第24話 "黒刀"のブラック
〜ゾイサイド〜
「行き止まりか」
砂の魔法を操るターバンの男から逃げていたゾイ。
しかし、この建物に詳しくないゾイは、詳しいターバンの男によって行き止まりまで追い込まれていた。
「さぁ、追いかけっこはここまでだ。此処で死ぬか、観念して、俺たちに命乞いするか、選ぶがよい」
ターバンの男は、両手に砂の魔法を纏いながら、ゆっくりとゾイに近づいて行く。
それに対しゾイは、怯える様子も無く、笑顔で答える。
「んじゃ、『お前を倒す』で」
ターバンの男は、少し困惑したが、変わらず歩み寄って行く。
その時、パリッと、何かが割れるような音がした。
ターバンの男は足を止め、サッと足元を見る。
すると、ターバンの男の足が徐々に凍り始めたのだ。
「なに!!どうなってやがる!!?」
「"氷拘束"。 気が付かなかったのか? 此処の行き止まりを見た瞬間に、お前の足元に任意で発動させれる氷の罠を貼っておいたのさ」
「なん……だと……」
「さてさてさぁ〜て、教えてもらおうか。君らのボスの居場所をさ」
立場が逆転したゾイは、悪いを顔をしながら、ターバンの男へと近づいていく。
〜クッデ&ブラックサイド〜
「……お前何したんだ?」
状況を飲み込めていないのか、クッデはその場でポカンとした表情でブラックを見る。
彼の周りには、先程まで狂った目で襲ってきた被験者達が倒れ込んでいた。
外傷はなく、ただ気絶をしているだけのようだが。
「峰打ち……じゃねぇよな?刀当ててないし。何したんだ?」
繰り返すように質問をするクッデ。
が、ブラックは何も答えない。
いつものように無視をしているわけではなさそうだ。
ただ、鞘に収めた刀に手をかけ、集中しているようだ。
「(ブラックとは長い付き合いだが、一緒に戦ったことないから、どういう戦闘方なのかよく分からないんだよな)」
そんな事を考えているクッデに対し、被験者たちは容赦無く手に持つ武器で襲いかかる。
それに対しクッデは、攻撃を見ずに軽く避ける。
「(ま、何はどうあれ。此奴らを傷付けずに済むに越したことは無いし。俺は言われた通り、此奴らの武器の無力化に専念するかね)」
避けた後に、竜化させた腕で被験者達に向けて振り払う。
無論被験者達には当てず、竜化させた事によって出来た、鋭い爪で被験者達の武器を切り刻む。
その事を見てか、被験者達は少しだが、後ろに後退りする。
そのタイミングを待っていたのか。
無言だったブラックは、ばっとクッデの前に行き、刀を振り下ろす。
が、刀は被験者達に当たらず空を切るだけだった。
被験者達には当たっていない……筈なのだが。
被験者達は、急にガクガク震えだすと思えば、次々とその場に倒れこむ。
クッデは、先程と同じく口をポカンと開けてブラックを見つめる。
そんなクッデを見ずに、ブラックは刀を鞘へとしまい、また集中し始める。
「(本当にどうやってんだ此奴は……まるで、操り人形の細糸を切っているかのようだが……ん?)」
表情変えずに、ブラックの攻撃方法を考え続けるクッデだが、ブラックを見ているうちにある事に気が付いた。
「(素振りを四、五回やっただけで、息が荒れてやがる。もしかしてこの攻撃、自分に対して相当な不可がかかっているのか?だとしたら、ゆっくりしてらんねぇなぁ)」
開けていた口を閉じ、真剣に考える。
そんな彼の後ろから、嫌な機械音が鳴り響き始めた。
「この音は、まさか!?」
クッデは後ろを振り返る。
振り返った先には、始めの方に壁をぶち破ってきた女が、鎖鋸を振り回しながらクッデ目がけて走ってきていた。
「うぉぉぉぉぉ!!やっぱりこれかぁぁ!!」
クッデは急いで両腕で鎖鋸をガードする。
凄まじい音と火花がその場から飛び交う。
「ぐぉぉぉぉ!!なんて威力だ!!これは長くは持たないぞ!!」
歯を食いしばりながら、必死に堪える。
竜の鱗とは言え、高速で回転する無数の刃によるダメージは、完全に防ぐ事は出来ないらしい。
「アハハハハ、アナタタチ、コロセバ、キモチイイ、クスリ、タクサンモラエル、ダカラ、コロス!!」
女は狂気じみた目を向けながら、カタコトで話す。
麻薬による影響で、上手く話せれなくなっているの
だ
「(くっ、やばいな。何とかしてこの武器を破壊して、ブラックの負担を減らさなきゃ。だがこの体勢でどうやって壊すか!?)」
攻撃を防ぎながら、必死に考える。
「背中借りるぞ」
「え?どわ!!」
背中が急激に重くなり、ガクッと重心が下がる。
そんなクッデの事を気にもとめず、ブラックは鞘から刀を抜き振るう。
鎖鋸の刃部分の真っ二つに切られた。
鎖部分が切れた事により、鎖鋸の機能は停止した。
姿勢を崩したクッデは、背中から倒れていく。
女は鎖鋸に加わった攻撃の反動で、後ろへとよろめく。
「ヨクモ、ヤッタナ!!」
女はよろめきながらも、残った半分の鎖鋸持ち、ブラックに襲いかかろうと体勢を整える。
しかし、何か違和感を感じたのか、持っていた鎖鋸へと目を向ける。
早技だつた。
他の部品は全てバラバラとなり下に落ちており、残っていた筈の鎖鋸が、取っ手部分のみとなっていた。
女がよろめいている隙に全て斬ったのだ。
女は、震えながら正面を向く。
そこには、先程とは違う、ドス黒いオーラを放っているブラックがいた。
その姿は、何倍にも大きく見えた。
女の震えは激しくなる。
ブラックはゆっくりと刀を構える。
「ヤ、ヤメテ、チカ、チカツガナイデ」
女は目には涙目が浮かび始めていた。
が、ブラックは動きを止める様子はなかった。
そして、鋭い目で睨みつけると、女に向けて刀を振り下ろす。
「い、イやァァァァァァ!!!」
「はぁ…はぁ…これで、全員か?」
「あぁ、被験者は全員気絶したよ」
息荒く、膝をつくブラックに対し、クッデは残った被験者の武器を壊しながら答える。
ブラックの近くには、先程まで鎖鋸を振り回していた女が、仰向けで倒れていた。
他の被験者同様気絶しているようだ。
「さて、そろそろ教えてくれないか?お前どうやって彼女らを気絶させたんだ?」
「ん?あぁ……お前には教えてなかったか」
「(聞いても教えてくれなかったからな)」
「これは、この魔力の宿った刀、妖魔器"不感"の効果でな。此奴は心の糸と言うものを斬る事によって、人の感情を増大させる事が出来るんだ。例えば、今回の場合だと、"斬られる"と言う恐怖を、心の糸を斬る事によって、"死ぬ"と言う更なる恐怖に塗り替える事が出来るんだ。それによって、精神の弱い奴らはその影響に耐えられず、気絶するって仕組みさ。だが、下手すればショック死もする確率もあるため、調整に精神を集中しなければならない。それに、精神の弱い奴しか気絶させることは出来ないから、強者には一切効かない為、使い所が限られているんだよな。まぁ、強者との戦いは一瞬の油断が勝敗を左右するから、使い方次第では戦況を有利にする事もできるがな。さて、此処まで質問はあるか?」
「スミマセン、ハジメカラ モウイチド オシエテクダサイ」
目を丸くしながらクッデは答える。
その回答を分かりきっていたのか、ブラックは頭をかきながら、深い溜息をつく。
「心斬る、敵怯える、気絶する、ok?」
「ok」
表情変わらず答えるクッデ。
多分理解できていない。
そう考えるブラックは、説明する事を諦めた。
「クッデ君〜、ブラック君〜、大丈夫ですか〜!!」
妙に明るい声が、何処からか聞こえて来た。
声のした方を見ると、星型のタトゥーを顔に入れている金髪の男が、数人の人を引き連れながら、此方に走ってくる。
ロッドだ。
クッデは気が付かなかったが、どうやらこの戦いに来ていたようだ。
「丁度良い、彼らに説明して、この被験者達を運んでもらおうか」
少しよろめきながらも、その場から立ち上がろうとするブラック。
それを見てか、クッデは手を差し伸べて、立つの手助けする。
「悪い、ありがとな」
「別に良いよ。んじゃ、お前はこのままロッド達と一緒に上に上がりな」
「そうしたいが、まだ幹部にボスもいるこの状況下で、俺が抜けるのはまずいだろ」
「あはは、言ってくれるねぇ」
クッデは笑顔でケタケタ笑う、それに対して、ブラックも笑みを浮かべて返す。
「あらら〜、やっぱこの子らじゃダメだったか〜」
「「!?」」
何処からか、見知らぬ声が聞こえてきた。
クッデとブラックは、すぐさま辺りを見渡すが、何処にも姿が見えない。
「ま、そこらの凡人に武器持たせた程度じゃあ無理に決まってるか♪」
「誰だか貴様!何処にいる!!」
クッデは、声を荒げながら声の主に向かって叫ぶ。
ロッド達も、その異変に気がついたのか、歩みを止める。
「おぉ〜おぉ〜怖いねぇ〜、ちゃ〜んと自己紹介するから〜落ち着きな〜」
声の主はそう言う同時に、床の下からぬぅ〜っと、一人の男が透けて出てきたのだ。
「な、なんだアレは、どうやって現れたんだ!?」
ロッドは驚きの表情を隠しきれず、言葉を漏らす。
周りに居た仲間達も、響めきを隠しきれなかった。
床から出てきた男は深々とお辞儀をすると、自己紹介を始める。
「私の名前は"ハクセイ"。世間では、"番犬のハクセイ"と、呼ばれているものですよ」
そう説明すると、頭を上げて、ニカッと笑う。
鋭く尖った、歯を見せながら……。
〜to be continued〜




