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竜の声  作者: 水仙(スイセン)
溟海ノ使者編
25/43

第24話 "黒刀"のブラック

〜ゾイサイド〜

「行き止まりか」


砂の魔法を操るターバンの男から逃げていたゾイ。

しかし、この建物に詳しくないゾイは、詳しいターバンの男によって行き止まりまで追い込まれていた。


「さぁ、追いかけっこはここまでだ。此処で死ぬか、観念して、俺たちに命乞いするか、選ぶがよい」


ターバンの男は、両手に砂の魔法を纏いながら、ゆっくりとゾイに近づいて行く。

それに対しゾイは、怯える様子も無く、笑顔で答える。


「んじゃ、『お前を倒す』で」


ターバンの男は、少し困惑したが、変わらず歩み寄って行く。

その時、パリッと、何かが割れるような音がした。

ターバンの男は足を止め、サッと足元を見る。

すると、ターバンの男の足が徐々に凍り始めたのだ。


「なに!!どうなってやがる!!?」

「"氷拘束(アイストラップ)"。 気が付かなかったのか? 此処の行き止まりを見た瞬間に、お前の足元に任意で発動させれる氷の罠を貼っておいたのさ」

「なん……だと……」

「さてさてさぁ〜て、教えてもらおうか。君らのボスの居場所をさ」


立場が逆転したゾイは、悪いを顔をしながら、ターバンの男へと近づいていく。








〜クッデ&ブラックサイド〜

「……お前何したんだ?」


状況を飲み込めていないのか、クッデはその場でポカンとした表情でブラックを見る。

彼の周りには、先程まで狂った目で襲ってきた被験者達が倒れ込んでいた。

外傷はなく、ただ気絶をしているだけのようだが。


「峰打ち……じゃねぇよな?刀当ててないし。何したんだ?」


繰り返すように質問をするクッデ。

が、ブラックは何も答えない。

いつものように無視をしているわけではなさそうだ。

ただ、鞘に収めた刀に手をかけ、集中しているようだ。


「(ブラックとは長い付き合いだが、一緒に戦ったことないから、どういう戦闘方なのかよく分からないんだよな)」


そんな事を考えているクッデに対し、被験者たちは容赦無く手に持つ武器で襲いかかる。

それに対しクッデは、攻撃を見ずに軽く避ける。


「(ま、何はどうあれ。此奴らを傷付けずに済むに越したことは無いし。俺は言われた通り、此奴らの武器の無力化に専念するかね)」


避けた後に、竜化させた腕で被験者達に向けて振り払う。

無論被験者達には当てず、竜化させた事によって出来た、鋭い爪で被験者達の武器を切り刻む。

その事を見てか、被験者達は少しだが、後ろに後退りする。

そのタイミングを待っていたのか。

無言だったブラックは、ばっとクッデの前に行き、刀を振り下ろす。

が、刀は被験者達に当たらず空を切るだけだった。

被験者達には当たっていない……筈なのだが。

被験者達は、急にガクガク震えだすと思えば、次々とその場に倒れこむ。

クッデは、先程と同じく口をポカンと開けてブラックを見つめる。

そんなクッデを見ずに、ブラックは刀を鞘へとしまい、また集中し始める。


「(本当にどうやってんだ此奴(ブラック)は……まるで、操り人形の細糸を切っているかのようだが……ん?)」


表情変えずに、ブラックの攻撃方法を考え続けるクッデだが、ブラックを見ているうちにある事に気が付いた。


「(素振りを四、五回やっただけで、息が荒れてやがる。もしかしてこの攻撃、自分に対して相当な不可がかかっているのか?だとしたら、ゆっくりしてらんねぇなぁ)」


開けていた口を閉じ、真剣に考える。

そんな彼の後ろから、嫌な機械音が鳴り響き始めた。


「この音は、まさか!?」


クッデは後ろを振り返る。

振り返った先には、始めの方に壁をぶち破ってきた女が、鎖鋸(チェンソー)を振り回しながらクッデ目がけて走ってきていた。


「うぉぉぉぉぉ!!やっぱりこれかぁぁ!!」


クッデは急いで両腕で鎖鋸(チェンソー)をガードする。

凄まじい音と火花がその場から飛び交う。


「ぐぉぉぉぉ!!なんて威力だ!!これは長くは持たないぞ!!」


歯を食いしばりながら、必死に堪える。

竜の鱗とは言え、高速で回転する無数の刃によるダメージは、完全に防ぐ事は出来ないらしい。


「アハハハハ、アナタタチ、コロセバ、キモチイイ、クスリ、タクサンモラエル、ダカラ、コロス!!」


女は狂気じみた目を向けながら、カタコトで話す。

麻薬による影響で、上手く話せれなくなっているの


「(くっ、やばいな。何とかしてこの武器を破壊して、ブラックの負担を減らさなきゃ。だがこの体勢でどうやって壊すか!?)」


攻撃を防ぎながら、必死に考える。


「背中借りるぞ」

「え?どわ!!」


背中が急激に重くなり、ガクッと重心が下がる。

そんなクッデの事を気にもとめず、ブラックは鞘から刀を抜き振るう。

鎖鋸(チェンソー)の刃部分の真っ二つに切られた。

鎖部分が切れた事により、鎖鋸(チェンソー)の機能は停止した。

姿勢を崩したクッデは、背中から倒れていく。

女は鎖鋸(チェンソー)に加わった攻撃の反動で、後ろへとよろめく。


「ヨクモ、ヤッタナ!!」


女はよろめきながらも、残った半分の鎖鋸(チェンソー)持ち、ブラックに襲いかかろうと体勢を整える。

しかし、何か違和感を感じたのか、持っていた鎖鋸(チェンソー)へと目を向ける。

早技だつた。

他の部品は全てバラバラとなり下に落ちており、残っていた筈の鎖鋸(チェンソー)が、取っ手部分のみとなっていた。

女がよろめいている隙に全て斬ったのだ。

女は、震えながら正面を向く。

そこには、先程とは違う、ドス黒いオーラを放っているブラックがいた。

その姿は、何倍にも大きく見えた。

女の震えは激しくなる。

ブラックはゆっくりと刀を構える。


「ヤ、ヤメテ、チカ、チカツガナイデ」


女は目には涙目が浮かび始めていた。

が、ブラックは動きを止める様子はなかった。

そして、鋭い目で睨みつけると、女に向けて刀を振り下ろす。


「い、イやァァァァァァ!!!」





「はぁ…はぁ…これで、全員か?」

「あぁ、被験者は全員気絶したよ」


息荒く、膝をつくブラックに対し、クッデは残った被験者の武器を壊しながら答える。

ブラックの近くには、先程まで鎖鋸(チェンソー)を振り回していた女が、仰向けで倒れていた。

他の被験者同様気絶しているようだ。


「さて、そろそろ教えてくれないか?お前どうやって彼女らを気絶させたんだ?」

「ん?あぁ……お前には教えてなかったか」

「(聞いても教えてくれなかったからな)」

「これは、この魔力の宿った刀、妖魔器"不感"の効果でな。此奴は心の糸と言うものを斬る事によって、人の感情を増大させる事が出来るんだ。例えば、今回の場合だと、"斬られる"と言う恐怖を、心の糸を斬る事によって、"死ぬ"と言う更なる恐怖に塗り替える事が出来るんだ。それによって、精神の弱い奴らはその影響に耐えられず、気絶するって仕組みさ。だが、下手すればショック死もする確率もあるため、調整に精神を集中しなければならない。それに、精神の弱い奴しか気絶させることは出来ないから、強者には一切効かない為、使い所が限られているんだよな。まぁ、強者との戦いは一瞬の油断が勝敗を左右するから、使い方次第では戦況を有利にする事もできるがな。さて、此処まで質問はあるか?」

「スミマセン、ハジメカラ モウイチド オシエテクダサイ」


目を丸くしながらクッデは答える。

その回答を分かりきっていたのか、ブラックは頭をかきながら、深い溜息をつく。


「心斬る、敵怯える、気絶する、ok?」

「ok」


表情変わらず答えるクッデ。

多分理解できていない。

そう考えるブラックは、説明する事を諦めた。




「クッデ君〜、ブラック君〜、大丈夫ですか〜!!」


妙に明るい声が、何処からか聞こえて来た。

声のした方を見ると、星型のタトゥーを顔に入れている金髪の男が、数人の人を引き連れながら、此方に走ってくる。

ロッドだ。

クッデは気が付かなかったが、どうやらこの戦いに来ていたようだ。


「丁度良い、彼らに説明して、この被験者達を運んでもらおうか」


少しよろめきながらも、その場から立ち上がろうとするブラック。

それを見てか、クッデは手を差し伸べて、立つの手助けする。


「悪い、ありがとな」

「別に良いよ。んじゃ、お前はこのままロッド達と一緒に上に上がりな」

「そうしたいが、まだ幹部にボスもいるこの状況下で、俺が抜けるのはまずいだろ」

「あはは、言ってくれるねぇ」


クッデは笑顔でケタケタ笑う、それに対して、ブラックも笑みを浮かべて返す。


「あらら〜、やっぱこの子らじゃダメだったか〜」

「「!?」」


何処からか、見知らぬ声が聞こえてきた。

クッデとブラックは、すぐさま辺りを見渡すが、何処にも姿が見えない。


「ま、そこらの凡人に武器持たせた程度じゃあ無理に決まってるか♪」

「誰だか貴様!何処にいる!!」


クッデは、声を荒げながら声の主に向かって叫ぶ。

ロッド達も、その異変に気がついたのか、歩みを止める。


「おぉ〜おぉ〜怖いねぇ〜、ちゃ〜んと自己紹介するから〜落ち着きな〜」


声の主はそう言う同時に、床の下からぬぅ〜っと、一人の男が透けて出てきたのだ。


「な、なんだアレは、どうやって現れたんだ!?」


ロッドは驚きの表情を隠しきれず、言葉を漏らす。

周りに居た仲間達も、響めきを隠しきれなかった。

床から出てきた男は深々とお辞儀をすると、自己紹介を始める。


「私の名前は"ハクセイ"。世間では、"番犬のハクセイ"と、呼ばれているものですよ」


そう説明すると、頭を上げて、ニカッと笑う。

鋭く尖った、歯を見せながら……。


〜to be continued〜

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