知らないが!!此処で逃げたらロドンさんにどやされるだよ……だから!!」
青ざめた顔から覚悟を決めた顔つきへと表情を変え、お得意のスピードで、一瞬でルゾロの背後へとまわる。
「あんたを倒して!!クッデの居場所を吐かす!!」
右手を拳に変え、ルゾロの後頭部に向けて殴りつける。
殴りつけようとしたのだ。
だが、その拳はルゾロに当たることは無かった。
ゴンッと、鈍い音がすると同時にデラックの拳が弾かれたのだ。
ルゾロの後頭部とデラックの拳の間を何か硬い物が遮った。
しかしそれは、デラックの拳が衝突すると同時に、煙のようにすぅ〜と消えていったのだ。
ほんの一瞬の間だけ出現したため、デラックはそれが何なのか分からなかった。
しかし、それが何だったのか考える暇は無かった。
何故なら、デラックの目には身の毛のよだつような衝撃的なものが飛び込んできたからだ。
目玉だ。
自分の背丈の倍近く目。
そんな筈は無いと思ったが、やはり紛れもなく目だった。
体はなければ、顔もない。
ただただ目だけがそこに出現していた。
それは、確実に此方を見ていた。
不気味以外のなにものでもない。
デラックは、ただただ戦慄した。
その目よりも、その目から発しられる視線に。
「ロドンっつたな、お前んとこの傭兵組合総帥の名前は。その"ハゲ"にもじっくりお灸を添えなきゃな」
「アッ……アッ……」
デラックの震えは止まらなかった。
その震え度合いは、生まれて初めてといえる程だった。
ルゾロは背後に立つデラックの方へと体を向けて、容赦なく彼の顔を鷲掴みする。
そんな彼の顔には、目の前にある巨大な目と同じ、小さな目が顔あちこちに、くっ付いていた。
「その前にお前が先だ」
笑っているのか怒っているのか、全く分からない表情で、ルゾロは話す。
この時、デラックにはある言葉が頭の中をよぎった。
『あぁ、弱いさ…俺も…お前も…世界は広すぎる』
今朝クッデに言われた言葉だ。
「(今理解した。クッデの言っていたのはこの爺さんの事だったのか!?)」
デラックは後悔した。
この化物に挑んだことを……。
〜to be continued〜
大変お待たせしました




